
もうこれ以上あの人のお世話なんてしてられません!

イライラしているみたいだね。どうしたの?

同じチームの人なんですけどね。
その人は他の人のために何もしないし、自分でトラブル起こしても対応をしようとしないんですよ。
頭にきちゃいます!

たしかに自分では何もしない人がいるとイライラするよね。
自分に関係あることでも他人事みたいな態度だったら頭にくるよ

そうなんです!
あの人たち、いつもやってもらって申し訳ないとか思わないんですか?不思議です

なるほどね。
じゃあ、今回は受け身の人がどういう心理で行動しているのか、そしてどういう対策が有効か、末路はどうなるのかということについて心理学とエビデンスから解説してみよう

お願いします!
受け身な人は見合わないコストを支払うことになる

結論から言うと、私は受け身な人は別にずるくないと思っている。
だが、私は自分から動くタイプだ

どうしてですか!
…と言いたいところですが、あなたの言うことですから実利があるから自分から動くんでしょう?

その言い方。…しかしその通りだ。
受け身でいる方がデメリットがはるかに多いから能動的に動く、それだけだ。
受け身の人は大きなコストを支払っている、私からしたら割に合わない

わたしはぶら下がってるだけの人ってずるいと思うんですが、
彼らにもデメリットなんてあるんですか?

もちろんある。
それを理解すれば、受け身の人がいかに損しているか、そして自分はどう対応するのがいいかが見えてくる。一緒に考えてみよう
フリーライダーは長期的に成功できない

受け身の人はフリーライダー(ただ乗りする人)の気質がある。
他人にやってもらおうとする・やらせようとするテイカー※気質とも言えるな。
周りをうまく利用し、自分の利益にしようとする。
だがこの方法は長続きしない。むしろ与えるほうが長期的にはトクなんだ
※テイカー:与えるよりも人からうばう事の方が多い人。
アダムグラント博士は人間をギバー(与える人)・テイカー(うばう人)、マッチャー(バランスをとる人)の3種類に分類しており、テイカーは長期的に大きな成功はできないとされている。2)

その話はアダムグラント博士のGIVE & TAKEで言っていましたね

ああ。
だがテイカーは短期的には利益を得たとしても長期的に大きく成功はできないと言われている。
そりゃそうだろう。他の人に何でもやらせようとすれば評判が悪化していくからな。
逆にギバー(与える人)は長期戦に強く、複利のようにプラスは膨れ上がっていく。
私はきれいごとで「他の人のために行動しましょう(はーと)」と言っているわけではないんだ

ぶら下がっているだけの人は時間が経つと自滅するんですね。
評判が悪化していくということは…私が「ずるいな」と思っている人は、みんなもずるいと感じているってことですか?

その可能性は高い。
最初はずるいと考えているのは自分だけかも、と思うからみんな口に出せない。
だが「あの人、何もしてなくね?フリーライダーじゃね?」と誰かが口に出す臨界点がそのうちくる。
そうするとみんなが「あいつは前もこんな事をしていた」「私もこんなことをされた」と認識が一致していた事に気づき不満が一気に表出され、フリーライダーは相手にされなくなる…というのがよくある末路だな
まとめ
ぶら下がっているだけの人は時間が経つと相手にされなくなる
ぶら下がっているだけのフリーライダー対策

自業自得とはいえ、大変なことになりそうですね。
…じゃあ、ぶら下がっているだけの人に不満があっても誰かが口に出すまで黙って待つ方がいいでしょうか?

それもリスクの少ない有効な選択肢の一つだ。
それから他の選択として、あなたの対応を変えていくというものもあるぞ。
おそらく、受け身な人がずるいと感じているあなたはギバー(利他的な行動をして周囲に与える人)の性質が強い。
これは長期的に成功しやすい素晴らしい特性なんだが、与えすぎて疲れてしまう事がある。
対策はギブばかりの人が知るべき心理学的戦略の過去記事で詳しく解説しているので参考にしてみてくれ

いい人こそ、助ける時に頭を使わないとダメなんですね!
勉強してギブ疲れしないようにします!
まとめ
何かをしてあげる時には、ギブ疲れにならないよう知識をつけよう!
受け身の人の末路は、人生後半で後悔がまとめてドカン

とはいえ、評判が悪くなったら場所を変えてぶら下がり続けるというのも一つの生存戦略だから悪いことばかりだとは言わない。
だが受け身のままで生きるというのは、他にも深刻なデメリットを抱えている。
人生の後半でめちゃめちゃ後悔するんだ。
だが、これは人間の心理として陥りやすいことだ。自分がこのワナにはまらないためにも理屈を知っておこう

受け身のままで逃げ切れれば後悔なんてないんじゃないですか?
むしろ自分が苦労をしないで済む分、デメリットはなさそうですが…
受け身の人が行動を起こせない理由、アクションエフェクト

受け身の人がずるいと思うのは、あなたも自分が率先した行動をする事は大変だと思っているということだよね。
これは正しい。実は人間は積極的な行動を起こしにくいのがデフォなんだ。
なぜかというと、人間には自分が行動を起こして悪い結果になった時にすごく後悔するという心理的特性があるからだ。
この心理をアクションエフェクト(行動効果)という。

たしかに、やらなくてもい事に手を出して失敗すると「余計なことせん方が良かった」と思いますもんね

まさにそれがアクションエフェクトだ。
たとえば、誰かがやらなければならない仕事に手を挙げて失敗したら、「他の人にやらせればよかった」と強く後悔するだろう。
だから受け身の人はこのような場面で他人に押し付けようとする。
これだけ聞くと「やっぱり受け身の人生のほうがいいじゃないか、ずるい」と思うよな。
これは論理としては正しいんだが、ある条件が加わるとガラッと変わってしまう

…その条件とは?

