反対意見を言って嫌われる人と、信頼される人の大きな違いとは?

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 「この人反対意見ばかりで苦手だ!」「文句しか言えないのか!」

 会議や会話でそう感じる相手っていますよね。しかし、同じように反対意見を言っても「アイツは見どころがある」と逆に信頼される人もいます。この違いとはいったい何なのでしょうか?

 嫌われるタイプの反対意見を言う人にはどんな特徴があるのか、そして自分が反対意見を言って損をしないようにするためにはどうすればいいのかということについて、一緒に論文から学んでいきましょう!

反対意見を言って嫌われる人と信頼される人の大きな違い

 まず、嫌われるタイプの反対意見を言う人は反対意見を言っておしまいという事が多いです。

 つまり、その意見はイヤだとは言うけれど、実際にもっと良い案や戦略を持っているわけではない事が多いのです。これだとただケチをつけているだけになってしまい、「私は何もしないけど、私が気に入る意見が出るまでやりなおしてちょうだい!」というわがままな態度では嫌われてしまうのも当然でしょう。

 しかし、勘違いしないでほしいのは反対意見そのものが悪いわけではありません。彼らの反対意見の使い方が下手なのは問題ですが、使い方さえ上手ければ反対意見を言ってもむしろ信用される事もあるのです。この違いを最初に抑えておきましょう。

社会問題については反対意見を言っても信頼されるメリットがある!

 今回参考にするのは2019年Julian J. Zlatevらの研究で「あなたには同意しないけど、信じるよ。社会問題を気にしているのは配慮の証」というタイトルです。1)この論文の内容としては以下の通りです。

  • 社会問題に対する意見では、自分とは賛成・反対意見どちらを持っていても誠実で信頼できる人だと思われた
  • 頑固に反対意見を持った人をキライだと思ってたとしても、信用できる人だという印象は持った

 社会問題に関心があること自体が誠実で信頼できるサインとして受け止められたという事ですね。さらに、意見が違ったとしても社会問題に対して関心があり何とかしたいというゴールは一緒なのですから共通点も同時に持ち合わせているわけです。

テーマに対して真摯で、最終的なゴールが同じなら反対意見でも信頼される

 この結果ついて考察すると、社会問題への関心はもちろんですが、重要なテーマに対して真剣に考えており、正直に意見を伝えた場合は信頼されやすいと考えられます。例として以下の主張を比べてみましょう。

 「増税には反対だ、生活に困窮している人がさらに苦しむことになる」
 「いいや、増税には賛成だ。社会や福祉がフォローしなければならない人もいるから財源が必要だ」

 この二つの意見は正反対のようですが、生活困窮者に対してフォローが必要だというゴールは一緒ですよね。こういった話題では自分の意見をはっきり述べる事は信頼と言う意味でもプラスに働きます

 さらに自分の意見を正直に話すという事自体が正直・信頼のサインであり、もし意見が違ったとしても「気に入らない所もあるが、アイツは信用できる」という印象を抱かれるという事ですね。

反対意見を全く言わないイエスマンも信用されない

 しかし、意見が同じだとしても相手に合わせてフワフワ迎合しているようでは、やはり信頼はされにくいでしょう。「ヨッ、さすが部長!その通り!」といった腰ぎんちゃくキャラが信用されないのはなんとなく理解できますよね。

 私も仕事をしていて色んな学説の人に出会います。意見が違う事はありますが、少なくとも「全部その通りだと思います、ヨイショ!」なんて人はやはり信用できません

 逆に「私は違うと思いますね。全然違うと思います」と言われる事自体は「何言ってんのコイツ」と思う事はあっても、「コイツは正直で熱意あるな」と学問の質を良くしていこうと真摯に取り組んでいる熱意はリスペクトできます。

 自分だけではなく学問として良くしていこうと考える姿勢はそれだけで信頼に値しますし、考え方が違うだけで元をたどっていけば同じところに行きつくわけです。意見が違うからといって必ずしもマイナスに働くわけではありません。

嫌われやすいタイプの反対意見

 対して、ゴールが一緒ではない反対意見を言うと、嫌われたり煙たがられやすいと言えます。

 何にでも反対意見を言う人は、この手の話題にも平気で反対意見を言うので反感を買っている事が多いです。私たちはこの手の話題では明言を避け、話題を変えて逃げた方が良いでしょう。これを日本語では「空気を読む」と言います。

