この記事三行まとめ
・気合いじゃ気分は切り替わらない。ストーリーを使う気分誘導手順がおすすめ
・落ち込んだ時に笑っても大して気分は変わらない
・映画やマンガなど、誘導したい気分によっていくつか物語≒切り替えスイッチを用意しておく
一人で落ち込むことはありませんか?
一人暮らしを始めると、当然ですが自分の時間が増えます。仕事やバイトで辛いこともあるのが社会ですから、1人で落ち込んだり寂しい感情におそわれる事もあるでしょう。
そんな時に友達や家族など誰かと連絡が取れればいいのですが、深夜だったりするとそうもいかない事もあります。1人でなんとかしなければならないこともある。これが一人暮らしです。
では、一人で落ち込んだ気持ちを切り替えるのにはどうすればいいのか?心理学の研究からライフハックを学んで、一人暮らしのストレスに対処していきましょう!
気分は気合いで変わらない、変えるには「気分誘導手順」が必要
気持ちって「変えよう!」と思って変わるものじゃないからね
今回参考にするのはRWestermannらの論文で、MIPs(気分誘導手順)の中で人が特定の感情になるには何が効果的なのかを調べてくれたものになります。1)
なぜ気分を変えるのに誘導手順が必要かというと、感情というのは「よし楽しい気分になるぞ!」と気合でなれるものではなく、何かトリガー(きっかけ)になるものが必要なんですよ。
確かに「楽しい気分になれ!」と思うだけで楽しくなれるのだとしたら、みんな楽しい方が好きですからへこんだりする人はこの世からいなくなっているはずです。そんなわけありませんよね。
気分誘導手順にはいくつかあるのですが、例を挙げるなら表情気分誘導というものが有名かもしれません。「泣くから悲しいんだ。笑おう!」と笑顔を作って楽しい気分を誘導したり、「険しい顔をすると余計深刻な気持ちになるから」と顔をあえて緩めたりするものです(顔面フィードバック仮説といいます)。
これらの方法はどこまで効果があるのか?という事をこの研究では調べてくれたわけです。その結果は以下の通り。
- 映画や物語といったストーリーを使用した気分誘導が最も効果的だった!
- 「こんな気分になるように考えながら見てね」と明確な指示があった場合は特に効果的だった。
- 音楽による気分誘導効果は中くらいの効果だった。
- 表情気分誘導の効果はかなり低かった。
- 全体として、気分向上よりネガティブな感情への誘導効果の方が高かった。
寂しい気持ちや不安は笑顔を作ってもあまり変わらない
以上の結果から、「辛い時こそ笑おうぜ!」式の気持ちの切り替え方はあまり意味がないという事がわかりました。別に笑う事で悪くなるわけではありませんが、確認された効果量としてはかなり小さいです。確かにつらい時に無理やり笑わされている社会みたいでディストピア感があり、しんどういような気がします。
この研究によると音楽や物語を使った気分誘導の方が効果があるようですので、特にこだわりがないのであれば他の方法を試す方が良いでしょう。
映画や物語のストーリーを使った感情誘導の方が気分を切り替えられる
この研究では気分を切り替えるのには映画や物語で感情誘導する方法が最も効果的とされていて、さらに「この気分を呼び起こしてね!」という指示があると効果がさらに上がりました。具体的に言えば、映画やマンガの主人公に感情移入して自分の気分を高めていくような感じですね。
自分がひとりで辛い状況なら、いわゆる「逆境系のアツい」マンガを読んだりするといいかもしれません。最終的に主人公は逆境を克服して仲間と勝利をつかみ取る、というのが王道的な展開ですが、この展開が愛されるのも気持ちを奮い立たせるような「気分を高める」MIPsの効果をみんなが有効活用しているからとも言えます。
ネガティブな感情も誘導されるので注意
さらに残念な話としては、ネガティブな感情の方が誘導することが容易だということがわかっています。ですから、寂しさや落ち込んでいるときにあまりネガティブに感情移入してしまうようなストーリーは避けた方がいいでしょう。
たいていの映画やマンガはネガティブの後にポジティブが来て最後はハッピーエンドになるものですが、救いの無いものもありますのでね。
1人でやるなら映画やマンガが感情の誘導としては手軽
実際に使いやすい気持ちの切り替え方としては、スマホやテレビを使うのが最も手軽です。
今はスマホやネット等で簡単にストーリーに接する事ができます。もちろんそれが小説や文章でも構わないわけですが、落ち込んでいる時や寂しい時、不安な時というのは受動的に物語を楽しめるメディアの方が手軽です。それらを使ってポジティブな感情を誘導してみるといいでしょう。私は読書が趣味ですが、なんだかモヤモヤした時にマンガや映画鑑賞をするのは以上のような理由からです。
映画や漫画を見るときに大事なのは、「今自分は孤独だけど、仲間を少しずつ作って一緒に乗り越えていきたいのだ!」「困難に負けずたくましく生き抜くファイトが欲しいのだ!」と最初に決めておくことです。そしてそのマンガや映画の登場人物を使って自分の感情を誘導していくのです。
たとえば1人でいることに孤独を感じ心細さを感じるのだとしたら、1人で危険な外に出て、数々の困難を乗り越えてたくましく生き抜くフォールアウトとかは見ていてグッと来ます。
この誘導したい感情と物語ががズレているといまいち気分が切り替わらず前向きになりにくくなります。たとえば、落ち込んだ時に機関車トーマスを見ても大抵よくわからないことになります。パワーで乗り切りたいならマッシュルとか、ちゃんと適した物語を選定しましょう。
そして、物語を使った気分誘導手順によって気持ちが切り替わり、前向きなファイトがいくらか誘導されたところで、「いま自分は何をしたらよいのか?」という事を考えてみるのです。
今は一人暮らしを始めたばかりで寂しいけれど、ここで友達を呼んだり素敵なパートナーがいたら楽しいだろうな。そう思ったらコミュ力アップの方法や第一印象をよくする方法など心理学の知識をつけて行動していけばいいのです。
一人暮らしは自由度も高まりますが、自分で解決しなければいけないことや孤独感もあり、これに立ち向かうのは大変な事です。そして、感情誘導などのライフハックを使ってそれをうまく乗りこなしていくたびに、あなたの問題解決能力はレベルアップしていきます。
お気に入りのマンガや映画をストックしておくといいよ!
引用・参考文献
1)Westermann, Rainer, et al. “Relative effectiveness and validity of mood induction procedures: A meta‐analysis.” European Journal of social psychology 26.4 (1996): 557-580.