【願掛け術】科学的根拠から学ぶおまじないのトリセツ

願う女性 心理学

「落ち着くため」なら科学的におまじないは効果がありそうね!

おまじないをする事にも良い事悪い事がある

おまじないのトリセツね!

 おまじないってありますよね。そう、ハートを塗り潰したり、人と3回書いて飲み込んでみたり、満月に向かって財布を振ってみたりするアレです。

 しかし実のところこのおまじないに望み通りの結果を引き寄せる効果はあるんでしょうか?いや、科学者の立場からお答えすれば「多分無い」で終わりなのですがもっと実用的な意味です。どうして人間は効果がなさそうなおまじないや願掛けに頼るのでしょうか?古来より続けられている以上、人間に何かしらの影響を与えているはずです。

 そしておまじないなどの願掛け行動によるメリットデメリットも両方知ることができれば、より上手におまじないを使える方法がわかるはずです。今回は、そんな願掛け行動の理由と科学的なおまじない活用法について論文から考察し、私は実際どう使っているのかも紹介します。

おまじないの科学

やるべきことから逃げる使い方はダメ!

 2002年Keinanらの論文では、「コントロール欲求が強い人はストレス下で迷信深い儀式が増える!」という事がいわれています。1)詳細は以下の通り。

  • コントロールしたい!という欲求が強い人は高ストレス下でknock on wood(海外のおまじない)の回数が増えた
  • コントロール欲求の低いグループは高ストレス下でもknock on woodが少なかった
  • 参加者はおまじないは迷信で意味がなく、不合理だと気づいているのにこういったい儀式を行っていた。理由はコントロール感を取り戻すためにこのような儀式や迷信をするからかも?
  • 自己成就予言として、おまじないがきっかけで楽観的になってストレスが減れば能力上がるってことも考えられるかも

おまじないはコントロール感を与えてくれるだけ

 おなじないや儀式のような事は、「自分はこの行動によってどうしようもない事をコントロールできるのだ!」「自分はこのよくわからない脅威を理解できているのだ!」という自分で何とかできる感がほしいために行なっているということですね。さらにプラスの面としては、コントロール感によって精神的に安定するのでパフォーマンスが上がるかもしれないと。

 これは納得感のある説で、例えば人類の歴史で考えると「雨乞い」などがそれにあたります。雨が降らないというのは干ばつにより作物が取れず飢えますし、飲み水も確保できません。生存がかかっていますから非常にストレスが強く大きな問題です。もしこの雨が降らない理由を解明し、自在に雨を降らせることができるのだとしたらストレスから逃れる事ができます。何とかして雨を降らせたい。

 この天候というどうにもならないことにコントロール感を求めた結果、人類は雨乞いという事をやり始めました。理屈としては雨を降らせる儀式が成功すれば雨が降る。雨が降らないのは儀式のやり方が悪いから。このストーリーは理解しやすく単純明快です。おかげでやることも明白になりましたよね。

 この雨乞いの結果は私たちの知っての通りです。結局雨が降るまで雨乞いをしていたに過ぎず、気候は極めて複雑で予測も難しく、今のところコントロールできないという厳然たる事実だけが残りました。
 これはまさにどんな事でもコントロールをしたいという人類の欲求の現れです。雨乞いをして雨が降れば一安心です。「よかった、解決方法が見つかった。次同じことが起きても安心だ」そう思いたいのです。

 このように、どうしようもない事をコントロールしようとする意味でのおまじないは労力などが無駄になるだけでしょう。これはおまじないのデメリットになり得ます。つまり勉強する時間をおまじないに費やした場合、テストの点は逆に下がるというわけです。ちゃんと勉強はしましょう。

おまじないは本番直前の仕上げに使え!

最後の一押しにおまじないよ!

 何でも自分の思い通りにできると考えて行動してしまうことは非常に筋の悪い解決策を選びやすいという事がわかりました。当たり前の事ですが、世の中どうにもならない事はどうにもなりません

 たとえば明日は出かける予定があったとしても、雨が降る時は降ります。そして都合悪く雨が降るのはあなたの普段の行いが悪いからではありません。気圧などの関係でたまたま明日降るのです。同様に、あなたが面接に落ちたのは、たまたまその面接官の好みと合わなかったからかもしれないわけで、別にお賽銭をケチったからではありません。

 コントロール欲求が強いと「絶対にこの面接は受からないといけない!」とか「明日はデートだから絶対雨が降ってはいけない!」と思ってしまう傾向にあります。この「絶対に」とつくと、全てをコントロールしなければなりません。それは人間には不可能なので、理屈で解決は不可能です。じゃあ常識や理屈なんておよびじゃありませんよね、おまじないなどの儀式に走るしかありません

 残念ながらあなたがどんな対策をしようと、雨が降るときは降ります。おまじないをしても面接官の好みは変わりません。だからあなたがやるべきはコントロールの余地がある面接官の第一印象を良くする事です。ですが、コントロール欲求が強いと、最初からスジの悪いポイントで努力をしてしまう

コントロールできる事に集中するためにおまじないを使う

 ですから、もしおまじないなどをしたいと思ったら「今コントロール欲求が強すぎないか?」と立ち止まる事をおすすめします。そして、「今自分にできる事とできない事」を分けて考え、できない事は捨ててください。残念ながらあなたに天候を左右する力はないと受け入れましょう。

 というより、もしそんな力があるなら間違いなくそれだけで食っていけます。逆説的ですが、コントロールできない事を諦めることで現実的な対策ができるので、結果的に成功確率が上がるのです。コントロールを諦める事とは、コントロールできる事に集中する事です。たとえば、面接で第一印象を良くするポイントは対策できますし、面接の手ごたえのサインがわかれば本番でネガティブな想像をして引きずられる事も少なくなりるでしょう。

 例を挙げれば、私がよくやるのは面接や商談など重要なイベントの直前に髪を切ってもらうという願掛けです。良く行く美容室のお兄ちゃんは「オレのカットは幸運のカットだから」と笑って言ってくれるのですが、どう考えてもこのお兄ちゃんのカットはただのカットでしょう。

 しかし、清潔感・印象を良くするという意味では美容室に行く事自体はマイナスにはなりません。そして、馴染みのお兄ちゃんから励ましとその「幸運のカット」とやらで不安が減り、しっかり準備した事を本番で喋り切る事ができるというわけです。まず万全の準備をする、そして直前に不安を取り除く。これが私の必勝パターンであり、このお兄ちゃんは宣言通り幸運を運んできてくれるのです。

 あなたがコントロールできるのは自分の不安だけです。そして不安を減らす事ならば、おまじないで可能かもという研究結果でした。不安だから努力をし、最後自信を持って取り組むためにおまじないを利用しましょう。これが科学的なおまじないの活用方法です。勇気が出ないなら占いを利用しろ!という話と近いものがありますね。自分の力を100%発揮する為に使いましょう。

気持ちをほどよく落ち着かせるために使うのがいいね

引用・参考文献
1)Keinan, Giora. “The effects of stress and desire for control on superstitious behavior.” Personality and social psychology bulletin 28.1 (2002): 102-108.

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