 たとえば野球チームの阪神と巨人、どっちが好きというのは反対意見で嫌われるタイプの主張になります。なにしろ優勝の座は一つですから、阪神と巨人が行きつくゴールは一緒ではありません。ですから熱狂的阪神ファンに「巨人ファンです」と言うとライバル関係が出来上がってしまいます。

 このようにゴールが確実に違っていてどちらかを選べばどちらかを捨てる事になるような話題は難しいです。よって、古来より初対面で野球の話はやめましょうと言い伝えられているわけです。このような話題は避けるか、なるべく対立は極力避けた方が安全です。

 さらに悪い事に、この手の話題は対立を避けようと「あっちもいいけどこっちもいいよね」と、買い物に付き合わされている彼氏みたいなポジションは許されません。「阪神もいいけど、巨人もいいよね」では信用されないのです。

 このようなとても難しい話題と状況に対しては、トーマスカーライルの言葉が役に立つでしょう。彼はこう言っています。「沈黙は金」と。反対意見しか言わないと思われている人は黙る事が苦手だったりします。

ただ反対意見を言う人間にならないためには

 以上の事から、ゴールが一緒で問題に真摯に向き合っており、正直かどうかが信用される事には大事ということになるでしょう。そこまで考えていれば反対意見でも現実的な解決への筋道も出来上がっているでしょうし、ただ否定から入る厄介な人物とは誠実さも全く違います。

 最後に、私たちが上手に反対意見を言うための具体的な方法について学んでおきましょう。

上手な反対意見の言い方実例

 たとえば、今までの話を仕事でのコミュニケーションに応用してみましょう。あなたが会議で「働きやすさより利益を優先せよ」というチームの意見とは反する表明をしなければならないとします。当然、チームは反対するでしょう。

 この時は考えが違っても相手とゴールが一致している事を強調して説得します。

「みんな、今期は売り上げが大事だ。なぜなら会社は営利目的で、私達の発言権も稼がないと与えられないからだ。
 確かに忙しくなるし、やりにくさがあるのもわかっている。だからこそ、今期は売り上げを中心に考えてやってほしいんだ。そうすれば彼らも私達の声を無視できなくなる。こうしたいという意見も通りやすくなるだろう。今のやり方を変えるためにも数字が必要なんだ

 と、相手のゴールを達成する為に違う方法を取る事のメリットを表明する方が信頼されるしうまくいくでしょう。この時にスピーチが上手い人に特徴的な話し方を組み合わせるとより説得力が乗ってきます。

やり方は違うけれど、あの人は真剣に問題に向き合っているんだなぁ」「考えている事はともかく、この人はウソは言わないよなぁ」と思われれば、確かに裏表がない人物と考えられますから信用できます。過去の記事にもあるように、人間の直感は信頼できる人を3つの要素で判断しており、その中には「誠実さ」があるのです。よって、反対意見でも正直でゴールが一致しているんだと伝えた結果かえって信頼されると言えるのです。

反対意見だけではなく共通点はあった方がいい

 ただし、ロバートチャルディーニの「影響力の武器」では、相手の「好意」を引き出すものがまとめられていますが、その一つとして共通点があることが述べられています。2)この論文でも相手と反対意見を頑固に持つと信用はされても苦手意識は持たれていますから、時に相手に合わせる事自体は必要だと思います。

 しかしすべてに同意をすれば、「こいつ迎合しているだけじゃないか」と信用されませんから、このバランスを取る事が重要です。

反対意見で正直さを、共通点で好感のバランスを取る

 まとめますと、ご機嫌取りだけでは信頼は得られません。時折「そこについては私は違う意見です」と正直に伝える事はやはり誠実にも見えるでしょう。

 その双方のバランスが取れるところが、「ゴールは一緒(共通点)だけれど、途中の考え方が違う(反対意見)」となります。この条件にあてはまるように自分の意見を話せば、おいしいところを両取りできるわけです。まずは楽な状況で「ゴールは一緒だけれど方法が違う」式の反対意見を言う練習をするのがおすすめです。

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引用・参考文献

1)Zlatev, Julian J. “I may not agree with you, but I trust you: Caring about social issues signals integrity.” Psychological Science 30.6 (2019): 880-892.
2)Cialdini, Robert B. 影響力の武器 : なぜ、人は動かされるのか. 第三版, 東京, 誠信書房, 2014, ISBN9784414304220.

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