実は、現状が悪い状態では、行動を起こさない場合により後悔が強くなるという心理的現象が起きる。
これはイナクティブエフェクト(非行動効果)と呼ばれている
2002年Zeelenbergらの論文ではイナクティブエフェクトについて以下のように述べられています。
- 心理学では行動を起こして悪い結果が出る方とより後悔するというアクションエフェクト(行動効果)がある。…が、どうやら文脈によって違うっぽい
- 今までの結果がネガティブな場合は、行動を起こせずにうまくいかなかった時により後悔する。これをイナクションエフェクト(非行動効果)という
- この違いは、人間の心理として「今困ってなければ何もしない。マズい状況では行動を起こして変化を起こす」ような事が普通である事が関係しているようだ。よって、後悔には決断や行動を変えさせる作用があるのかもしれない1)

このように、今自分が困っていない場合は行動を起こさないのが人間だ。つまり追い詰められない限り受け身になりやすい。
フリーライダーは他に人にやらせるので困っていない。だから行動を起こさないんだが、ぶら下がっているだけの人はやがて相手にされなくなる。
だからやがて自分が努力する事を忘れ、孤独になり、スキルも伸びない

…その結果、悪い状況でも受け身のままで行動を起こせず、手遅れになってからようやく「あの時もっと行動しておけばよかった…」とめちゃめちゃ後悔するわけですね

そう、「なぜみんなのために行動できなかったのか、チャレンジしなかったのか、一人になってしまったのか」と強く後悔することになる。まさにイナクティブエフェクトだね。
よく「やって失敗する方がやらないで後悔するよりいい」なんて言葉があるが、これはよほど境遇に恵まれた人でない限り人生でほとんどの人に当てはまる

なぜなら、「素敵な人と結婚したい」「仕事で成果を残したい」とか、自分が幸せになるためには指を咥えているだけではダメで、ある程度自主性とスキルが必要になるからだ。
逆を言えば、ある程度「やらなきゃよかった」という小さい後悔を人生で経験していく事が幸せに繋がりやすい。
人生後半でのイナクティブエフェクも防いでくれる

受け身の人は短期的に困らないからこそ、手遅れになるまで行動できないんですね

そうだね。
しかも受け身でいると自分にはどうしようもないという無力感にさいなまれることになる。
これが究極までいくと、「私が幸せになれないのは、周りがちゃんとやらないからだ!」と他責思考になる。
そりゃ自分では何もできないんだから、他の人にやってもらうしかないよな

当然、そんな人を相手にする人はいない。ここまでくると完全体だな。
この辺の堕ちていくメカニズムは文句ばかり言う人の末路の過去記事でも解説している。もう少し詳しく知りたい人は下のリンクを参照してほしい
自分が受け身にならないためにできることは?

主体的に行動するのが怖い人はどうすればいいですか?
それとももう無理ですか?

後悔しないためにも行動は起こした方がいい。
たとえば勇敢の科学を参照してほしい。勇気は鍛えていくことができる。
時にアクションエフェクトで「こんなことしなければよかった…」と思ったとしても、自分が勇敢になっていくことを実感すると最終的には後悔しないで済むと私は思うぞ。
その頃には、乗り越える力や余裕もついていて、人間としての魅力も増していると思う。時に失敗したとしても、それがかっこいい生き方だと私は思うがな
まとめ
小さいところから主体的に行動してみよう!
受け身でうまくいくのは圧倒的強者のみ

一応受け身の人をフォローしておくと、受け身でうまくいくパターンがないわけでもない。
それは圧倒的強者だ。
その人が圧倒的強者なら、受け身でもうまくいくだろう。
たとえば恋愛で考えてみても、もしアイドルのような外見なら受け身でもモテるだろ?

そうですね。
…つまりアイドルではないなら、恋愛がうまくいくためには自分から行動する必要があると?

そうだ。
ちなみに付き合う前だけではなく、付き合った後も主体性は必要だ。
恋愛で「あなたが私を幸せにしてちょうだい!」といった受け身の姿勢でいると、たいてい関係が長くは続かない。
相手が圧倒的にあなたの事が好きなら別だが、もって数ヶ月という恋愛を繰り返す事が多いな。自分が何もしなくていい関係なんてまずないんだ
圧倒的強者ではない人が幸せになるには、待つだけではダメ

でも、シンデレラは王子様が迎えに来てくれましたよ!
受け身の人を擁護するわけではありませんが、女性がああいう待ちの姿勢に憧れる気持ちはわかります!

一晩で王子様を落とすシンデレラはどう考えても圧倒的強者だ。
もしシンデレラが私のような平凡な人間だったら、王子様は私を探しにこない。
パーティーの度に押し寄せるたくさんのシンデレラ候補生たちに埋もれ、仮に王子様と再会しても「キミ、誰だっけ?」とお互い気まずい時間が流れることになる。
だから私レベルの人は主体的に行動しないとノーチャンスなんだ

キビシイ!!

私は圧倒的強者ではない。それは受け入れるしかない。
だが知識をつけて、主体的に自分の可能性を広げていくことはできる。
チャンスメイクをするためのスジのいい方法を知っていれば、人生の可能性を限界まで広げることはできるだろう?
だから私はそのメインウェポンとして心理学の知識を発信しているわけだ。
そのために他の記事も参考にして可能性を広げてみてくれ
引用・参考文献
1)Zeelenberg, Marcel, et al. “The inaction effect in the psychology of regret.” Journal of personality and social psychology 82.3 (2002): 314.
2)Grant, Adam M.. GIVE & TAKE: 「与える人」こそ成功する時代. 日本, 三笠書房, 2014.