今日から変える!どこに行っても孤立する人への解決策と原因

会話する二人 心理学

孤立してしまうととても苦しいですよね。

最初はうまくいっている気がする。でも自分は何をしたわけでもないのに、何も言った記憶もないのに、やがてなぜか孤立してしまう。そんな理不尽さと苦しさを感じる事はありませんか。

ひょっとすると、自分を抑えすぎている事が原因かもしれません。周りと馴染める人はどんな能力があるのかについてエビデンスを元に解説していきます。

脳の我慢する力=自己制御能力をうまく使えるとコミュ力が高くなる

 ガマンする力の事をかたい言葉では「自己制御能力」といいます。この我慢する力は「お菓子が食べたいけど我慢しよう」といったレベルのものから、緊張を抑えながら話すスピーチまで、日常生活様々なところで活用されています。

 コミュニケーション能力にもこの自己制御能力は重要です。以前コミュ力には感情知性が大事だ!という記事を書きましたが、ざっくり記事の内容をまとめるとコミュ力がある人には自制能力共感能力があり、これらが欠けるとコミュ力が低くなるというものです。かんたんに言えばガマンできない人はコミュ障になりやすいということですね。

メリハリをつける力がないのが孤立の原因

 とは言ってもただ言いたいことを我慢していればいいというわけではありません。うまく打ち解けられず、孤立してしまう人はこの点に誤解があります。

 人間関係では良好なコミュニケーションのために言いたいことを飲み込んだりするだけではなく、逆に勇気を出して発言したり決断しなければならない事があります。「これは言ったらマズいな」「ちょっとこわいけど、自分をさらけ出してみよう」といった事を繰り返しながら、徐々に皆と馴染んでいくのです。

 状況を見て言うべきことは言う、しかし飲み込むべきことは飲み込む。そうやってメリハリを効かせながら私たちはコミュニケーションを取り、仲間を増やしていきます。手綱は絞りすぎてもダメですし、緩めっぱなしでも暴走してしまいますから、ちょうどよく手綱を絞るには自己制御が重要です。

 2008年原田らによると、この自己制御能力には以下の二つがあります。この二つが揃っていると「自己制御能力が高い人」と言えるでしょう1)

  1. 自己主張ー例)自分の考えを言う
  2. 自己抑制ー例)自分勝手な発言や行動を抑え他者尊重する

 自分にはこの二つのどちらが苦手なのか?という事を考えてみると孤立せず周りと馴染むための解決策になります。

 たとえば、思い当たる節はないのに孤立してしまうという人の場合は自己主張が不足している事があります。この場合は「自分をさらけ出してみる」というのが重要で、早期決着!マッチングアプリで距離を縮める質問という記事でも自己開示をする事で関係性が深くなっていく事について解説しました。仲良くなるためには、嫌われるのが怖いからといって守り一辺倒ではダメということですね。

 逆に、相手を聞かない・話を遮る言ってはならない事を言うなどに心当たりがあれば自己抑制が不足しているでしょうから、後述する対策を行ってみると良いでしょう。

 車で言えば、アクセルとブレーキ両方とも正常に機能していて、はじめて車をコントロールできるということです。アクセルを踏んでも進まない車や、ブレーキが効かない車でいくらハンドル操作だけを練習しても意味がないし、そんな車じゃ状況を見て運転どころではありません。

 コミュ障の人は状況に見合わないようなスピードで走ったり、逆に全く発進しなかったりとアクセルとブレーキのコントロールがうまくいっていないのです。我慢というとひたすら抑えて黙っているようなイメージですが、こわいけれど自分を知ってもらうために勇気を出してさらけ出すというのも立派なガマンですよね。

 「非認知能力: 概念・測定と教育の可能性」ではこういったさまざまな非認知能力について科学的知見から説明されていますが、この非認知能力が私達の社会生活に実際どのように影響しているのか?を知ることが重要です。

不快を乗り越えて自己主張できないと信用されない上に軽く扱われる

 「別に自己主張と孤立は関係ないんじゃね?仲良くなれないだけでしょ?迷惑かけてるわけでもないし」

 そう考える方もいるかもしれません。確かに自己主張が低いというのは一見困ったことがなさそうですし、なぜ孤立に繋がるのかまだピンと来ない人もいるかもしれません。自己抑制が美徳とされている日本では自己主張が苦手な人が多いとされていますし、1)なおさら美徳であるとも感じるでしょう。

