あ〜、腹が立つ!
「おまえの代わりはいくらでもいるんだ!」なんて私のことばかにしてるよ!
ずいぶん怒っているみたいだね。
そんなこと言われたなら無理もないけど…
そう思うでしょう!?
そもそもあの上司は私がどれだけ仕事をしているのかわかってないんだよ!
コピー機の用紙すら補充しないくせに!
そういう人は一定数いるからね…。
それなら、彼らが心理学的にどういうメカニズムでそのような発言をするのか理解してみない?
いつも言っていることだけど、理屈がわかると脳の論理性が働くから気持ちの整理がつきやすいんだ
相手のことは知りたくもないけど…でも相手の分析をするのは面白そうかも!
そうでしょう?
それにこの心理的メカニズムを逆手に取れば、自分の評価を上げることもできるんだよ!
いいじゃないの。気に入ったわ
(なぜ上から目線なんだ?)
それじゃあいつものように心理学とエビデンスから解説していくよ!
オナシャス!
人には他人のがんばりを軽視するバイアスがある
じゃあ、今回の件をもう少し詳しく聞かせてもらえるかな?
わたしは他の人に比べて仕事も、重要な業務もたくさんしているんです。
それなのに少しミスしただけで「お前の代わりはいくらでもいるんだ!」って上司に言われて。あの人は何もわかっていないんです!
それはひどいね。あなたが誰より仕事をこなしているのは間違いないみたいだし。
そして、理不尽なことだけど相手も同じことを考えている可能性が高いんだ。
実は、人間には自己奉仕バイアスという考え方のかたよりがあるんだ。
これはかんたんに言えば、「自分は他の人よりもたくさん貢献している!」と考えてしまう現象だな
2004年Mezulisらのメタ分析では、266件の自己奉仕バイアスについての研究を分析した結果、以下のような結果が出ています。1)
- 分析の結果、自己奉仕バイアスは効果量(d=0.96)と大きなバイアスを示していた
- 子供と高齢者が特に大きなバイアスを持っていた
効果量0.96っていうのは、たしかめっちゃ大きいんでよすね!
…つまり、私の仕事は思ったほど他の人から評価されていないということ?
残念ながらそういうことになる。
事実としてあなたが仕事に貢献していたとしても、相手はそう感じていないことがほとんどだ。
Mezulisらの研究によると、相手が年を取っていればなおさらその傾向が強いと言えるだろう。それどころか「自分が一番頑張っている」くらいに思っている。
これはあなたに限らず、社会全体で発生していることなんだ。
だから上司はあなたに「ろくに働いてないくせに。私くらい働いてから言え」と思っている可能性が高いぞ。実際の働きには関係なくだ。
うわ〜、ないわ〜…
まとめ
みんな自分の方ががんばっていてスゴイと思っている
先入観は逆手に取ってしまうのがいい
だが、このバイアス(先入観)を逆手に取ると自分の評価を爆上げすることもできる。
みんな自分の方が働いていて、たくさん貢献していると思っているんだ。
そこで相手の働きを労ったり、普段からやっていることに改めて感謝したら相手はどう思うだろう?
他の人はあまり働いてないと思っているのだから…誰もわざわざ褒めたりしませんよね。
その中で自分だけ相手の事を褒めたり感謝したら…
私のことを「この人だけは見る目があって有能、よくわかっている人」と感じるかもしれません!
その通り!他の人が指摘しない分、その言葉は相手に刺さるんだ。
みんな仕事では苦しいことが多いから、あなたのことを良き理解者と感じて人望を得るだろうね。
逆に、バイアスに飲まれて「お前の代わりはいくらでもいる」と言ってしまうことがいかに愚かかわかるだろう?
人望を失うだけでメリットがないですもんね
そうだね。
おそらく職場や仕事のことを何一つ理解していない無能だと思われてしまうだろう。
現に、さっきあなたも上司に対して同じことを思ったはずだよ。
仕事うんぬんはともかく、その上司は立ち回りがあまりにも下手すぎる。
心理学を勉強しておけば自分の評判まで下げることもなかったはずだ。
今からでも上司にはこの記事を教えてあげてほしいが、たぶん教えないだろう?
絶対教えないですね
まとめ
周りの人にはおおげさに働きをねぎらうことでポイントアップ!
「よそでは通用しない」という言葉も真に受けすぎないように注意!
このような理由でバイアスがかかっているから「代わりはいくらでもいるんだ!」みたいな発言を真に受けすぎる必要はないぞ。
もちろん相手の批評に正しい点があれば改善していくことは自分のためにもなる。
しかしロクな理由もないのにケチをつけるだけの人もいるからな
その上司には、「よそでは通用しないぞ」とかも言われました
それも典型的な自己奉仕バイアスだ。
翻訳すると「自分の配慮は特別素晴らしいもので、こんなに働きやすい場所は他にないのに」と言っているわけだ。
だが実際は大した配慮ではないし、配慮が不足していることも多い。
そもそも配慮してくれる良い上司はそんな発言はしない
私以外にも同じことを言われた人がいますけど、環境が変わったらめっちゃしごできになってました。これはそういう理由なんですね!
