この記事まとめ
・2022年の論文によるとネットで気をつけるべきは「どうでもいい情報、嘘情報、ネットトロール」の3つと言われている。ネット上の偉そうなコメントはダニングクルーガー効果もあり、信ぴょう性が低いためブロックが効果的。また、意見や情報には「出典、引用」があるかどうかだけでも見るとふるいにかけられる。
私が学生の頃と比べても、上から目線のネットコメントや質の悪い情報を目にすることが特に増えてきました。
スマホが普及し便利になった代償ともいえるのですが、彼らはどうしてそのような何の得にもならないコメントをしてしまうのでしょうか?また、そのような不要な情報をフィルターにかけるテクニックはなかろうか?
今回はそんなネットトロールに対する考察や質の悪い情報への対処法を心理学のエビデンスを元に解説をしていきます!
ネットはあなたの時間の奪い合い
まるで情報の洪水
令和の情報社会では情報が氾濫しています。なぜかというと、ネット上ではいかにあなたの人生においてどうでもいい情報で時間を奪えるかを競って、多くの人々がひしめき合っているからです。
たとえば上から目線の偉そうなコメントはその典型例です。本来ならば顔も知らない相手が上から目線でマウントを取るコメントなどあなたの人生に一ミリも必要ない情報のはずです。しかし耳を貸して反応をしてもらえれば彼らは現実では得られない自己重要感を満たすことができます。
さらに有名人のゴシップなどもそうです。ホントかどうかもわからない有名人のうわさについてあなたが知る事によって、人生においてプラスをもたらした事があるでしょうか?しかし相手はあなたが時間を費やしてくれることで記事が売れたり、広告収入をゲットすることができます。
このように今は必要ない情報が多すぎるため、情報の目利きが必要な時代です。一見無料に見えても今のインターネットはユーザーの時間を奪う事でメリットを得ようとしています。そう、確実にあなたの時間は奪われているのです。
というわけであなたの時間を守るために余計な上から目線のコメントや質の悪い情報に対処するスキルを一緒に身につけていきましょう。
3大害悪「どうでもいい情報・嘘情報・ネットトロール(荒らし)」についての研究
この件について2022年にKozyrevaらが「デジタルで生きる人の必須能力としての批判的に無視する能力」1)といったタイトルの論文を書いてくれています。この論文においてネット上で気をつけなければならないモノは3点あると述べられており、対策方法は以下の通りです。これを踏まえて対策方法を考察していきます。
- どうでもいい情報:対策はセルフナッジ=環境をいじる、スクリーンタイム設定、SNSアプリを消す、グレースケールにする、気晴らしで情報を調べない
- ミスリードや嘘の情報:情報の精査=「横読み」をする(ソースを調べる、他の情報源も見る)
- ろくでもない連中(荒らし、トロール):声がでかいが実はごく少数なので無視する=有害なニュースから離れる、ブロックする
コメントやどうでもいい情報が気になるのはスマホいじりすぎ
まず「1、どうでもいい情報」についてですが、簡単に言えばみんな必要もないのにどうでもいい情報に触れすぎだと言っているわけですね。
必要ない時にはスマホを触らなければ、ネット上での時間を大切に使うようになります。すると自ずとどうでもいい情報やコメントに触れる機会も減ります。ジャンクフードをむさぼるようにどうでもいいタイムラインとかを追い続ける事もなくなるわけです。
セルフナッジとはこのように必要ない時にはスマホを触らない、といった好ましい行動を行えるよう環境をいじってナッジ(ちょい押しする)するというものです。環境の力を使えば意思力をそこまで使わなくていいですからね。いらん情報に触れる時間を物理的に減らせ!というわけです。
具体的には、この論文ではセルフナッジを用いた解決策としてSNSアプリを消せと言っています。
Q.あなた「SNSでどうでもいいタイムラインや腹の立つコメントを見ちゃうんですけどどうしたらいいですか?」
A.Kozyrevaさん「消せ」
という非常にマッチョな解決方法を提案してくれたわけですが、他にもグレースケールにする事で興味を失わせるという方法も紹介されています。「いらないものは消す」、解決法がパワー系ですよね。
その中でも、スクリーンタイムは個人的に良さそうだなと思っています。スクリーンタイムを導入することで、使用時間が制限される=調べる内容や使用方法に優先順位をつけるのでどうでもいい情報は目に入らなくなるというメリットも考えられます。