 ですが、自分の考えを言わなければ当然自分の希望は通りませんし、よりストレスも溜まります。究極になると、今までずっと黙っていた人が「なんでわかってくれないの!」と突然怒ったりします。わかってくれないのは自己主張していないからです

 このような自己主張を絞りすぎるスタイルでは本音を話してくれないので相手は距離を感じますし、いまいち信用できない、突然怒り出すよくわからない人。そんな印象を与えてしまいます。結果孤立に繋がってしまうのです。

 おまけに、自分の意見を言えない、NOと言えないというのはある種類の人にとっては非常に都合の良い人と扱われる可能性があります。批判されるかもしれないけど、それをガマンして勇気を出して主張したり行動する必要も社会ではあるのです。

 この点に関しては人間関係はしっぺ返し戦略が有効だ、という話を以前しましたが、全く自己主張がないと軽く扱われ、あなたの意見や希望は無視される事になります。適度な自己主張は集団生活やコミュニケーションにおいて必須です。

自己抑制ができないと孤立する

 対して自己抑制が低いと孤立するという事についてはわかりやすいでしょう。自分の思うままに振る舞い、自分を大きく見せ、考えを押し付け、都合の悪い現実を否定し、意見を聞かなくなります。やがてグループとは不和を起こし孤立してしまうでしょう。

 それだけではなく、他者を尊重できないので自分の話ばかりをすることになります。この人とは話しても無駄だ、関わるのはよそう。そう考えられてしまうのは自然です。何かしらの対策が必要なのは言うまでもありません。

 では次はいよいよ、この自己制御を鍛えるためには何をすればいいかに入っていきましょう。

孤立しないために自己制御能力を高めるための方法

 コミュ力にもアクセルとブレーキが必要で、そのために自己制御能力が必要です。かんじんなのはその自己制御を高める方法ですが、これに関しては研究がいくらか進んでいます。

決めたルールを続けること

 まず、2019年沓澤らの研究では5分前行動を徹底することでセルフコントロール能力が高まったとされています。2)

 この理由として、ただいつもより早く動けばいいというわけではなく、「習慣的に、自動的にやっていたことを抑えて行動することが自己制御能力を鍛えてくれたのでは?」と考察されています。

 ですから自己制御を鍛えるには研究の通り5分前行動を徹底していくのがよいでしょう。ですが、コミュ力を高めたいのならもっといい方法があります。説得力のある声で喋るようにする、第一印象を良くするポイントに気をつけるなど、コミュニケーションに関する技術に対して普段からできるように気をつける努力を継続して行う事をおすすめします。

 この方法の素晴らしい所は短期的には小手先の技術としてコミュ力が高まり、長期的には自己抑制能力が高まる上に無意識でもコミュニケーション技術ができるようになります。一石二鳥の戦略で、つまり続ければ続けただけコミュニケーション能力がさらに高まるということです。

⒉マインドフルネス系のトレーニング

 マインドフルネスも自己抑制に対して肯定的なデータがあります。2019年LeylandらのSR&メタ分析によると、マインドフルネスによって自己抑制能力が高まったという結果が出ています3)詳細は以下の通り。

  • マインドフルネスを行うとネガティブを調整する能力が高まった
  • マインドフルネスの介入は、呼吸や感覚に注意を向けたり、注意を集中したり、経験したことを受け入れるなどの介入をおこなった。
  • 実行機能は持続的な注意を要する練習の場合に高まった

 これらの結果が出た理由として、マインドフルネス系のトレーニングにより、注意をコントロールするのがうまくなったんじゃない?という事が考察されています。

 つまり、「今は動揺している場合じゃないからやるべきことに集中するぞ!」という切り替えができ、さらに集中できるため脳の実行機能※(計画立てて実行するスペックのようなもの)に影響したのではということですね。

 自分のネガティブをうまく飼い慣らす事ができれば「嫌われたらどうしよう‥」という不安で黙り込む事もなく自分の意見を話せます。自分の中のネガティブを飼い慣らせる人は不機嫌や怒りに振り回される事もないですから、落ち着いて場にふさわしい話題や口調で話すことができます。ここでテンパっちゃうとろくに考えられなくなるのはみなさん知っての通りです。

