【信頼の科学】心から信頼できる人の特徴と見分ける方法とは?

スーツの男性 心理学

誠実な人と信用できる人とは違うの!?

 いきなりですが、心から信用できる人を見つける事は難しいです直感的に信頼されやすい人の特徴はあるのですが、だからといって「信用されやすい人≠信用できる人」です。残念ながら信用できる人を見抜く時に勘だけではあまり当てになりません

 では、どうすれば本当に信頼できる人を見抜くことができるのでしょうか?信頼できる人はどういう行動をしていて、どんな特徴を持っているのでしょうか。

 信頼に関する研究結果によると、「罪悪感がある人は信用に値する」というものでした。

本当に信頼できる人は罪悪感を持ちやすく、他者との約束を守る

罪悪感は責任感の顕れなのね

 今回参考にするのはは2018年Journal of personality and social psychologyに掲載されたLevineらの論文で、罪悪感を持ちやすい人は信頼に値する!という内容になります1)。この論文の内容は以下のとおりです。

  • 罪悪感を持ちやすい人は状況や時を問わず信頼できる行動を取る傾向にあった
  • その理由は対人関係に責任感を持つためかもしれない
  • ビッグファイブの性格特性は協力に背く行為などに対してあまり関係がなさそう(協調性は少し関係あるかも?くらい)

相手との関係に責任を感じる人は信用できる

 というわけで、罪悪感を持つ人は「この信頼関係は私達二人のものだ、私にも責任があるからそれに応えよう!」と考えるので信頼行動を取りやすくなったのでは?ということですね。ふむふむ、納得感があります。

 その論理からすると、責任感が強い人も信頼する行動が高いと考えられます。たとえば、いい上司は部下が元気で生活できるように面倒見るのが自分の仕事、と考えて距離感を保ちつつプライベートまで気を遣ってくれます。ただ駒のように働いてくれればいいという上司ではこのような部下の人生に対する責任感は持ち合わせていないでしょう。こういう上司なら信頼して多くの人がフォローするのも頷けます。

 フリーランスの仕事でも、「オレと組んだからには損はさせるわけにはいかねえ!」みたいな人がいますが、この手の人は能力だけではなくて信頼性という意味からも頼れる相手だと言えるでしょう。

ビッグファイブ(性格特性)は関係ない

 一方で意外だったのがビッグファイブの性格特性はあまり影響なかったという事。

 具体的には誠実性や協調性といった因子も信頼行動にあまり影響なかったところを見ると、やはり「誠実な人だから協力に背いたりしないだろう」というのは一見納得感がありますが少し安易すぎるのかもしれません。

 「マジメだから目的の為には全力で協力に背いてくる」のような現象が起きるのかもしれません。確かにまじめな人って真面目過ぎて問題起こしたり、黙ってればいいのに余計な事まで正直に喋ったりすることがありますよね。‥うーん、この件については私も思い当たるふしがあるので気を付けようと思います。

 補足になりますが、そもそもビッグファイブとはなんぞや?という人が多いかと思いますので、少し解説をしていきます。

ビッグファイブとは妥当性のある性格分類

 ビッグファイブというのは「誠実性・開放性・神経症傾向・協調性・外向性」の5要因からなるもので、それらの強弱によって個人の性格特性を把握しようというものです。ビッグファイブはこういった心理学研究ではよく使われており、性格特性を表現するのに有力とされています。

 たとえば私であれば「誠実性がブチ抜きで高く、開放性・協調性・外向性がまあまあ高く、神経症傾向が普通」といったパーソナリティ特性になっています。注意してほしいのは、これらのバロメータは学校の成績と違って高けりゃ高い方が良いといった類のものではありません

 たとえば私の誠実性がブチ抜きで高いという特性は時折「頭が固く融通が利かない」という負の側面として出現する事があります。「誠実すぎて困る事はないだろう」というのは理想論であって、「誠実すぎて社会性がない」といった事は十分にあり得ます。これらの因子はいい悪いではなく、環境や状況によって特定の性格特性が好まれる事があるだけです。マキャベリも言っていましたが、「状況こそが最善手を決める」のです。

個人のパーソナリティを読み解きたいならビッグファイブから

 ともかく心理学研究において性格を分類するならまずビッグファイブというわけですね。というよりネットでよくあるような「あなたは○○タイプ」といったものの大多数はかなり妥当性が怪しくてですね、ちゃんと検討されているかというと占いみたいなレベルのものが結構多かったりします。この占いみたいな分類で本当に自分や他者を理解しようとするのは無理があるでしょう。

 それよりは「この人は神経症傾向が高いな」「外向性というより開放性が高いな」といったように自分や他者を理解した方が妥当性が高そうです。それを元にコミュニケーションスタイルを変えたり説得方法を変えたりする方が望ましい結果に結びつきやすいと思われます。

 たとえば、初対面の人のビッグファイブを推測しメモしておくと、もっと仲良くなりたい時交渉が必要になった時に有利に運ぶ事ができます。相手の性格特性を含めてコールドリーディングを行い、手を引いてリードするか、それとも相手のペースに合わせるかを判断するのです。さらに、相手の苦手な所も理解できますから、そこを助けてあげる事でより関係も深まりやすいのです。

