この記事のまとめ
・評価は過大だとしてもされていた方がいい。評価されやすく説得力のある話し方は、「集中力があって・低音ボイス・動じない」声という研究がある。
評価は良いに越したことはありません。
そのためには正しいだけではなく、どう話すかが重要です。
過大評価だろうが評価はされた分だけトクをする
生まれ持って人を巻き込むのが上手い人もいますが、社会で普通の人が話を聞いてもらうために工夫が要ります。
いくら正しく素晴らしい意見だとしても、「なんでお前の話聞かなきゃいけないのよ」と思われたらその意見はなかったことになります。この現象を日本語ではナメられると言います。
逆に、評価されていれば「まあお前が言うんだったら‥」とすんなり意見が通ってしまいます。
過大評価をプレッシャーに感じる必要もありません。失敗したときに評価が低いと「いい加減にしろ」と言われますが、評価されている人は「これも勉強だぞ」と大目に見てもらえます。評価は過大だろうがいくらあっても困りません。
では、人から評価され、説得力が高い話し方とは何なのか?私と一緒に心理学のエビデンスを元に学んでいきましょう!
人間は他人の能力や信頼性を適当に評価している
大前提として、人間が他人の能力や信頼性を正確に評価できているかというとかなり怪しいところです。
たとえばスティーヴン・D・レヴィット著の「ヤバい経済学」では、専門家は自分の知識を自分の利益の為に使うのでお客さんはカモられるといったことが述べられています。いんちきがなぜ起こるのか、専門家はなぜ私たちの利益に反する事をするのかといったことを経済学の観点から書いてくれている良書です。
私たちも、営業マンや店頭での呼び込みなどから契約した経験は誰しもあると思います。私もあります。ですが、この本を読んでからはできる限りネット上の契約を選択し、人を介して契約をする事は最小限になりました。プロに相談する時も、無料相談には行きません。来店プレゼントがあるなんてもってのほか。相談する時には報酬を払います。
なぜこんなことをするのか?それはそっちの方がトクだからです。このヤバい経済学を読んでおくとカモられにくくなり、長期でのメリットは大きいと感じています。心当たりのある方は一読の価値ありです。
少し話が逸れましたが、私たちは信じちゃダメな人を評価した挙句、バッチリやられているわけですね。人の下す評価なんて適当です、そんなもんです。
では私たちは何を見て相手を評価しているのか。ここがわかれば実力以上に評価される人の秘密がわかりそうです。
評価される喋り方とは「集中力・低音・動じない」声という研究
Wang, Xinらの研究では説得の際の声を調べてくれています。この研究では「集中力」「低音ボイス」「動じない」といった声の特徴が能力や説得の評価に影響していたというのです。1)
社会で言えば、あなたが採用面接でイキった学生に
「実はわたくし学業成績はストレートできてまして。ええ、全部最高評価です。私って超優秀なんです」
とアピられたところで、「なんだこいつ必死すぎね?」「フカシじゃねえのか?」とか思いますよね。そう、人がその人の能力を測るのは立派な文面じゃないんです。
むしろ人が他人の能力を評価する時には、喋りの内容より非言語的なもの(ふるまいなど)を参照している可能性があるということです。その一つに「注意散漫ではなく、堂々としており、低音ボイスでしゃべる」という事が影響しているんじゃない?って話ですね。
人は声という単純なシグナルに頼って評価する
これは実際にやられるとわかります。落ち着いた声で堂々と、しかもこちらを見て揺るぎなくしゃべられるとすごみがあります。これはこの特徴を持つ声が
「私が動じないのは自分の能力に自信があるからなんだぜ?」
「集中力があるから問題解決能力も高いんだぜ?」
「低音ボイスでしゃべるのは体も強いし有能だからだぜ?」
という非言語のアピールをしてくれるからですね。そりゃ前述の激アピくんよりも説得力もあって当然です。そう、相手から自発的に「なんかこいつは凄みがあるな」とトータルで思わせないといけないわけです。これが過大評価される要因として挙げられるでしょう。
このアピールが非言語なのがポイントで、先ほどの激アピくんのように自分で「ぼくすごいんです!」と自分で言うようなアピールじゃどう考えても小者ですからね。
この論文ではまとめとして、
「説得を成功するには、ストレスを感じていないように見せるトレーニングを積んだ方がいい」
と言っているわけです。少なくとも動揺や緊張やストレスを感じているサインというのは能力が低く見られるみたいですね。私たちは、声を相手の能力を示す根拠として参照するようです。
さらに実力以上に評価されるためにはテクニックの重ね掛け
説得するときもされる時も声に気を付けましょう!
