5年間続けた瞑想の経験とエビデンスをブログにまとめてみた

自然の中で集中する人 心理学

 私はマインドフルネス瞑想を初めて5年ちょっとになります。

 その間に起きたわかりやすい変化は、へこみにくくなってプライベートも充実、収入も増えたという事です。

仕事も恋愛もうまくいく」というと何とかゼミみたいな感じですが、理由を考察すると社交性が増して心を読む力に磨きがかかった事と、注意力の絞りや切り替えがうまくいくようになったことが大きいと思われます。

 5年間の私の経験をブログに記載しますが、主観だけで書くのもあまり好きではないので論文などのエビデンスや文献を紹介しつつ、どんな取り組みをして、途中でどうつまずいて、やめるとどんな変化が起きて、そして続けると自分にどういう変化が起きたのかという観点からを書いていこうと思います。

 マインドフルネスを始めようとする方や、始めてしばらくたった方などの参考にしていただければと思います。

マインドフルネス瞑想の論文を読み、8週間継続する決心をする

 「へー!瞑想すると集中力が高まるし、感情の処理もうまくなるんだ!」

 私も5年前にそんな事を知りました。2015年Nature reviews neuroscienceのTangらの論文でも、マインドフルネス瞑想によって注意力や感情の自己調整能力など脳の中核領域が変化するといった事が述べられていました。1)

 それまでは瞑想≒スピリチュアルというイメージがありましたから、「瞑想とか、暗い部屋で宇宙とつながろうとする怪しいヤツ」くらいの認識でした。ですがこのような客観的なデータが出そろい始めており、ちょっとやってみっかと思い立ち取り組み始めました。

 というのも、私は落ち込みやすい性格が災いして、仕事でも感情の揺れ動きに合わせてパフォーマンスが落ちるという弱点を抱えていました。しかし仕事の割に私のスペック自体は高かったのです。

 こんなことを自分で言うと嫌味なやつだと思うかもしれませんが、環境や状況・メンタルによって波が激しくて使い物にならないという典型的な三流だったという事にも触れなくてはいけません。

 いくらポテンシャルがあろうが、実際の場面で能力発揮してはじめてパフォーマンスになるのですから、日本語ではこれを「仕事ができない人」と言います。野球で言うところのブルペンエースといえばわかりやすいでしょうか。そう、私は仕事ができない人でした。

 それは学生の頃から薄々わかっていたことで、勉強はできるコミュ障という課題に社会人早々苦しめられたのです。なんとかならんもんか‥と思っていたところでそんなマインドフルネスの論文を見つけたものですから、さっそく取り入れる事にしました。

1~2か月:5分→15分と継続。普段感じていた焦りに気づく

 最初は5分の呼吸瞑想から開始し、2ヶ月で15分まで伸ばしました。この期間は毎日瞑想を実施していました。

 その理由としては、2014年Shoninらの論文をはじめとして、マインドフルネス瞑想系の研究はだいたい8週くらいの介入期間で行っています。2)

 継続期間の相場としてはこれくらいで、まず効果を実感するまでに8週間くらいはかかるのかなということは知識として理解していましたから、まずは続ける事を目標に5分から開始しました。最初から一日30分だと続かなかったと思いますから、まず2~3か月継続する事だけに焦点を当てたこの判断は良かったと思います。

 最初の頃は「こんなことをしている暇があるなら本を読みたい」とか「やらなきゃいけないことがたくさんあるなぁ」「瞑想している暇があったら問題解決しないと‥」と物思いにふける事が多かったです。その度に論文を思い出し、「普段焦りを感じているんだな」と瞑想に戻るようにしていました。

 このように、普段生産性を求める人や常に課題解決に思考を巡らせやすい人は瞑想自体に焦りなどを感じやすい時期かもしれません。ちなみに私は常に何かを悩んでいる、典型的な切り替え下手でしたね。

アプリは無料で大丈夫:Meditation Timer and Log

 使ったアプリはタイマーセットして線香を眺めるという座禅のアプリを入れていたのですが、現在は消えているので残念ながらそれは紹介できません。途中からMeditation Timer and Logというアプリを導入。選んだポイントは無料で瞑想時間の調整ができ、自然音が流れるものという理由です。

これを現在も使用し続けており、瞑想アプリに関してはサブスクを使っていません。瞑想のガイドが欲しいならサブスクもいいんでしょうけど、本とかで学べばいいだけの話ですしね。私は買い切りが好きなので本とかガジェットは迷いなく買うのですが、サブスクは解約のハードルが思った以上に高いので最低限にする事を好みます。