 このように人間の性格を読み解くビッグファイブを理解し使いこなしたい人は「パ-ソナリティを科学する: 特性5因子であなたがわかる」あたりが網羅されてて良いでしょう。

信頼できる人はこういう行動をする

他責傾向が強い人はマズいかもね

 以上のことから、本当に信頼できる人間なのか見抜きたい時はまず罪悪感を感じやすいかどうかを中心に考えればいいという事になります。

 ただし、初対面でいきなり「ところであなたは罪悪感を感じやすいですか?」とかぶっぱなすわけにはいきません。新手の勧誘だと思われて、あなたの信用どころではなくなります。

 ですから、もう少し時間をかけて会話などの中で見極めていきましょう。詳しくは以下のような行動や特徴が見られやすいのでポイントを確認していきましょう。

職場で他人が失敗した時に責めない

 たとえば、仕事で周りの人がミスをした時に「ちゃんと確認してよ」と言うのか、それとも「私も確認してなかったから、お互い次から気を付けよう」と言うのかなどはわかりやすいサインです。

 多くのミスというのは一人の原因で起きる事はまずなく、それゆえにヒヤリハットなどでは個人的責任の追及ではなくミス発生時の原因や環境を追求し改善に繋げていきます。ミス発生時に「自分を含めた環境にミスの理由があったかもしれない」という発言が出る事自体はフェアで誠実な発言です。

 人には失敗を認めたり謝れない脳の特性があるのですが、それに反して素直に謝罪できるような人も対人関係に責任感があると言えますから、信用に値すると考えられます。

 逆に一人の責任に帰したり責めるような人は他責思考が強いので信頼と言う意味では慎重になった方が良いかもしれません。あまりにも他責思考が強く対人関係に責任感がないようならば、しっぺ返し戦略で寛容にしすぎない方がよいでしょう。

約束を守れなくても、対案を出してくれる

 約束を守ってくれる人はもちろん信用できるのですが、心から信用できる人は仮に約束が守れなさそうでも、早い段階で謝罪や相談して対案を出してくれます。

 状況と言うのは変わっていくものですから、結果的に前もってした約束がうそになってしまう事もあります。その際に信用できない人は「他の人が悪くて‥」などと責任転嫁します。

 ですが、信用できる人というのは自分のした約束に責任感がありますから、「この件は申し訳ない、だけれどこれならできます」と何とか相手に迷惑がかからないように対案を持ってきます。

 もちろんそれは本来の約束よりも一段二段劣るものかもしれません。ですが、その状況でできる事は全てやってくれたとしたら行動そのものは信用に値します。

 問題が起きた時に彼らの立場なりに精一杯できる対応をしてくれた人と、本当だとしても他の人の責任だと説明する人がいたのだとしたら、どちらが責任感があり、無責任なのかは自明でしょう。

相手の利益も考えて行動する

 相手との関係に責任感を感じる人は、相手のメリットにも気を配ります。自分だけで独り占めはしません。

 独り占めすれば短期間ではもちろん利益は得る事があるかもしれません。ですが信用できる人と言うのは協力した方が大きな利益が得られるという事を経験上知っています。自分のリソースを与えて協力して、お互い利益を分け合った方が成果が大きいし関係も長続きするのです。

相手の利益を考え、与えるならば「トップギバー」になるべき

 こういった特性のある人を組織心理学者のアダムグラント博士はギバー(与える人)と呼んでおり、逆に独り占めする人の事をテイカー(うばう人)、そしてバランスを取る人はマッチャーと呼んでいます。2)

 その中で最も成功する人の事をトップギバーと呼んでおり、テイカーより大きな利益を出すことが可能です。ただしアダムグラント博士は「成功するギバーはしたたかな行動戦略がある」「いい人だけでは絶対成功できない」といった旨をGIVE&TAKEで述べています。もしあなたが罪悪感を感じやすく責任感の強いタイプだとしたら、人に利用されるだけのいい人だけにならないように気を付けた方がいいでしょう。

 人間関係はしっぺ返し戦略が良いと以前記事にしましたが、これも悪くはありません。ただし、どちらかといえばギバー寄りのマッチャー的な発想で、トップギバーになるにはもうひとひねり必要です。トップギバーは全体の利益を増やすので、自己犠牲がないばかりか自分の利益をも増やします

 相手だけではなく自分にもプラスがあるので、相手に利益がある行動をするのに自分もどんどん幸せになる。だから与えても右肩上がりのまま長続きするということですね。いい人な上に自分への利益まで大きい。ワンランク上のトップギバーになりたい方はアダムグラント博士の良書、「GIVE&TAKE」を一読してみてください。

それから、心から信頼できる人かどうかは一回で決めない事ね!

引用・参考文献

1)Levine, Emma E., et al. “Who is trustworthy? Predicting trustworthy intentions and behavior.” Journal of personality and social psychology 115.3 (2018): 468.
2)Grant, Adam, 楠木建. GIVE&TAKE : 「与える人」こそ成功する時代. 東京, 三笠書房, 2014, ISBN9784837957461.

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