さらに、物理的に制限を設けるタイムロッキングコンテナも有効でしょう。タイムロッキングコンテナのメリットや効果、デジタルデトックスについての心理学的な考察については【どう使う?】タイムロッキングコンテナの効果について考察してみたの記事も参照してください。
分かりやすく言えば、自分がピンチで調べ物をしなければならないという時に上から目線のコメントに反応している暇はありませんよね?「こいつ偉そうだ、何か言い返してやる」と思ったところであなたのピンチは何一つ解決しません。むしろこんなことしてる場合じゃねえとなるはずです。本当に問題あるコメントなら専門家に相談の上開示請求というムーブをすればいいだけで、直接レスバを挑むメリットはどこにもありません。
タイムロッキングコンテナなどで意図的に制限を設けることで、このような「限られた時間でそんな事してる場合じゃねえ」ような状況を人為的に作り出し、自分の中の優先順位をはっきりさせることもできるでしょう。
偉そうなコメントやあやしい情報には横読みで対処
「2、ミスリードや嘘の情報」を精査するためには「横読み(ラテラルリーディング)」が推奨されています。これはその情報がその人の「お気持ち」にすぎないのか、それとも何か根拠があって言っているのかという事を調べなさい、ということです。
これは現実世界でもそうで、意見を述べる教育を受けていないと自分の考えと事実が混ざりやすく、無意識に自分の意見にすぎないのに絶対的事実であるかのようにしゃべる事があるのでこれは危険です。少なくとも読み手は事実と意見を分けて考える習慣をつけた方がいいでしょう。二択で迷ったときは直感的に飛びつくな!機械的に決めた方がマシ! という記事では主観と客観をうまく混ぜて判断する方法について解説しましたが、そもそも主観と客観を分けて考えられていない人が多いのが現実なのです。
加えて、世の中に絶対的に正しい!というものはきわめて少ないですから、他の人はどう言っているのか、反対意見はないのかといったように横断的に情報を眺め、多様性によるメリットを求めることも重要でしょう。同じ事実を元に話をしても、そこから導き出される意見や選択肢が違う事はよくあります。これが意見の多様性です。
上から目線のコメントはたいてい自信過剰ですから、多くの場合客観的な根拠はなく「お気持ち」にすぎません。そのような相手に対して具体的な説明を求めるよりも、「他の意見はないか」「客観的な事実はどうか」を自分で確かめてみる方が得策でしょう。
そもそもネット上の偉そうなコメントは信ぴょう性が低い
最後に「3、ろくでもない連中」で取りあげたネットトロール・荒らしや上から目線のコメントは基本無視して大丈夫です。
彼らの具体的な行動パターンとして、発言やできごとの一部を切り取って批判をしたり、自分の意見の一部の正当性だけを声高に主張するなどが挙げられます。当事者ではない人がきれいごとで批判するというのは現実社会でもよくありますね。
しかし、世の中に完全に正しい意見などありません。他のメリットや、何らかの制約や問題があってそのきれいごとではない意見を述べている事がほとんどです。当事者ではなく知識が乏しい人にはそれがわからなかったり、そもそも複数の原因があるという事を考える事ができなかったりします。
この無知な人ほど自信過剰という人間の傾向をダニングクルーガー効果と言います。このダニングクルーガー効果について過去の研究を調べた2016年Mahmoodらのシステマティックレビューによると、情報リテラシーが低い人ほど自分を過大評価する傾向にあった2)という結果が出ています。
つまりネットで見る上から目線でのコメントは、よくわかってない人がノリだけで発言するというダニングクルーガー効果全開フルスロットルの可能性が高いのです。特に自然科学や社会問題など複雑な問題に関しては要因が多すぎて理解が深い専門家であるほど断言できない事の方が多いですからね。
ですから「お前は絶対間違っている!」式の上から目線のコメントは「フルスロットルだなぁ‥」と冷静に受け止め、本当に正しいのか疑ってかかるくらいがちょうどよいでしょう。
偉そうなコメントをするとかまってもらえるが、負のループにハマる
ところで、なぜ彼らはネット上で上から目線でフルスロットルかましているのでしょうか?わざわざそんな事をしても一見何の得もなさそうなものです。
しかし、見方を変えれば彼らにもメリットはあるのです。それは極端な意見を述べるとかまってもらえる上に、批判や指摘をすることによって自分がすごい人間なった気分になれるのです。
つまりダニングクルーガー効果で元々自信過剰な上に、相手の欠点を指摘する事によって自分がすごい存在(になったかのような気分)になるので、より偉そうなコメントになってしまいます。結果として自信過剰に対する負のループが形成され、コメントをするたびにどんどん嫌なヤツになってしまうのです。
