心理学お悩み相談:モヤっとする!悪くないのに謝る人の男性心理って?

お悩み相談と自己改善の心理学

今回もお悩み相談に答えていくよ!

Q.今気になっている人がいるのですが、その男性は自分が悪くなくてもすぐに謝るんです。
優しくていいなと思う反面、その態度にちょっとモヤっとすることがあります。
どうして自分が悪くないのに謝ってしまう男性がいるんですか?
私はたまには言い返してもいいんじゃないかと思うので、彼にちょっと物足りなさも感じています。
これって私がおかしいですか?

なるほどね、優しい人だとは思うんだけれどモヤモヤする気持ちもわかるよ

素直に謝れることはいい事だと思うんですが、どうして自分が悪くないのに謝ってしまうんですかね?

じゃあ、すぐ謝ってしまう男性謝るという行為のメリットについて、心理学とエビデンスから解説していこう!

お願いします!

自分が悪くなくても謝る男性にもいくつかタイプがある

まず最初に言わなきゃいけないのは、すぐ謝る男性にも複数のタイプがいるということだ。
一見行動は同じでも、考えていることや性格は正反対だったりするんだ。

え?
すぐ謝る人は気弱で優しい人かと思ってましたが…ちょっと意外です

だから、相手はどのタイプに当てはまるかを考えながら読んでみてほしい。
ただ頼りないだけだと思っていたら大違いのこともあるぞ。

なぜ自分が悪くないのに謝っているのか、という行動の目的が大事なんだ。
よくわかるACTではこれを機能的文脈主義と説明しており1)行動分析にとても重要な概念だ

たとえば、同じ職場でも給料がいいからイヤイヤ今の職場で働いている人と、同僚に好きな人がいるから望んで今の職場で働いている人では、同じ仕事でも行動の意味が全然違うってことですね。

じゃあ、自分が悪くないのに謝る人にはどんなパターンがあるのか教えてください!

まとめ
謝るという行動は一緒でも、その目的は人によって全然違うぞ!!

感情的に動揺しやすく、自分が悪いと思ってしまうタイプ

まず、相手の勢いに押し切られて動揺してしまうタイプだな。
よく考えれば理不尽な言い分でも「自分が悪いんだ…」と思ってしまうタイプだ

え?本当に自分が悪いと思っちゃってるってことですか?

ああ。相手の感情に押し切られて、
相手がここまで怒っているのは、自分が悪いことをしたからだ
と考えてしまう人もいる。
だが、よく考えればこれは全くもっておかしい論理なんだ

そうですよ!
自分が相手を怒らせた理由があれば納得できますけど、勝手に怒ってるだけなら知らんがなって思います

そうだね、相手が怒る=自分が悪い、ではないよね。
このように自責してしまうのは認知の歪みの「個人化と呼ばれている。
自分に関係ないことでも自分のせいだと思ってしまうバイアスだな

こんな考えばかりしてたら辛くなりませんかね…?

めちゃくちゃつらい。
だからこの考えは認知行動療法で取り扱われているんだ。
このような思考ばかりだと健全とは言えないし、「だから自分はダメなんだ…」という態度ばかりだと周りがモヤモヤすることもあるだろうな

悪くなくても謝る人にモヤモヤすることがある原因はこれなんですね!

謝れる人はナルシストではなさそう

だが、謝れるのは悪いことばかりではない。
たとえば、2011年Howellらの研究では、謝罪傾向とナルシシズムや自己中心的な性質とは負の相関にあったと報告されている2)

ナルシストって謝れなさそうですもんね!
謝れる人は自分勝手ではない人の可能性が高いんですね

そうなんだ。
だから、自分に非があるかもと考えられる点ではフェアで優しい人という見方もできる。
そう考えると絶対に謝らない(謝れない)人より好感を持たれることも少なくないだろうな

なるほどね。
ちなみに、この自分を責めて謝ってしまうタイプの人へのアドバイスや対処法はありますか?