 人は自分の意見を正直に話してくれる人に信頼感を持ちますし、機嫌が安定している人であれば話しやすいですから、これだけでもコミュニケーション能力が発揮できる土台が揃っています。その結果、孤立をするどころか人が集まってきやすい振る舞いになるというわけです。

 また、研究に出ていた実行機能※もコミュニケーションで重要です。実行機能というのはざっくり言うと、計画を立てて目標を達成する能力のことです。

※実行機能についてもう少し知りたい人へ
 たとえば、クリーニング屋に洗濯物を取りに行く・スーパーで買い物をする・郵便局で荷物を出すという3つの事をこれからやらなければならないとします。
 この3軒が同じような場所にあるとしたら、要領の良い人はまず荷物を持って郵便局に向かい、次にスーパーで買い物をして、最後にクリーニング屋に洗濯物を取りに行くでしょう。荷物や洗濯物を持ったまま買い物をするのは邪魔だからです。
 全体を見てうまいこと計画を組み立てていくのには実行機能が必要です。

 なぜコミュニケーションに実行機能が必要かというと、ウソをつくのに必要だからです。あなたも「空気を読んだウソ」をついた事はあると思います。逆に状況を考えず正直に話しすぎるという状態も社会性がないという状態に近いため、空気を読んで発言を変化させるにはこの実行機能が必要になります。

 以前嘘をみやぶる能力という記事で、うまい嘘をつけるかは脳の実行機能次第だ!というお話をしました。この実行機能が低いと、「後先考えずに行動しちゃう」「すぐばれるうそをつく」という状態になります。

 コミュニケーションで「言わない方がいい事を黙っている」「空気を読んだうそをつく」には一瞬で現在の状況を分析して深く考えなければなりません。たとえば私たちは以下のような事を一瞬で考え、話す内容を決めているはずです。

「Aさんはどこまで知っているんだろう。AさんとBさんは仲が良いから、今AさんにBさんの困った行動についてベラベラ話してしまうとBさんに伝わり、不興を買う事になる。この話題はこの人にするべきではない。よし、自分はよくわからないと話すに留めよう」
「この人はいい人だけれど、完全に信頼できるかと言われればまだそうではない。まず自分の事について問題ない範囲で打ち明けてみて反応をみよう。全て事実を答える必要はない。話す時には矛盾しないようにするには時系列をぼかそう」

 人はこのように考えてから空気を読んで嘘をつきます。実行機能が高い方がハイスピードで計画を立てられますからうそがうまくなりますし反応も違和感がありません

 マインドフルネスが自己抑制と実行機能の両方を高めてくれるのであれば取り組んでみる価値もあるでしょう。私はマインドフルネス系瞑想のトレーニングとして「Search inside yourself」という本に書かれているgoogleのマインドフルネスを参考にして継続しています。

 私の経験になりますが、瞑想によって焦りが抑えられ、長期的な作戦を立てる分析能力の面でプラスがありました。さらに背筋が伸びた姿勢が身につくという嬉しいオマケもありましたし、あなたもピタッとくる方法を探しつつ継続してみてください。

自己制御ができると孤立しない以外にもメリットがある

長期的にトクな選択ができる

 自己制御能力がついてくると、長期的にトクな方を選ぶ事ができます。心理学研究でよく言われるのは、「今貰える10000円と、一か月後にもらえる11000円、どちらがいいですか?」といったものです。

 ガマンする力がある人は「一か月で10%のリターンなんて滅多にないおいしい話だ!これはノーウェイトで一か月後に11000円!」と判断できますが、我慢する力がないと「今日一万円もらったら今晩遊びに行っちゃおう」と損をする選択肢を選んでしまいます。

 人生はこういった選択の繰り返しであり、契約や就職、自分のライフプランまで、短期的な事ばかりを見ていると損をする事が多いです。我慢する力がある人は短期的な利益だけに惑わされず、ぐっとこらえて先を読む事ができます。そのうえで、「当面資金に余裕があるから、今月は貯金を使って少し楽しんでも大丈夫だ」とバランスよく今を楽しむことができるのです。

