本質を見抜く人をく感じるのは…ハッタリ!?理由を心理学的に解説

顎に手を当てて考える男性 人を読む心理学

ねえ、ここにおやつなかった?

な、ないよ!

勝手におやつ食べたよね?

そういえば、こんな風になんでも見抜いてくる人がこわいことがあるんですけど、そんな人とはどう関わればいいですか?
話しているとなんでも見透かされているようで緊張するんですよね

なるほど。
相手に洞察力があったり、心を読まれるような気持ちになると確かにこわいよね。
じゃあ、その本質を見抜く力ってなんなのか、どう対処すればいいのか
心理学のエビデンスを元に解説してみよう!

(よしよし、うまくごまかせたぞ)

おやつの件については後で話がある

(…一番怖いやつだ!)

本質を見抜く力の正体とは?

まず、いつも言っていることだが人の心なんて読めない
「あなたの考えていることなんてお見通し」というのは
ただのブラフ

でも、心を見透かされているように感じる時があります!

それは相手を観察して推測するのがうまいだけだ。
だから100%でもないし、思考を読めるわけではない。
「たぶんこうなんじゃないかな」と推測するのがうまく、
さらにまるで読んでいるかのように見せかけるのが上手い
一種のブラフであり、ブランディングだな

洞察力がある人は目から感情を推測できる

じゃあ、洞察力があって推測がうまい人の特徴ってなんですか?

それに関して心理学にはRMETというテストがある。
これは目だけの写真を見て、相手の感情を推測するテストだ。
実際のRMETテストはこんな感じだ。英語が苦手でないならやってみるといい。
このRMETに関して、2014年Bakerらの研究では以下のようなことが述べられている

  1. 目の写真を見て感情を推測するテスト(RMET)は知能とは無関係と思われていた
  2. しかし、RMETと知能には無視できない正の相関関係があった1)

頭が良い人は観察力があって、
相手の感情を推測するのがうまいんですね。
でも、相手の感情と本質を見抜くのにどんな関係があるんですか?

観察力+頭がいい人には要注意

良い着眼点だ。
まずコールドリーディングでも述べたが、人間同じ環境に置かれれば考えることは似たり寄ったりだ
たとえば、自分のせいではないのにミスを責められたらイヤな気持ちになるだろう?

そりゃそうですよ。
身に覚えのないことで怒られたら腹も立ちます。
当たり前じゃないですか

そう、当たり前なんだ。
つまり相手がどんな状況で、どんな感情かを正確に理解できれば、相手の考えていることはかなり推測できるんだ

じゃあ、身に覚えがないことで怒られたはずなのに、あとからニヤついている人がいたらどう思う?

なんかおかしいんじゃないかと思います

そうだね。
普通自分悪くないのに怒られてその感情を持つことはおかしい。だから怒られることで自分に何かメリットがあるんじゃないかと推測できる。
たとえば、同僚のミスの尻拭いをすることで優位に立てる、という気持ちがあるのかもしれない

うーん、したたかですね

実際、研究でも目から感情を読み取る力と知能には相関があると述べられているからな。
あくまで相関関係だが、シンプルに頭の良い人は本質をつきやすいんだ

まとめ
本質を見抜く人はシンプルに頭がいい

頭がいいだけでは本質は見抜けない

よく「顔に書いてあるぜ(ニヤリ)」みたいな煽りがありますけど、
観察だけで相手の心や本質を見抜くことはできますか?

無理だろうな。
見抜くには必ず推測がセットだ。つまり確実ではない。
顔に文字が浮かび上がるシステムは人間に組み込まれていない

じゃあ頭が良いだけでも心を読めそうですか?

それも無理だ。
心を高い確率で読むには観察と推測の両方が欠かせない
さきほどのRMETだが、2022年Kittelらの研究では以下のようなことがわかっている

  1. RMETに必要なのは心の理論ではなく、感情を知覚する能力の方が関連性が強い。
  2. RMETには他にも、共感性や語彙力も要求される。
  3. 感情知覚能力は心の理論として大切だが、不十分2)

…ちょっとわかりにくいです。
つまり、RMETでわかるのは相手の感情を理解する力ってことですか?

少し語弊があるが、まあそうも言える。
相手の考えを理解するには文脈から推測したり、語彙力も要求される。
RMETのように、観察から感情がわかるだけでは相手の考えや本質を見抜くのには材料不足ってことだな

もうちょいわかりやすくお願い

本質を見抜く人の具体例

たとえば、仕事で自分の手柄を横取りされたのに機嫌が良い人がいたとする。
本質を見抜く人はその感情をつぶさに感じ取る。

「やけくそになっている感じもない、本当に機嫌が良さそうだ。
この人は頭がキレるし、手柄を横取りされるのもらしくないじゃないか。
…もしかしてこの成功の裏にはこの人しか知らないデメリットがあるのでは?

感情と文脈からこのように推測する。

それから?

相手に質問をするんだ。
ずいぶん機嫌が良さそうだね。自分の計画がいい感じで進んでいるのかな?

怖っ!!!

ポイントは、質問しているだけで何をたくらんでいるかはわからないんだ。
でも、自分がなにかたくらんでいたらこの質問はとても怖く感じるよね。
よって、隠し事がある人には、結果的に全てを見透かされているように感じるわけだ

まとめ
本質を見抜く人は推理上手!

本質を見抜く人とどう接すればいい?

