【エビデンス有】ポモドーロテクニックを使った勉強法のデメリットと対策

懐中時計 心理学

 勉強の効率よくやりたい!タイパを良くしたい!そう思うことはありませんか?

 それにはポモドーロテクニックがおすすめです。しかしこのテクニックは扱いが難しく、デメリットもあるのです。

 今回はポモドーロテクニックの科学的根拠とデメリット、そしてメリットだけ手に入れるための対処法を徹底解説します。

ポモドーロテクニックのメカニズム

 ポモドーロテクニックとは、25分作業→休憩5分というサイクルを繰り返してタスクを行う方法のことです。強制的に休憩を挟むことで集中力が維持できるし、生産性向上、明晰な思考が保てるのでは?というものですね。

 まずはポモドーロテクニックがなぜ有効かという理由を学び、そのデメリットも理解していきましょう。

勉強効率を高めるには2つある脳のモード、両方が重要

 このポモドーロテクニックが効果的な理由として、A Utamiら(2022)によると

  • 脳には集中モード拡散モードの二つがある
  • ポモドーロテクニックでは、25分の集中モード5分の休憩や気晴らしによる拡散モードを切り替えられる
  • 集中モードでは理解が促され、拡散モードでは新しいアイデア・アプローチ、新しい神経接合を作ること等が促される1)

 といった事が言われているわけですね。

 どうやら5分の休憩を挟むというところが効率向上のミソでして、脳の拡散モードはただの休憩や気晴らしではなく、アイデアを出したり繋がりを生み出すのに役立っているようなのです。ですから休憩も勉強の一部で、モードを切り替えて脳のポテンシャルを発揮するために必要だということですね。

 確かに勉強しようとするとただ理解やインプットに注目しがちで休憩時間を管理しようなんてあまり思わず、軽視しがちです。ですが、勉強効率向上にはこの休憩に着目したサイクルを繰り返す事が有効なのです。

ポモドーロテクニックにスマホは使うな!

 さらに、Utamiらは携帯電話は排除せよ!といった事も述べています。1)これは私も同意見で、一言でいえばスマホは集中モードの邪魔になってしまうからですね。

 スマホは機能が豊富ですから当然ポモドーロテクニック用のタイマーのアプリもあります。ですが、スマホというのは魅力的な動画や情報、ゲームを提供してくれるガジェットでもあります。普段みなさんはそのような娯楽目的でもスマホを触っていますよね。

 では、もしポモドーロテクニックに使うタイマーがスマホだったらどうでしょう?

 「いまどれくらい時間が経ったかな」と進捗を確認したり、「あと5分ならもうひと頑張りだ!」と一区切りまで集中力を保つために何度かタイマーをみることになります。

 その度にいつものクセで「そういえばLINEの通知とか着てないかな」「そうだ、今日はまだログインボーナスを受け取っていなかったな」「好きなyoutuberは新しい動画をアップしていないかな」とか余計な考えがチラチラ出てきてしまいます

 「集中モード」の時間にこの余計な考えが浮かぶだけで脳の集中モードは切れて注意力は引き剥がされ、集中モードなのに拡散モードに移行してしまうのです。そもそもポモドーロテクニック自体が余計なもの(思考・情報)を削ぎ落としてシングルタスク化し、拡散モードとの緩急をつけるテクニックです。削ぎ落とさなければならないのに何でもできるスマホという存在は非常に相性が悪いです。

ですからポモドーロテクニック中はスマホの通知オフはもちろん、タイマーとしてもスマホは使わない事を推奨します。その対処法としてdretec(ドリテック) スタディエッグ インターバルタイマーのように、ちゃんとポモドーロテクニック用のタイマーも売っていますから、できればタイマーは別に用意して下さい。

 タイマーは25分→5分のサイクルをオートメーション化できさえすればいいです。Apple Watchをポモドーロタイマーに使用するのであればギリギリ許容できるかな‥くらいです。この時、もちろん他の通知はオフにしてください。

 もしアップルウォッチを導入するなら、フィットネストラッカーとしての性能なども過去の記事にしていますので、ポモドーロタイマー用としても導入しようと考えている方は参考にしてみてください。

休憩時間ならスマホを使っても構わないが上級者向き

 次に休憩時間の気晴らしに何をするかという点ですが、研究では以下のようなものが使われていました。2)