話を遮ることなく、聞き上手になる

 自己制御能力が鍛えられると、聞き上手になり相手の話を遮ることがなくなります。言いたい事があっても空気を読んで黙っておくという状況判断もできるようになります。

 具体的には、「(この人話長いなぁ‥)」「(そろそろしゃべりたいなぁ‥)」と自分が思っても、相手が話し終えるまで待つ事ができます。

 自己制御能力が低い人(アッパー系コミュ障)は、よく相手の話の途中で「あ、そこだったら私も行ったことがあって、確か去年の‥」と話をうばってしまうことにながちです。自己制御能力が高い人は最後まで話を聞いてくれますし、もし同時に話し始めても「どうぞ」と相手に話を譲る事ができるようになります。

 他にも、自分の話の途中でも相手に意見を聞いたり、一呼吸つく余裕もあります。もし相談してきた人がここまで自分を尊重して話をしてくれたら感動するでしょう。

 そして、相手の話がひと段落ついたところでようやく自分も話しはじめます。この緩急、メリハリこそがコミュニケーション能力です。自分で話して自分でツッコミを入れるような人がいますが、このようなパターンはアクセルベタ踏みで滑っているのです。ブレーキ操作がコミュニケーションでも運転でも最重要です。

 つまり、孤立しないどころか多くの人から頼りにされ、相談されやすい人になるのです。ただし、あまり相談をされすぎて負担になるようなら困りものですが‥。

空気を読むので出世しやすい

 自己制御能力が低めの人は、状況を判断せず思ったことを口にしてしまう傾向にあります。

「いやいやこのタイミングでその話題はまずいよ!」
「おいこの人の前でその話題はやめてくれ!」

 と、周りが慌てているのに本人は素知らぬ顔でまずい事をしゃべったりします。

 話す内容や口調にはそれぞれ適切な場面があり、例えば10年来の友人と話すような話題をそのまま上司にすることはまずかったりしますし、「相手の事を考えれば黙っていた方が得策だ」という場面はたくさんあります。

 たとえば同僚が話していた上司の愚痴を上司の前で「そういえばアイツ、こんなこと言ってましたよね」と正直に話せば、今後その同僚はあなたに対して距離を取り、何も話さなくなるだろうことは想像に難くありません。

 自己抑制が効いており、マインドフルネスなどで注意をコントロールできれば、話を聞いている間に状況も観察する事になります。その結果適切な話題選択ができるようになり、とても気のつかえる人になるわけです。

 さらに状況を見たうえで「ここは自分の意見を言った方がいい」と自己主張もできますから、「あの人は自分の意見をしっかり話せる信頼できる人だ」とも思われます。ズバッと言っても好感が持てる人というのは、この自己主張の状況判断が抜群なのです。

 その結果チームの空気感を良くするだけではなく、かじ取りの役割も兼ねる事になるので、出世しやすくなるというオマケまでついてきます。

孤立する人はいい人が多い

 最後に、孤立をした自分を責める必要はありません。今こうして孤立を解決するための行動を起こしているならなおさらです。苦しんで、自分を成長させようと向き合っている人をどうして責める必要があるのでしょうか?とても誠実で真摯な人ではありませんか。ただ、今まではコミュニケーションでメリハリをうまくつけられなかったり、その方法について知らなかっただけです。

 このように知識を得る事で解決する事も世の中にはあります。他にも好印象を持ってもらう方法や上手いコミュニケーションについて知る事で解決する事もあるかもしれません。良ければ他の心理学の記事も参考にしてみてください。

引用・参考文献

1)原田知佳, 吉澤寛之, and 吉田俊和. “社会的自己制御 (Social Self-Regulation) 尺度の作成 妥当性の検討および行動抑制/行動接近システム・実行注意制御との関連.” パーソナリティ研究 17.1 (2008): 82-94.
2)沓澤岳, and 尾崎由佳. “セルフコントロールのトレーニング法の開発とその効果検証.” 実験社会心理学研究 59.1 (2019): 37-45.
3)Leyland, Anna, Georgina Rowse, and Lisa-Marie Emerson. “Experimental effects of mindfulness inductions on self-regulation: Systematic review and meta-analysis.” Emotion 19.1 (2019): 108.
4)小塩真司. 非認知能力 : 概念・測定と教育の可能性. 京都, 北大路書房, 2021

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