
あの人せっかちですよね。
少しくらいゆっくりしていればいいのに

気持ちはわかるけどね。
人それぞれではあるけれど、あまりにも待てないと損をすることが多いと思うよ

待てない人は損をする?
どうしてですか?

それは待てない人が持つ特性が判断力に影響するからだ。
じゃあ今回は、待てない人の心理と損をする理由、それから待ててトクできる人になるための方法をエビデンスと心理学から解説していこう!

お願いします!
立場が弱い+時間を人のように考えるタイプの人は待てない

まず、待つという時間に対するマインドセットを変えることが重要だ。
実は立場が弱い人が、時間を擬人化して考えると忍耐力が低下しやすいという研究があるんだ
2014年Mayらの論文では以下のように述べられています。
- 時間を擬人化すると、立場が弱い人は人は忍耐力が低下しやすい傾向にあった
- その理由として、立場が強い人は他の人に注意を向けないが、立場の弱い人は他の人の影響を受けやすいため注意を払いやすい傾向にあるためと思われる
- よって、立場の弱い人は待ち時間といういやな「者」に対して影響を受けやすく忍耐力が低下する
- 一方、立場のある人は自分でコントロールできると考えているので他者(時間)に注意を向けず自分に集中できる。よって、いやな「者」に対しても忍耐力には影響がないっぽい1)

えっと…つまり、権力や立場がなくて「もうすぐ時間がやってくる」「この時間が私を苦しめる」みたいに考えたり表現する人は待てないってことですか?

そういうこと!
論文から抜粋すると「時間は小さい子供みたいなものだ、走るのを止められない」みたいな擬人化したイメージを持っていて、権力などがない人は待てない傾向にある。
これは直訳だからしっくりこないかもしれないが。
だから立場が弱い・時間を擬人化するという属性をダブルで持っていると待てないタイプと言えるだろうな

立場が強い人は待つのを苦にしないんですね!

立場が強い人は「自分で何とかできる!」という感覚(自己効力感)を持っているからね。良くも悪くも自分ごとなんだ。
文句ばかり言う人の末路の記事で自己効力感について解説したが、やはり自己効力感が低いと不安に直接的で大きな影響を与えるようなんだ。
自分がやるべきことに集中できる人は待てるし強いってことだな
まとめ
強い子は待てる!
待てない人は損をしやすく心配性傾向

私も待つのは苦手だが、やはり待てる人の方がトクをすることが多い。
実は待てない人は不確実な報酬を待てず、しかも心配性だということが報告されている
2018年Tanovicらの待つことに関する研究では、被験者にすぐ結果の出る期待値の低い選択と待たされるけど期待値の高い選択どちらかを選ぶという意志決定タスクを行ってもらいました。
この論文では以下のような結果が報告されています。
- 不確実なものを待てない人は神経症傾向、不確実に耐えられない傾向、心配性傾向が高かった。さらに遅延割引率が高い傾向にあった。
- 待てない人は、待った後に神経質になったという報告をする傾向にあった2)

待てない人は将来得られる利益を軽視してしまうんですね

そうだ。これを遅延割引という。
つまり目の前の利益に飛びつきやすくなるってことだな。
この傾向が強いほど、不確実な状況で待てなくなる

それが何の問題があるんですか?
不確実なことに対してそのままにしておくのは私も気持ちが悪いです。
できればどっちかはっきりさせてスッキリさせたくなりますよ

そうだね。そのはっきりさせたいというのは人間の本能なんだ。
だが、この本能が行きすぎるとまずい判断の元になる。
たとえば、過剰に不確実なことへのリスクを回避するために恋愛とかでも早々に諦めてしまったりする。恋愛で相手の気持ちがはっきりするには時間がかかるからな。
勝手に脈なしだと決めつけて結論をはっきりさせ、安心しようとするんだ。
付き合っても相手からLINEで返信がないと鬼電したり問題行動に繋がったりする

…その気持ちはわかりますね。
わたしもLINEの返信や人を待っている時に、いつ来るかわからないとやきもきしちゃいます。
じゃあ、普段から待てないというのは損をする行動と関係がありそうってことですか?