以上のように、人からの評価には色々な要素がありますがその一つとして声があります。
しかし、人は声だけで評価してるわけではありません。つまり他のテクニックと重ね掛けをすることで、さらにあなたの影響力や評価を高める事ができるというわけです。
評価されやすい話の型や、話し方の効果的な練習方法を抑える
スピーチが上手い人には7つの特徴的な話し方があるのですが、ざっくり言うとテーマを一つに絞って何度も言いたいことに触れるというものです。その詳しいテクニックについては記事を参照してください。
この7つの型だけでも十分強力なのですが、さらに低めの声で動揺しないように喋ると相乗効果が期待できます。話す文章+喋り方の両面から攻める事で盤石になるということですね。
また、話す時の非言語的なジェスチャーなどが人間の説得力に与える影響は大きく、先ほどの論文で述べられたように「ストレスを感じない振る舞い」を鏡を使って練習してもらえば、ほぼ死角なく評価と説得力を高める事ができます。詳細は一人でもできる話し方練習法も参考にしてください。
ここまで準備すると、ただ噛まずにしゃべる事だけしか頭にない人とは準備も自信も全く変わってきます。ちゃんと科学的に根拠のある準備をしておくことが勝利への近道です。
他にも「固定的動作パターン」が影響する
さらに人間が信頼性や影響力を感じやすい固定のパターンがあります。
例えばロバートチャルディーニの名著、影響力の武器では「返報性」「コミットメントと一貫性」「社会的証明」「好意」「権威」「希少性」の6つが固定的動作パターンとして発動し、人が動かされるとあります。2)
さらに特定の状況設定によりその6つの影響力が強化される特権的瞬間というものがあります。
チャルディーニ教授の影響力の武器は有名ですが、その6つのお膳立てをする下準備について「PRE-SUASION」 にて解説をしてくれています。本書の中で「目立つものは重要なもの」と記載されている通り、相手の注意を引き付けておく事の重要性とその条件が解説されています。3)
ですから私達も影響力を高めたければ声だけではなく、自分に集中させるような状況を整えておくことも重要です。そうすればあなたの「声」も相手に届きやすく、あなたの意見や気持ちに対して心を揺さぶられ、Yesと答えてくれる可能性が高まります。さらに、意見や気持ちが通らなかったとしても、あなたの能力や知性の印象は相手に残るはずです。
このように影響力を増す方法について学ぶならPRE-SUASIONが良書ですが、できれば先に「影響力の武器」を読んでおく方が良いでしょう。私も当然読んでいますが、この二冊は別の本にも関わらず上下巻として取り扱うとわかりやすいと思います。もちろん影響力の武器が上巻です。
正しく「評価するため」にも使える
さらに、これらの要素を知っている事で人から評価されることはもちろん、逆に見た目だけで中身がない人に対しても防御をすることができるのです。
たとえば、声によって説得されてしまうのなら、相手の話が疑わしい時は紙に書き出すなどで相手の声といった要素を排除して決断をすればいいのです。あえて声の要素を捨てる事で、合理的な選択ができるでしょう。
この知識を使い慣れておけば攻守に役立つよね
1)Wang, Xin, et al. “Audio mining: The role of vocal tone in persuasion.” Journal of Consumer Research 48.2 (2021): 189-211.
2)Cialdini, Robert B. 影響力の武器 : なぜ、人は動かされるのか. 第三版, 東京, 誠信書房, 2014, ISBN9784414304220.
3)Cialdini, Robert B., 曽根寛樹. Pre-suasion : 影響力と説得のための革命的瞬間. 東京, 誠信書房, 2017, ISBN9784414304244.
4)Levitt, Steven D., Dubner, Stephen J., 望月衛. ヤバい経済学 : 悪ガキ教授が世の裏側を探検する. 東京, 東洋経済新報社, 2006, ISBN4492313656.