この記事まとめ
・研究によると顔で協調性・外向性・神経症傾向・開放性といった性格特性はある程度識別できるようですが、誠実性に関しては顔で判断する事ができません。開放性はアクセサリや髪形によって判断がゆがむため、顔のパーツだけを見たほうが良いようです。
「人相が悪い」「優しそうな顔」
そんな風に表現する事があります。事実、私達も初対面で感じる事がありますよね。
しかし、その直感ってどこまで当てになるのでしょうか?私も初対面では誠実そうに見えたのにとんでもない人だった、なんて経験があります。
顔で性格はわかるのか?わかるとすればどこを見ればいいのか?そんな疑問に心理学のエビデンスを元に解説していきます!
顔で性格はある程度判別できる
今回参考にするのは2010年Kramerらの論文で、「今までも顔から性格を識別できるか調べた研究はあったんだけど、本当か確認してみたよ」といった内容になります。1)詳細は以下の通り。
- 顔を見るだけでBig Fiveの協調性・外向性・神経症傾向は偶然を超えるレベルで判別できた
- Big Fiveの誠実性はわからないっぽい
- 目・鼻・口のあたりといった顔の中心あたりの情報だけでもかなり判断できた。むしろ開放性は顔全体を提示されると判別できなかった
- 開放性の性格特性は顔以外の情報に影響を与えられるかも?
というわけで私たちは顔から性格を判断しているのですが、あながちでたらめでもなさそうですね。
顔からはわからない性格特性もある
ちなみにBig Fiveというのは誠実性・協調性・開放性・神経症傾向・外向性の5つから性格特性を見るものです。特性論というのですが、これらの強弱を組み合わせで性格を理解するものになります。ですから「あなたは誠実性タイプ!」というような使い方ではなく「あなたは誠実性と協調性が高く、開放性は低くて‥」といった表現の仕方になります。性格の研究ではこのBig Fiveが使われる事が多いです。
5つのパラメータについて超簡単にかみくだくと、順に「マジメ・友好的・新しいもの好き・神経質・陽キャ」のような感じでしょうか。誠実性にはマジメの他にも勤勉、計画的など色んな表現があるでしょうが、それらをまとめて「誠実性」という言葉で表現しているわけですね。性格を分類するならまずBig Fiveです。
自分や他者の性格特性について深掘りしたい方はパ-ソナリティを科学する: 特性5因子であなたがわかるあたりがうまくまとめられていますので手に取ってみてください。
誠実かどうかは人相からはわからない
この研究からすると、どうやら顔を見ても相手が誠実かどうかはほとんどわからないようです。面接やデートでもまず「この人は誠実かな?」という事が気になるところですが、顔から誠実性を判断する事はできないと思った方が良さそうです。「人相が悪いから軽薄そう」みたいなジャッジは当てにならないという事ですね。
もし相手の誠実性が気になるのなら、注意深い質問やコミュニケーションでウソがあるかどうかなどによって判断していく方がスジが良いでしょう。ウソを見抜く方法については下記の記事もご覧ください。
また、誠実性が高いからといって信頼できる行動を取るわけではないという事にご注意ください。誠実性と信頼行動に関しては過去記事の【信頼の科学】心から信頼できる人の特徴と見分ける方法とは?を参照してください。
協調性・神経症傾向・外向性は人相を見ればわかる
一方で、協調性・神経症傾向・外向性は顔からある程度判断ができそうです。
「この人は友好的だろうな」「ちょっと神経質そうだな」「いろんなことに興味がありそう」
人相を見てこのような直感がある時は少し信用してみてもよさそうです。そういう意味からすると、社交の場で顔を見てフレンドリーそうなら積極的に話しかけてみようという勇気も出るのではないでしょうか。私の経験としても「この人なら話が盛り上がりそうかな?」「コミュ力ありそう」と思って話しかけた場合、印象から大きく外れた経験はほとんどありません。人間って意外と印象通りなものですね。
開放性は顔のパーツだけ見る