そうだね。待てない傾向というのは、思った以上に高くついている可能性がある。
まず待てない人は即時報酬につられやすく、不確実なことに耐えられない傾向にある。
さらにネガティブな感情を調整する力も弱かったりするから、待っている間何度もネガティブな事を考えてしまう。
だから「もしかしたら返信がないのでは…」「このまま何時間も待たされるのでは…」「こんな事なら最初から待たなければよかった…」とネガティブを考え続け、神経質になる。
結果として待つのが苦手で鬼電などをしたりしてしまう、というわけだ

他にも、不安のあまり必要以上に家電やスマホの補償プランに入ってしまうなんていうのもよくあるパターンだな。
これはいざという時の補償以外にも安心を売る商品でもある。必要以上の安心は非常に高くつくんだ。
だが安心を取るのが悪いわけではない、立派な価値でもある。
後悔しない選択をするための決断法でも解説したが、論理と直感両方を判断材料にして、あなたの価値観での最適はどこか考えてみるのもいいだろう
まとめ
心配性な人は不確実に弱く待てないっぽいぞ!
待てるようになるとトクする人になれる理由

この研究を逆から見ると、待てる人はトクになる選択ができるということだ。
たとえば、返信がないからといって鬼電したあと関係がうまくいったことがあるか?

…ありません

これは心配や不確実なことに耐えられないせいでマズい選択肢を選んだから起きたことだよね。
待てる人は「まあ待て、今どうするのが賢いかな?」とブレーキをかけ、長期的に有利な選択をすることができる。
たとえば「連絡なかったから心配したよ。ごめんね、忙しかった?」と返信を待ってから言った方が、関係性としてはよほどプラスになるはずだ

じゃあ、他の例なら…
たとえばスマホが壊れるかもしれないから、オプションで補償をつけるかどうかで、長期的に考えられる人だと…

「まあ待て。私は今までどれくらいの期間でスマホが故障しただろう?
たしかに壊れると考えて補償をつけるのは簡単で安心だけど、壊れない可能性もあるよな。
それに、冷蔵庫・洗濯機・テレビ・掃除機…このまま補償を増やしていったらトータルですごい出費になる」
こんな風に考えるわけだ。

なるほど!
…でも、本当に故障とかしたらどうするんですか?心配ですよ

そこで大事なのが「リスクを計算して取る」ってことだ。
何も備えずノーガードでリスクを取るのはただの無謀だ。
さっきの例なら、
「今は貯金もあるし、そのオプション補償にかけるお金を自分で貯めておいて、故障のたびに買い替えたほうが安上がりかもな。対応できるか計算してみよう」
そう考えるわけだ

賢いですね。
待てない人はリスクを計算して取れないということですか?

その傾向にあるだろうね。
待てない人は、どうしても今我慢して長期的な利益を取るということができない。
つまり衝動的に行動してしまう傾向にあるんだ。
世界一の投資家ウォーレンバフェットは「なぜ他の人はあなたのやり方をマネしないんでしょうか?」と聞かれて「ゆっくりお金持ちになりたい人などいないからね」と答えたそうだ。
莫大な富を得られた理由がこの一言に詰まっていると思うぞ

ふうん…
じゃあ待つことができた方が人生イージーモードっぽいですね

そうだね。
それに、「待つことができる」人は即座に行動もできる人が多い。
彼らは待つのが好きなのではなく、長期的に有利だから待っているだけだからね。
バフェットも決断すれば一気に株を手放したりしている。行動力がないわけではないんだ。

このリスク管理をするのはとても難しい。
ダン・ガードナーはリスクにあなたは騙される:「恐怖」を操る論理において「驚かなくてはいけないのは、私たちがときどきリスクに関して過ちを犯すことではなく、ときどきリスクを正しく理解することだ」3)とまで言っている。
この本を読むといかに人間がリスクを正しく認識できないか、感情で判断しているかがわかるだろう
まとめ
待てる人は成功しているし、成功していると待てる
待てる人になるための心理学的対策
まず何にヤキモキしているのか理由を自覚する

いつも言っている事だが、まず自分の気持ちを言語化することからだ。
「待ち時間がわからず不確実な事にイライラしているんだな」
「今自分はコントロールできないと感じていてやきもきしているんだな」
このように待てない理由について気づくことがまず一歩目だな。
自分の考えや気持ちを言語化できるとコントロールしやすいんだ。
逆に何にイライラしているのかわからないと対策しようがないからな

基本ですね!
まずは自分が待てない理由に気づくところから。
そのヒントとしてさっきの研究に当てはまるところはないか考えてみます!
まとめ
自分が待てない理由はどれに当てはまるのか思い出そう!
時間はモノ化して考えろ!