Meditation Timer and Log (iphone)(Android)

座布があった方が雰囲気や振る舞いが変わりやすいかも

 時間が伸びるに従って5分間の瞑想でも感じていたことですが、途中で足がしびれるという問題が発生。しかし「瞑想中は動いてはいけないのだ!」という謎の思い込みがあったため苦しむことに。

 そこで座布と呼ばれる瞑想用の座布団を購入したのですがこれは私にとって正解でした。腰回りの負担も軽減しましたし背筋も伸びやすく、呼吸が楽になりました。

 実はこの時、「できる限り深呼吸をしなくては、吐く時間を長くして呼吸数を減らさなくては!」というまたしても謎の思い込みがあり、瞑想中に息苦しくなる事がありました。結果的には座布の導入により呼吸と姿勢が改善されリラックスした呼吸ができるようになったので良かったのかもしれません。

 瞑想中に姿勢にも注意を向けるようになったので、普段から姿勢に気を付けるようにもなりました。人前で堂々と話せる人になる練習方法でも研究を紹介したように姿勢や立ち振る舞いは説得力や評価にも影響しますから、初対面での印象や講演をする時にも自然と良い姿勢で話せました。

結果的に私が「雰囲気が変わった・堂々としている」と言われるようになり始めたのは、大体2か月くらいですね。私の場合は集中力や生産性の実感より早かったかもしれません。

 もし座布を導入するなら、膝に無理のかからない形状か、形をいくらか変えられるものから選ぶのが良いでしょう。ベッドの横に置いておくと瞑想の条件付けにもなりましたしモチベーション維持にも役立ちました。

2ヶ月までの反省ポイント
1,足がしびれたら別に組み替えても良い。
2,座布は早めに導入すると普段から姿勢に気を付けるようになり、さらに条件付けで習慣化もできるので色々楽。
3,深呼吸を強制するのは目的がズレていた。

2か月~1年:自分が一つのことに集中しすぎていたと気づく

 注意力などの効果が経験できたのは2か月目以降になります。

瞑想時間は一日40分に

 この頃になるとさらに瞑想時間は伸び、朝15分夜25分、合計40分という形で落ち着きました。3か月を超えるとめんどくさいなーという事はほとんどありません

 むしろ頭がシャープになり、瞑想初期に感じていたような「こんな事をしている暇があるなら本や論文を読みたい!」という焦りはなくなりました。

 もちろんその気持ちはあるのですが切り替えがうまくなり、瞑想していないの時間で集中できる事を体が覚えはじめたので充実していたなという印象です。

新しい瞑想パターンを導入:サーキットトレーニング

 読書量が目に見えて増えたというのが客観的な指標としてあり、本の購入や図書館から貸出返却のサイクルが速くなりました。速く読めるようになったというよりも、情報の分別が早くなったような気がしますね。完璧を求める必要がないという意味での判断力や冷静さが身についた感じです。

 この頃に「Search inside yourself」という本を読み、新しい瞑想パターンも導入。

 導入したのは瞑想版のサーキットトレーニングとでも言うようなもので、オープンモニタリング瞑想フォーカスアテンション瞑想を数分おきに行うというものです。

 これは私のお気に入りの瞑想方法であり、今でも短期的な事と長期的な予測など、思考時に視点を切り替えるのに役立っていると思います。注意を絞る位置を変えたりするイメージですね。

2種類の瞑想についての解説

 少し解説すると、瞑想には2種類あると言われていまして、一つはフォーカスアテンション瞑想、もう一つはオープンモニタリング瞑想と呼ばれています。先ほどの「サーキットトレーニング」はその両方を組み合わせたものになります。欲張りですね。

 2008年Trends in cognitive sciencesに掲載されたLutzらの論文によると、フォーカスアテンション瞑想とオープンモニタリング瞑想にはそれぞれ以下のような特徴があります。3)

  • フォーカスアテンション瞑想:選んだものに集中し続けるタイプの瞑想。注意が逸れた事に気づいたら直ちに選んだものに注意を戻す。
  • オープンモニタリング瞑想:経験するが反応しない、ただ感じたことを眺めるだけ。反応しないトレーニング。

 この二つの違いについて、人間が集中力を保つには

  1. 気が逸れていないか見張り
  2. 気づいた段階で「うつつを抜かしていた」ものから手放し
  3. 集中すべきものに注意を戻す

 というステップが必要になります。これが上達すると、脳の情動領域の活性が抑制され感情に振り回されたりしなくなるわけです。フォーカスアテンション瞑想ではこの3つをひたすら練習するわけですね。