そのまま認知行動療法の考えを取り入れるといいだろう。
自分だけでやるなら、デビッド・D・バーンズ博士のいやな気分よ、さようならはおすすめだな。

さらに、この考えを取り入れて相手との会話の中で気づかせるのも一つだ。
たしかに自分を責めたりすぐ謝りたくなる気持ちはわかるが、合理的に考えてその原因はあなたではない
ということに気づかせるんだ。時間はかかるがな

ナルシストって謝れなさそうですもんね!
謝れる人は自分勝手ではない人の可能性が高いんですね

そうだ。というより、人間はうまく謝れないのがデフォルトだ。
だからこそ謝れるというのは素晴らしい特性の一つでもある。
もし謝れないのを直したい、上手な謝り方を知りたい人謝れないのを直すには脳の特性を理解するの過去記事も参照してみてほしい

まとめ
自分を責めちゃう人には合理的な思考で気づかせてあげよう!

立場が弱いので謝らざるをえないタイプ

次に経済的な交渉ゲームの観点から考えると、立場が弱いから謝っている人もいる。

たとえば、もしあなたが働かなくても毎月100万円ずつくれる会社に勤めることができたとする。
そして、その社長に会う機会があったら、どういう行動を取るだろう?

めっちゃ機嫌取ります。
靴を舐めに行きますね!

いいぞ、その姿勢は嫌いじゃない
この時なぜ機嫌を取るかというと、相手の方が立場が強いからだよね。
お互いの関係が終わると相手は困らないが、こちらは非常に困る。
だから、弱い方は相手が望む行動を取って関係を続けてもらおうとする

そっか、だから力のある人の機嫌を取ろうとするんですね!

そうだ。じゃあ今度は状況をもう少し現実的なものに変えてみよう。

ある男女のカップルがいたとする。
絶対に別れたくないと思っている男性と、別れても他の人と恋愛すればいいと思っている女性だ。
2人がデートしても女性が「これは食べたくない」「気が変わったからそこには行きたくない」というたくさんの要望に、男性は謝ってばかりだとする。
この場合関係は対等に見えるだろうか?

う〜ん…、まず女性は言動もまだ若い感じがするかな。一方男性に包容力はありそうだよね。
でも、対等には見えにくいかな

そうだね。
男性には関係を続けたいという強い希望があるけれど、女性には付き合い続ける以外に別れるという選択肢もある。
男性は女性の方が立場が強くて関係が切れたら困ると思ったから譲歩しているとも言える

う~ん、惚れた弱みってやつですね。
なかなかツラそうです

だから、あなたにだけやたら謝ったりするのなら、
あなたの事を好きなのかもしれないという可能性もあるだろうな。
相手の謝る意図は何なのか?文脈をよ~く観察して考えてみてくれ

まとめ
立場が弱いと感じると相手の意見を飲んでしまいやすい

相手の方が立場が弱いと思ったら傲慢な態度に出る人もいる

注意点として、このタイプは自分の方が立場が強いと思ったら一転、強気に出ることがある。
店員さんに対する態度がデカかったりするのはこのタイプの亜種だな

オレは客だよ?みたいなヤツですね

そうだ。
お互いの立場を含めて交渉するのは王道正論なのだが、プライベートで立場が弱い人に対してデカい態度を取る人はあまり歓迎されないだろう。
相手に対するリスペクトがなく、立場の違いはあっても誰しも人間としては対等だという当たり前の感覚がないんだから当然だ

めっちゃヤバいやつじゃないですか!

ただ、全員がそうだというわけではない。だから文脈を含めて考えるんだ。
自分より立場の弱い人への接し方はちゃんと見ておいた方がいいぞ

まとめ
自分だけではなく、立場の弱い人にどう接するかは見ておこう!

興奮した相手をなだめるために謝っているタイプ

他にも、相手をなだめようとして謝るタイプもいる。
相手と状況を落ち着かせるためにとりあえず自分が泥をかぶろうとしているタイプだな

そう聞くと同じ謝ることでも、さっきまでとは印象が全然違いますね!