  • 水分を摂取する
  • トイレに行く
  • 外出する
  • 体操をする
  • SNSチェック・メール返信

 どれも気晴らしになるという点では良いのですが、SNSチェックやメール返信などは使いどころが難しいのが正直なところです。例えば、たまたまメールチェックをしたところに「この案件、どうしたらいいですか?」というメールを見てしまったら、急ぎでなくともすぐに返信したくなってしまうでしょう。一時的に保留にしたとしても「既読したの忘れないようにしないとな‥」と集中モードの間モヤモヤする事は容易に想像できます。

 サッと切り替えられる、すぐに返信が終えられるという方ならばいいのですが、決められた時間をタスクや勉強に充てており、効率を高めたいのだ!と考えているのであれば最初は気晴らしにもスマホは使わない方が良いでしょう。ポモドーロのサイクルに慣れてからでも遅くはありません。

自分の判断で休憩時間を決めるという方法ではメリットが少ない

 集中と休息のサイクルが重要だという事は分かっていただけたと思います。ですがこう考える方もいるかもしれません。

 「ただ休んで休息モードに入れるのが大事だったら、自分で区切りをつけて休めばいいんじゃないか?別にポモドーロタイマーなんてなくても良いのでは?」

 こういった疑問は出て然るべきです。それに対し、2023年Biwerらの研究ではポモドーロテクニックと自分で休憩時間を決めたグループとで疲労感や集中力、モチベーションなどを比較しています。結果は以下の通り。

  • 作業のキツさはどっちも変わらなかった
  • ポモドーロテクニックの方が集中できており、タスクが簡単だと感じ、効率的で少ない時間でタスクを行える
  • いつ休むのか決めるのにも認知リソース(脳のメモリのようなもの)が必要になる2)

 どうも人間は作業を継続したがるし、その後長く休みたがるようです。そして残念ながら自分で決める休憩サイクルはあまり効率的ではないようです。

 自分で休む時間を決めるとなると、この不効率的な勉強・休憩サイクルになる事に加え「いつ休憩しようかな‥」と決めるためにも脳のリソースを使う事になります。つまり、勉強中ずっと余計なことを考えながら取り組まなきゃいけないわけで、そりゃ集中できないよね!って話ですね。

 その点、ポモドーロテクニックを使えば勉強と休息をオートメーション化できますから作業に全集中できるということですね。集中モードの時は、考えることを極力減らして一点集中で取り組みましょう。集中力を高めるには環境づくりが大事ってことです。

ポモドーロテクニックのデメリット

 ポモドーロテクニックの原理を理解したところで、出てきたデメリットや想定される事をまとめて確認してみましょう。

 大前提として、ポモドーロテクニックは魔法ではありません。あくまで技術ですから、この点を理解しておかないと、挫折するか、効率が高まらないというワナにはまってしまいます

作業や勉強に感じるキツさは変わらない

 先ほどのBiwerらの研究で特筆すべきポイントは、ポモドーロテクニックを使っても作業のキツさは変わらなかったという点です。ポモドーロは楽に勉強ができるテクニックではなく、潜在能力を発揮して全力で走れるようになるためのテクニックという認識の方が正しいでしょう。

 その代わり、ポテンシャルが存分に発揮されるためタスクは簡単と感じる事が多く、実際少ない時間で同じタスクを完了できるようです。これは足が速かろうが遅かろうが、その人なりの全力で1キロ走れば同じくらい疲れるのと一緒です。ただ、足の速い人の方が早く走り終わるというだけにすぎません。

 もしポモドーロテクニックのことを「勉強や作業を楽にできる方法」として捉えているのなら残念ですがそのような効果はあまりないです。あなたの持てる力を勉強やタスクに全ツッパできるようになるテクニックです。変な期待をすると挫折しやすくなります。

切り替えがうまくいかない休息方法もある

 先ほども挙げましたが、SNSなどを休憩時間に利用すると集中モードに戻りにくい場合があります。ちょっとスマホを触っていたら気がついたら30分経っていた、なんて経験は誰しもあるのではないでしょうか。

 しかもスマホに没頭しているわけですから、どちらかといえば集中モードに近いかもしれません。大事なのは集中モードと拡散モードを切り替えて両方使うこと。ですからスマホというのはあまりおすすめできず、少なくともサイクルに慣れるまではポモドーロテクニック中はデジタルデトックスのようにスマホを使わない方がうまくいくでしょう。