さらに、時間は人ではなく無機質なモノとして考えるのもいい対策だ。
特に、これは立場があまり強くない人にはよい手だ

立場が弱い人は時間を擬人化していると待つのが辛いからですよね。
でも、立場が強い人はどうして大した影響ないんでしょう?

立場や権力がある人は、自分でなんとかできると考えているからだ。
彼らは自分で道を切り開き、能動的に行動していく。
そして世の中には悪い人や思い通りにならない人がいることも理解しているんだ。
そして、それを含めて行動するから悪い影響を受けることがない

かっこいいですね!
…ってことは、立場の強い人は待てるからなおさらトクになる行動ができるし、弱い人はより損をする行動をしやすいってことですか?

そうだね。
逆を言えば、自分の状況が良くなれば、待てる忍耐力が発揮できるようになっていくってことだ。
ただ自分の立場を強くするには時間がかかる。
だから時間をモノとして扱うことから対策をするのがいい

時間をモノとして…?
言葉遣いを変えればいいんですか?

まあそうだ。
たとえば「時間が癒してくれる」と言ったりするが、この表現には寄り添ってくれる人のようなイメージがある。
そこで「時間は回復アイテムだ」みたいにモノに置き換えてしまうのは一つだな。
時間に意思はない、中立だ。あなたに仇なすものではない

モノだと考えることでニュートラルな扱いにするんですね!
まとめ
時間は人ではなくモノのように扱おう!
時間は「いい影響を与えるものだ」と考えろ!

今まではマイナスをゼロに戻す方法を紹介したが、実はもっといい方法がある。
待つことのメリットを強く認識することだ。
時間をいい人だと考えるということだな

え?時間を人扱いしてもいいんですか?

いいんです!
なぜかというと、立場が弱い人は他人次第だと考えてしまいやすい。
だが、これはめっちゃ頼りになる人がいる場合は良い戦略だよね?
だからその頼りになる人に何かしてもらっている場合は忍耐強く待てるというわけ

ほほう!
たしかに私もキティちゃんのポップコーン自販機でできあがるのは待ててました。
私は昔からキティちゃんに全幅の信頼がありますからね!

うむ。それは「この待ち時間にキティちゃんは私のためにおいしいポップコーンを作ってくれているんだ!最高のポップコーンを頼むよ!」と思っているから忍耐力が向上しているんだ。
これがもしすっげえイヤな奴が適当にポップコーンを製造しているところだったら待てないはずだ

1秒たりとも待てませんね。
早くポップコーンを持ってこいって思います

そうだろう?
だから、時間のことをポジティブに考えた方が待てるということだ。
そうやって忍耐力が発揮されれば長期的に賢い選択ができるようになる。
すると結果的に自分の立場も少しずつ良くなっていくというわけだ。
するとさらに待てるようになり…という正のループに入る

時間は良いパートナーで二人三脚で成長していく感じですね!

とてもいい擬人化だね。
だから普段からお店で待たされることに対しても
「結構待たされているけど、これはクレープのクオリティを下げないというお店の方針なんだ。作り置きをしてただ客をさばけばいいと思っているわけではないその姿勢やよし!最高の状態のクレープを頼むぞ!」
と考えると忍耐力が向上するんだ。試してみるといい
まとめ
待つことのメリットを意識しよう!
引用・参考文献
1)May, Frank, and Ashwani Monga. “When time has a will of its own, the powerless don’t have the will to wait: Anthropomorphism of time can decrease patience.” Journal of Consumer Research 40.5 (2014): 924-942.
2)Tanovic, Ema, Greg Hajcak, and Jutta Joormann. “Hating waiting: Individual differences in willingness to wait in uncertainty.” Journal of Experimental Psychopathology 9.1 (2018): 2043808718778982.
3)ガードナー, ダン. リスクにあなたは騙される: 「恐怖」を操る論理. 日本, 早川書房, 2009.