この現象に対してあえてポジティブな見方をするならば、嫌なヤツが完全体になることで問題発言を繰り返しているだけで、ネットトロールはごく一部にすぎません。ネット上の出席率が高いから偉そうなコメントをしている人が多く見えるだけで、実はネットトロールの数自体は少ないのです。人間捨てたもんじゃないですね。
ネットトロールはメリットがないのでブロック推奨
ここで重要なのは、そのようなネットトロールに構ったところで私たちにメリットはありません。人間がどうしてもかまって欲しい場合、普通はお店でお金を支払うことによって気分良く話を聞いてもらう事が可能になるのですが、不思議な事にインターネット上では誰かに噛み付くと無料で構ってもらう事が可能になるのです。相手からすれば素晴らしいライフハックですね。
しかも、私たちはやろうと思えばどんな意見にもかみつく事ができます。たとえば累進課税について推進派は「もっと高収入の人から徴収するようにしろ!あなたは弱者がどうなってもいいと言うのか!」と言う事も出来ますし、反対派は「努力をした人が報われない!これは努力に対する罰ではないか、どうして努力をした人の方が罰を受けなければならないんだ!」と言う事もできます。
この例は見ての通りどちらも極端な意見なのですが、実際のネット上の偉そうなコメントはもっと極端で論理的ではない事が多いです。このが重要なのですが、論理的ではない意見に論理的に返しても無駄です。よって、シンプルにブロックかブラウザクローズが正解です。これはリアルでも一緒ですね。相手のライフハックに付き合う必要はありません。ブロック最強です。
情報精査の最初の一歩目は「出典があるかだけでも見る」
出典があるかどうか調べるだけでもマシになるよ!
とはいっても、SNSアプリを消して断つのもイヤだし全ての人をあらかじめブロックするわけにもいきません。ですから対処法として私から一つだけ提案があります。
まずはあなたにとって重要な局面だけで構いません。その意見や情報には出典があるのか?という点からだけでも確認するところから始めてみてください。
具体的には、その意見に「出典、引用」があるかどうかを確認しましょう。話し言葉で表現するなら、「それってどこで知ったんですか?」ということです。本でも引用や参考文献(reference)がたいてい最後の方に記載されています。本当はこの引用がどれだけ正しいのか、どのレベルにあるのか吟味する事が重要なのですが、とりあえず引用があるか無いか確認する事が最初のステップです。無い場合、その人の発言や意見は「その人のお気持ち」です。あくまで一意見として頭の片隅に置く程度が良いでしょう。
もしその情報がただの体験談やお気持ちであれば信頼性は低いですし、日常生活で先輩の武勇伝や自慢話を真に受ける事もあまりいい結果を招くとは思えませんよね。二択で迷ったときは直感的に飛びつくな!機械的に決めた方がマシ!と良いという記事を以前書きましたが、全部お気持ち(直感)だけで物事を判断するのはよろしくない。かといって信ぴょう性を確認するのが重要だからといって、何から何まで疑って毎回「それ、なんかソースあるんすか?」ではウザがられるし、身動きが取れなくなります。友達無くすと思いますし。
ですから、最初は「そもそもこの人の意見には出典という概念があるのか?」という点から始める事をおすすめしているわけです。繰り返しになりますが出典があったとしてもそれにどれだけ信頼性があるかは別問題です。ですが完璧ではなくとも、感情論やただの意見をフィルターにかけることには役立ちます。非常に雑な方法ではありますが、何事も段階を踏んでいくものです。最初の一歩としては悪くなく、少しずつ対処をするのがうまくなっていくはずです。
引用・参考文献
1)Kozyreva, Anastasia, et al. “Critical ignoring as a core competence for digital citizens.” Current Directions in Psychological Science 32.1 (2023): 81-88.
2)Mahmood, Khalid. “Do people overestimate their information literacy skills? A systematic review of empirical evidence on the Dunning-Kruger effect.” Communications in Information Literacy10.2 (2016)