だから文脈というのは大事なんだ。
そしてこのタイプの取る戦略はなかなか効果的なんだ

2022年Kraigらの研究では謝罪の態度について以下のように述べられています。

  1. 謝罪時にカメラに語りかけると、受け取り手の生理的興奮が落ち着いた。やはりアイコンタクトは信頼感と繋がりを感じてもらうために重要っぽい
  2. 落ち着いた思いやりのある態度が怒りを静める可能性を高める3)

自分が謝るのはお門違いなんだけど、相手を落ち着かせるために相手の本能に訴えているんですね!

なだめている男性はこの心理学の知識を知っているわけではないだろう。
だが経験則で「こういう時はとりあえずオレが目を合わせて謝っておくと落ち着くっぽいぞ?」と学んだんだろうな

人前で堂々と話せる練習方法の記事でも、話す時は姿勢やアイコンタクトが重要ていう論文がありましたもんね。
ちなみに、なだめたあとはどうするんですか?

たいてい望ましい解決策や現実的なところに落としてくる。
このタイプの人はすごく合理的なんだ。
謝るというツールをうまくつかいこなしていると言えるだろうな

私の周りにも、このタイプの人で思い当たる人が何人かいます。
でも彼らが謝っても全然モヤモヤしません

だろうな。
謝る事に明確な目的があって、しかもみんなのためにもなる
きっと頼り甲斐がある人だと思うんじゃないかな。
できればこういう男性と付き合いたいものだ

まとめ
目を見つめて、落ち着いて謝る人は頼りがいがある

謝る方がトクだと思っているタイプ

最後はちょっとズルいタイプになる。
謝ることが自分の利益になると思っているタイプだな

自分のせいではないのに…謝ることがトクになる?
どういうことですか?

必要ないのに謝る人は共感的だと思われて、信頼と好感度を高めるんだ。

2014年Brooksらの論文では、過剰な謝罪(自分に責任がないことを謝る)をすると、共感を示すことになり信頼と好感度を高めると述べられています。4)

松下幸之助さんの「雨が降っても自分のせい」みたいな話ですね?

その通り!この論文のタイトルもずばり、「I’m sorry about the rain!(雨が降ってごめんなさい!)」なんだ。
当たり前だが雨を降らせたのは自分ではない。
だから自分を責めることは「個人化」で、問題分析としては不正解だよね。
ところがどっこい、人から信頼と好意を勝ち取る心理学の観点だと大正解なんだ

じゃあ、自分のせいではないのに謝る人は…

自分が他者からの信頼や好意を勝ち取ろうという計算があって謝っているのかもしれない。
以前人間の直感は信頼できる人を3つの要素で判断しているという記事を書いたが、自分のせいではないのに謝ると誠実で優しそうに見える分、やはり信頼されるだろう。
もちろん、シンプルに誠実である可能性もあるがな

なんてしたたかなんだ!

だから自分が悪くなくても積極的に頭を下げる人がいる。
だがこれも文脈次第だ、もし強い出世欲があったりナルシスト傾向がある相手なら気を付けた方がいいかもな。
それから、このタイプは謝る一辺倒ではなく、その後に自分のアピールや主張もグイッとしてくることが多いのが他のタイプとの違いだな

このタイプも…ちょっとモヤっとします

この手の男性は実にしたたかで、感情的な相手もうまく逆用してくる。
だから、やはり怒りを感じても感情的になりすぎるのはよろしくない
相手が謝ってくれるからと一方的に熱くなることは、自分のためにも良くないということは覚えておいてくれ

まとめ
相手がすぐ謝ってくれるからと感情的になると、逆用されることがあるぞ!

引用・参考文献

1)よくわかるACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー): 明日からつかえるACT入門. 日本, 星和書店, 2012.
2)Howell, Andrew J., et al. “The disposition to apologize.” Personality and Individual Differences 51.4 (2011): 509-514.
3)Kraig, Adriana F., et al. “The neurophysiology of corporate apologies: why do people believe insincere apologies?.” International Journal of Business Communication 59.4 (2022): 531-550.
4)Brooks, Alison Wood, Hengchen Dai, and Maurice E. Schweitzer. “I’m sorry about the rain! Superfluous apologies demonstrate empathic concern and increase trust.” Social Psychological and Personality Science 5.4 (2014): 467-474.

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