感情的な意見は真剣に聞きすぎないようにします!
まとめ
「よそでは通用しない」というセリフも真剣に聞きすぎない
ただし、労働者は代わりが利くというのは一理ある
ただし、上司の言う事にも一理あることを覚えておこう。
会社というのは必ず代わりが利くものと思った方がいい。
もし本当にあなたの代わりが利かないなら、会社の存続はあなたにかかっていることになる。
もしそうなら、会社はあなたの言いなりになるはずだぞ
…たしかに、私がいない=倒産ではないですね。
でも、職場で私が抜けたら大変そうですよ?
とても仕事が回るとは思えないのですが…
確かに君が抜けたらしばらく大忙しになるだろう。
チームや同僚からすれば忙しくてたまったもんじゃないよな。
だが、それでも大局には影響がないことがほとんどだ。
それにはちゃんと理由もある
どんな理由があるんですか?
私が抜けたら職場崩壊すればいいとすら思ってしまうんですが
そもそも論になるが、従業員に「お前の代わりはいくらでもいるんだ」と言うような組織にはちょっと問題がある。
そんな会社に今まで退職者が出なかったと思うか?
エース級の社員に逃げられる事なんて、おそらく今まで何回も経験しているだろう。
なにしろ有能なヤツは転職先に困らないからな
たしかに…。
上司は今までも嵐を何度も経験している…ってコト!?
そうだね。
だから上司の考えとしては、「まあ代わりは利くからな、よくあることだ」と思っているか、自分の都合の悪いことが起きて感情的になっているだけなのか。
あるいはその両方か。
両方な気がしますが…。
では、今私が上司に腹を立てて仕事を辞めたとしても…?
あなたが考えているほど会社も上司も困らないし、本当に代わりは利く。
多少の不便は発生するかもしれないが、相手からすればよくあることにすぎないだろう。
この点では「代わりはいくらでもいる」という上司の言う事に一理あるんだ
まとめ
あなたの代わりがいるのは間違いない
代わりがいるのなら、自分にとってトクなことをするのが合理的
まとめると、あなたの働きはバイアスにより軽視されているが、確かに代わりはいる。
だから逆を言えば、周りに気を遣いすぎず、自分の権利の範囲で好きにするという選択肢もあるんだ。
たとえば、家族の都合で急に仕事を休んでもたいていなんとかなる。
「お前の代わりはいない!だから葬式だろうが絶対に休むな!」
っていう考えもやはりおかしいだろ?
そうですね。
自分は職場に必要とされたいけれど、仕事以外に大切なこともあります
バランスの取れた考えだね。
だから上司に「代わりはいくらでもいるんだ!」と言われたら、上っ面では従順なフリをして現職をキープしつつ、好待遇の会社を探すというのも自由ということになる。
私だったらそうするな、会社の代わりはいくらでもあるんだし。
お互いに代わりが利くってことですね!
そうだよ。
そもそも、その上司はなんで一方的に選ぶポジションだと思っているのかね。人間は選ぶし、選ばれる。当たり前だよ。
そして、社会ではたくさんの人から選ばれる人の方が有利だ
それなら、会社の中で仲間を増やしたり、友達を増やして転職先の情報を集めたりすると有利になれる…ってことですね!
そうだね。
求心力を増したいなら、魅力と影響力の心理学や職場で使える心理学のカテゴリ過去記事に役立つものがあるんじゃないかな。
私もあまり交友関係を広げるのは好きではないが、人脈の力は本当に大きい。
ネットワークを広げておけば仕事でもいろんな選択肢が増える。
アンテナを張っておくためにも交友範囲は広げておいた方がいいぞ
交友関係を広げるか…あまり得意じゃないんですよね…
大丈夫だ。
私はオタク気質だし、交友関係を作るのも好きじゃないし苦手だったタイプだ。
だが、そんな私でも仕事関係では仕方なくやっているし、できている。
コミュニケーションもしょせん人のやる事で技術にすぎないから、ちゃんと方法がある。
心理学の知識はその最たるものだ。そう聞くとなんとかなりそうだろ?
じゃあ、私もビジネスコミュ強を目指してがんばってみようかな!
自分が多くの選択肢を持つことが上司への最高のカウンターになるんだ。
まずは下記の過去記事あたりから取り組んでみて!
引用・参考文献
1)Mezulis, Amy H., et al. “Is there a universal positivity bias in attributions? A meta-analytic review of individual, developmental, and cultural differences in the self-serving attributional bias.” Psychological bulletin 130.5 (2004): 711.