慣れるまで心理的に抵抗感がかなり大きい

 25分で作業を強制的に中断して休息に入るというのは、はっきり言って慣れるまで落ち着かないと思います。「この勉強の区切りの良いところまで‥」「ノっているし、もう少し頑張れそうだ」そう思うのが人間です。

 ですが、先ほどの2023年Biwerの研究を思い出して下さい。自分で休憩タイミングを作ろうとした人はどうしていましたか?そう、タスクの持続時間が長くなり、その後の休憩時間も長くなったんでしたね。その結果どうなったか?集中力が低下し、疲労感も強くなったんでしたね。

 つまり、「まだいけそうだからもうちょっと頑張ってみよう」といった自己判断の休息はうまくいっていないのです。ですからポモドーロテクニックとはタイマーで強制的に一区切りをつけて集中力を保とう!というテクニックなのです。抵抗感があってもサイクルを守って取り組んでみて下さい。こう考えると、決して魔法のようなテクニックではないというのがわかるでしょう。

デメリットを打ち消してメリットだけを取るための方法

 以上のようにポモドーロテクニックにもデメリットがあります。しかしそれは対処が可能ですので、メリットだけを享受するために対策していきましょう。

スマホは使わない

 はい、まずはシンプルですがこれに尽きます。

 休憩時間にスマホで息抜きをするのは難易度が高めなので、まず休憩時間の気晴らしにコーヒーを飲む・漫画を読む・体を動かすなどのデジタルではない手法を取り入れる事をおすすめします。中でも一番おすすめなの運動で、休憩時間にできる認知能力への効果量が大きい運動・逆に低下してしまう運動については【脳をハックする】社会人で資格勉強がしんどい時の対処法の記事を参照してください。

 さらに、スマホがおすすめできないのは休憩時間だけではありません。先ほども述べましたが、スマホのポモドーロタイマーも考えものです。集中モードでスマホを用いること自体が難易度が高く瞑想などで注意力のコントロールが十分できる人なら良いかもしれませんがとりわけ初心者は非推奨です。

 ですから安いものでも構いませんので、できればポモドーロ用のタイマーを用意して使用する方が良いでしょう。前述したドリテックのものや、キングジム 残り時間が一目でわかるタイマー「ビジュアルバータイマー」集中モードの邪魔をしないようなデザインです。これらはポモドーロサイクルに入る条件付けの道具としても使えますし、集中するためのフックとして利用できます。余計なものは削ぎ落とすのがポモドーロテクニックのコツです。

 このようにポモドーロテクニックはデジタルとの食い合わせが悪いので、間隔学習のアルゴリズムを使用したankiなども扱いが難しいです。この場合PCを使用すれば、ゲームなどをあまりする人でなければまだ影響は緩和されるでしょう。

過大な期待をせず、効果を正しく理解する

 ポモドーロテクニックを導入すれば、理解が進みやすかったりより効率よく学習やタスクが進むかもしれませんが、勉強が楽勝になったりスマホをいじりながらでも内容を覚えられるわけではありません。ポモドーロテクニックは魔法ではありません。これを肝に銘じておいて下さい。

 なぜわざわざこれを再度申し上げたかというと、心理的抵抗感が最大の敵になり得るからです。

 「慣れ親しんだやり方を捨て、一見非効率的に思える休憩を入れなさい」というのは本能に反する行動です。もしその時に「勉強がラクになるテクニックだ」という考えがあったらどうなるでしょう?「別に楽でもないし、落ち着かないからやーめた」「気分に任せてやった方がいいや」と思ってしまうので、ポモドーロテクニックの恩恵に与れないのです。

 現実的な効果を理解した上でポモドーロテクニックを導入して、実際の成果を確認できれば継続の意欲も湧いてくるし、実りを得る事ができるでしょう。

 もし、実際に成果が出なかったとしたら集中⇆休息サイクルの時間をあなたに合うように変更してみたり(実際に集中12分→休息3分という研究もあります2))、そもそも人間の特性にはブレがありますからあなたが研究には当てはまらないタイプの可能性もあります。この時期の情報をもとに効果判定をして、自分にビタっとくる方法を探してみてください。

環境を整える事と、時間の調整がカギね!

引用・参考文献

1)Utami, Athifah. “Enhancing ‘How to Learn’Skills: Its Impacts on Academic Performance and Students’ Motivation.”
2)Biwer, Felicitas, et al. “Understanding effort regulation: Comparing ‘Pomodoro’breaks and self‐regulated breaks.” British Journal of Educational Psychology 93 (2023): 353-367.

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