 一方オープンモニタリング瞑想の例では「ラベリング」といって、感じたものに名前をつけます。「これは怒りだ」とラベルを張って、それ以上はいじらない。感じたことを確認するだけ。このことを繰り返すと右腹側前頭前野皮質活性が向上し、前頭前皮質の活動により扁桃体の反応を抑制できるということです。言っていれば、オープンモニタリング瞑想の1~2のステップを重点的に練習しつつ、自分をニュートラルに保ち続ける、自分が執着してしまうものに集中しすぎないトレーニングともいえるかもしれません。

マインドフルネスを実感、一つの事しか見えていなかった事を自覚

 このサーキットトレーニングのおかげで分析能力も実感する事になりました。今までの自分は目の前のクオリティや努力量を増すことで課題を解決する傾向にありましたが、一度ぐっと引いて、そもそものやり方や前提を組み立て直す事を覚え始めたのもこの時期です。

 顕微鏡の対物レンズの倍率をカチカチ切り変えるような感覚、とでも言いましょうか。一つの事にとらわれすぎて、バランスが取れてないなという事に気づけるようになった事がインパクトとしては大きかったですね。

 今でも集中力が上がっているなという感覚はあるのですが、注意の倍率を拡大したり縮小したりという事を意識してできるようになった事が人生への影響としては1番強かったです。どうでもよい事は無視できるようにもなりましたから、あまりあたふたしなくなりました

 私は人前で話すのが苦手だったのですが、克服しはじめたのもこの頃です。そういう実践的なスキル習得をマインドフルネス瞑想と一緒に走らせる事はアリだと思います。

 「ただ頑張る」から、「今後のために立ち止まってでも遠目から眺めてみる」というためには一度足を止めなくてはなりません。5年前はそれができていなかったと今は思います。やはり当時の私には焦りがあったのだと思います。

1年〜3年:ようやく集中力とタスクスピード向上を実感

 この頃になってくるとタスク自体の効率が向上してきました。本来期待していた効果ですが、私にとっては1年以上かかったということです。ギュッと注意を絞って「モード」に入る事ができるようになり、以前より対物レンズに倍率の高いレンズが導入されたような感覚です。

瞑想では弱いところから伸びて、強みがさらに伸びるには時間がかかる?

 これを今になって考察すると、私の特徴として集中力は人並みにあったのだと思います。しかし、注意を切り替えたり、注意をニュートラルに保つ事が苦手で全体が見えていない。ですから、マインドフルネス瞑想では自分の弱いところからまず改善され、その後元々得意だった集中力も伸びてきたのではないかなーと。

 その点、サーキットトレーニングはそのどちらも鍛えられるわけですから、迷った時は瞑想のサーキットトレーニングをおすすめしているわけです。私の場合であればオープンモニタリング瞑想だけを集中的にやれば良かったのでは?と思いますが、これ結果論かなと。自分の何が弱いかというのその時は焦りがったりしてわからなかったりするんですよね。

瞑想を3年続けると仕事のパフォーマンスが上がった

 そして瞑想を3年近く継続すると、やっとブルペンエースを返上できました。仕事へのパフォーマンスも向上しましたし、収入も増えたという目に見える形での成果が出たと感じています。

 自制能力がコミュ力に大事という記事でもマインドフルネスの効果について触れましたが、やはりマインドフルネスによって自己主張と自己抑制の加減ができるようになるとコミュ力が上がり、「空気が読める」人になるなと今になって改めて感じています。マインドフルネス瞑想はコミュ力の基礎トレと言えるかもしれません。

 私も昔は気が利かないなと言われていましたが、人の考えを察知したり、長期的な視点を考慮して思慮深い提案をできるようにもなってきました。何度も言っていますが、私の弱点は集中力ではなく注意を広げる力でした。これのどちらが欠けてもブルペンエースになりやすいのですね。

 ただ、自分に何が欠けているのかは自分を客観視したり受け入れたりするという高次の能力が必要です。逆を言えば自分に欠けているものがわかって受け入れられるというのも瞑想の効果判定として良いかもしれません。