面白いのが、想像力などの性格特性である開放性に関しては目・鼻・口といった顔の中心部の情報だけの方が、顔全体の情報を提示された方よりも正確に見抜けたということです。普通は情報が増えれば増えるほど正確に見抜けそうなものですが‥。
この不思議な現象に関して著者は「他の情報に影響されて精度が落ちたんじゃない?」と述べています。1)
つまり、髪型やアクセサリなどによって開放性の判断は大きく揺らいでしまったということです。もっといえば、私たちは開放性の判断に対して髪型やアクセサリーの方を強く参照してしまう可能性があるという事です。確かに個性的な髪形をしている人などは「この人芸術肌かな」と感じる事がありますよね。
天才アピールには独創性のあるファッション
もっといえば、開放性の高い天才肌だと思わせたいなら思いっきり独創的なファッションや髪形をするだけで、ただならぬ雰囲気を身に着ける事が可能になるわけです。
逆に、あまりにも型にはまった格好をしているのに「アイデアマンなんです」と言われたところで残念ながら相手はあまりそう感じないでしょう。七三分けでカッチリしたメガネ、それにスーツを着ている人が「私は奇抜な発想を持っているんです」と言われたらどうでしょうか?いやいやウソでしょと、やはり説得力が乗らないのです。
自分が何をアピールしたいかによってファッションや髪形を変えるというのも一つでしょう。
顔だけで確実に判断できるわけではない
注意点として、顔から性格が識別できる傾向にあるというだけで確実に顔から判断できるわけではないという事です。ですから決めつけは厳禁。
たとえるなら、一流大学を出ている人だから高収入だろうと決めつけるようなものです。確かにその可能性は他の大学卒より高いかもしれませんが、一流大学を出たけどニートの人もいます。高卒で経営者になってものすごく稼いでいる人もいます。ですが、全体を見ると高卒よりも一流大学の方が年収が高いという話です。一流大学を出ている事は、目の前の人がニートではない事の証明にはならないのです。
顔を見ても性格判断を誤る理由
ある程度顔だけで性格特性を推測できることはわかりましたが、先ほども申しましたように顔だけで決めつける事もできませんし、逆に盛大な勘違いをしてしまう事もあります。その理由は何なのでしょうか?
ハロー効果
心理学が好きな人なら「ハロー効果」という言葉を聞いたことがあるでしょう。一つの好ましい特徴に引っ張られて、他の特徴も過大評価してしまうというものです。
特にイケメン美人の場合はこのハロー効果が働いて、相手の性格特性を好ましいものとして判断してしまう可能性があるよ!1)とこの論文内でも述べられています。顔を見ても性格の見積もりを盛大に外してしまうのは、このメカニズムのせいかもしれません。
以前【結婚のリアル】結婚相手を顔で選んで後悔する科学的な理由の記事にて誠実性・協調性が低く、神経症傾向が高い人は人間関係を維持しにくいよ!という話をしました。顔だけの情報であれば協調性や神経症傾向は見抜きやすいはずですが、相手が仮にイケメン美人だとすれば「この人は美人だから優しいし誠実だろう!」と自分の理想化した性格だと思い込んでしまうということですね。イケメン美人への期待がそれを上回ってしまうわけです。イケメン恐ろしいですね。
それを考えれば、営業でイケメン美人を送り込むというのは「この人は誠実で親身になってくれるはず!」と思われやすいでしょうから合理的とも言えます。そう考えると顔採用にも理由はあるのかもしれませんね。納得はできませんが。
しかし、外見的魅力にハロー効果が乗るのだとしたら私にもやりようはあります。詳しくは恋愛は顔が全てなのか?科学で顔ゲーを攻略するの記事で男女別魅力アップ法を紹介していますのでそちらもご覧ください。魅力は知識で盛るものです。
私のようにハロー効果の申し子になろう!
引用・参考文献
1)Kramer, Robin SS, and Robert Ward. “Internal facial features are signals of personality and health.” Quarterly Journal of Experimental Psychology 63.11 (2010): 2273-2287.