3〜5年:忙しくて瞑想を中断、思考パターンが戻る経験をする

 収入が増えたことは良いのですが、忙しさのあまり瞑想習慣が途絶えはじめたのが4年目にさしかかった頃です。

 ただ、瞑想をやめてもこの4年の間に積み重ねられたスキルや行動というのは簡単には消えません。ですからまるっきり以前のようなブルペンエースに戻ることはありません。

 しかし瞑想をやめることで起きた変化もあります。

瞑想を続けないと思考パターンが戻ってしまう

 瞑想習慣が途絶えた時に、変化があったのは思考パターンです。

 どうしても長期的な戦略を立てたりする事ができなくなり、短期的に全力でやるというパターンに陥りがちになりました。以前あった「ただ頑張る」という悪癖です。

 それでもこの3年以上でコミュ力がついたり気持ちのコントロールもできるようにはなりましたから成果は出るのですが、パフォーマンス全体を見ると落ちます

 ですが、途絶えるとどうも瞑想をしようという気にはならない。以前の良いリズムが戻らなくなってしまったのです。

瞑想習慣を再開するには、まず4~5日のゆとりの時間を持つこと

 私の場合は瞑想をやろうと思っても焦りがあってできなかったので思い切って休みを取りました。

 そしてすぐに動き出すのではなく、2~3日は何もしません。仕事や生産性という言葉から切り離して、温泉旅行に行くという「ゆとりの時間」を作りました。旅行から帰ってくるとようやく、「最近の自分はちょっとまずいなぁ‥」というポイントを落ち着いて考える事ができました。

 瞑想に限らず習慣や戦略の見直しをするには、強制的にでも一度立ち止まる事が大事だと思います。一度走り出してしまうと、立ち止まるのはなかなか大変なものです。ですが私の場合は瞑想をしていれば意識して立ち止まることができるようになる‥そう感じる事ができました。

 確かに、ブラック企業で働いている友人も「一歳でも若いうちに転職した方が良い」と本人もわかっているのに、忙しさもあって立ち止まることができていません。だからみんな毎日が精一杯で、何かを変えたり人生の戦略を変えたりできないのです。これは私にも言える事です。

 たまに立ち止まって人生のおおまかな進路方向が合っているか確認して修正する、これができないと人生を進めるほどとんでもない方向に行ってしまう可能性もあります。

 私にとって瞑想はアクセルと言うよりブレーキやハンドルとしての効果が大きいようです。

瞑想を再開すると、効果を実感するまでに以前ほど時間はかからない

 また瞑想を短時間から再開したわけですが、不思議な事に2~3日10分程度の瞑想でも明らかに集中力のコントロールがうまくなったという実感がありました。

 しばらくやっていなくても自転車の乗り方や泳ぎ方は覚えているのと一緒で、瞑想の感覚を「思い出した」という事かもしれません。

 となれば瞑想が途切れてしまった人は「やめてしまったから今はもうダメだ」というわけではなくちゃんと貯金はされているのかもしれません。

瞑想で何を考えていた?

  最後によく聞かれることとして、「瞑想中って何考えればいいんですか?」というものがあります。

考えは勝手に浮かんでくる、それで問題なし

 結論から言うと、「普段と同じでOK」です。特に先ほど述べたオープンモニタリング瞑想では「ただ気づいて、見るだけ」ですから、普段と同じように考えが浮かんでくる事は当然です。私も瞑想していると今でも勝手に思考が浮かんできます。

「ああ、あれやんないとなぁ」
「この問題、うまくいってないよなぁ。どうしようかな」

 こんな考えは瞑想をしていると浮かんできます。ただし、それ以上深堀りしません。

 「余計な事を考えてはいけない!」と思っても無駄です。思考を止める事はできません瞑想のキモは、「自分が何を考えているか気づいて、それに執着しない事にあると私は5年瞑想をした結果思います。

瞑想と何かをセットで習得した方がいい

 私の場合は人前でしゃべるという苦手な事がありましたが、瞑想と一緒に走らせて解決することができました。何かゴールがあった方がやはり走りやすいと思いますし、一度挫折しても戻ってきやすいです。あなたは何か克服したい、変えたいことはありますか?

 このブログでは心理学の記事も掲載していますから、人の心を読んだり嘘を見抜いたり、人に影響力を与える話し方などのスキルを一緒に身に着けていくのも良いかもしれません。

引用・参考文献

1)Tang, Yi-Yuan, Britta K. Hölzel, and Michael I. Posner. “The neuroscience of mindfulness meditation.” Nature reviews neuroscience 16.4 (2015): 213-225.
2)Shonin, Edo, et al. “Meditation awareness training (MAT) for work-related wellbeing and job performance: A randomised controlled trial.” International Journal of Mental Health and Addiction 12 (2014): 806-823.
3)Lutz, Antoine, et al. “Attention regulation and monitoring in meditation.” Trends in cognitive sciences 12.4 (2008): 163-169.

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