じゃあこんな観察力があって頭もいい人とどう接するかだね。
ひとつ指摘させてもらうが、みんなビビりすぎだ
人間の心は読めない、たくらみもよくわからない、嘘もかんたんには見抜けない

でも冒頭で話した時、
私がおやつを食べたっていう確信があって質問してましたよね?
ああいうのがかなり怖いんですよ

確信なんてない

は?

確信なんてないぞ。
状況からそうかなと思って、ただ質問しただけだ。
その後動揺したから、たぶん食べたと思ってプレッシャーをかけたんだ

じゃあこの件の本質が見えていたわけでは…?

まったくない。
そもそも全部わかっていたら質問なんてしない。
あんたが勝手に動揺しただけでしょうが

うわー…ないわー…

こんな感じで相手に過剰反応してペースにハマってしまうんだ。
だから、私たちは質問されたらこう考えよう。
相手は心を読めない、これも反応をうかがおうとしているだけだ
そう考えていればリアクションは全然変わってくるだろ?
そうしたら相手はもうお手上げだ。

さっきの質問には落ち着いて「知らないよ」だけでよかったんですね

そうだね。
本質を見抜く人は頭がいい、駆け引き上手・交渉上手だ。
相手を焦らせたりして情報を引き出そうとする
これを頭に入れておかないとあっという間に相手のペースだ

しかもあなた心理学の論文読んでるじゃないですか。
きっと私の心も読むんじゃないかって…

無理だ。
本当に心や本質が読めるのなら、私は今ごろ大金持ちだ。
でも私はお金持ちではない。そういうことだ

まとめ
心なんて読めない!私が貧乏なことがエビデンス!

本当に本質を見抜ける人はこわくない

もう一つ大事なことを言っておくぞ。
そもそも、本当に本質を見抜く力のある人はこわくない

なんでですか!?
心を読まれたり隠し事ができないのめっちゃこわいです!

本質を見抜く力のある人はプレッシャーをかける必要なんてない。
むしろ何も知らないように振る舞う

…よく考えればそうですね。
なんでも見抜かれると思ったら警戒しますし、距離を取りたくなります。
そんな力があったら孤立するから、隠そうとしますよね?

その通りだ。本質を見抜ける人ならそんなこと百も承知だろう。
だから爪を隠す。必要ならドジなうっかり者さえ演じるだろう。
そうやって相手が快適に話せるような、信頼してもらえる状況を作り上げるだろうな

そう考えると、こわいと感じるのはただのブランディングなんですね

その通り!相手がやっているのは、
自分はこんなに洞察力があってお見通しだから、隠しごとするだけ無駄だぞ?
真実を話させるためのブランディングなんだ。
駆け引き上手なことは間違い無いかもしれないけどね

まとめ
こわい雰囲気は相手のブランディング!

なんでも見抜いてくる相手のペースに乗らないための対処法

じゃあ,そんな相手のペースに乗らないためのテクニックありますか?

相手に情報を与えないことが第一だ。
あいまいな質問をしたり、いきなり断言してくるとか様々な方法があるが、
結局プレッシャーをかけてこちらから手がかりを引き出そうという目的に変わりはない
相手は駆け引きの中で情報を集めて、核心に迫っていく

最初に私がやられたブラフですね。
すっかりやられちゃいました

相手のやり口を理解する

他にも、どんなことをして情報を引き出そうとすることが多いですか?

間をもって、まばたきは少なく、ゆっくり喋ってきたりする。
この手の人は交渉上手だから、会話前に「どうやって話を進めていこうかな?」と内容をある程度練り上げていることが多い。
だからうまく自分を演出できる台本を書いたら、その通り演じる。
彼らは心理学の知識として知っているというより、経験として身につけていることが多いな。
詳しくは過去記事の声の科学が参考になるかもしれない

手強い相手ですね…

本質を見抜く人からペースを奪え!

でもその分、相手の想定から外れたら慌てることも多いんだ。
思った以上に情報が引き出せないと相手の勝ちパターンから外れるわけだからね。
相手が動揺したら、今度はこっちから「なぜそんなことを聞きたいんですか?なぜ私に?」と聞いてみる。
相手は意外と自分が攻められることなんて考えてなかったりする

カウンターになるわけですね!

ただし、口げんかをしろというわけではない。
でも相手が質問するならこっちだって質問する権利はある
しかも不意をつく形になりやすいから相手は怯むことが多いんだ。
防戦一方ではなくすることで、相手との立場を五分に持っていける

おお!すごい!
そう聞くともう怖くなくなってきました!

相手との立場を五分五分にする3)ということは元大阪市長・弁護士の橋下徹氏も言っている。
弁護士だから当たり前だが、実に交渉上手だ。
論理一辺倒ではないし、ブランディングもうまい。
最後に思わずYesと言わせる最強の交渉術を参照すると、彼がどのような思考をしているかがよく理解できる。
彼は心理学の論文は読んでいないと思うが、まさに本質を見抜いてくる怖い相手だ。

だからこそペースを握られないようにすることが大事なのですね

百戦錬磨の弁護士相手なら空中戦で勝つのは無理だ、諦めてくれ。
でも、口が達者な一般人ならペースを渡さないことは十分可能だ。
とにかくプレッシャーをかけられても動じず、喋りすぎないこと相手にも話をさせること
これができれば、相手はただの人間で怖くはないとわかるはずだよ

手強い相手だと思ったけど、ペースを渡さなければなんとかなりそう!
よーし、苦手意識を克服するぞ!

まとめ
怖い相手でも質問をし返してペースを握らせない!

引用・参考文献

1)Baker, Crystal A., et al. “Eyes and IQ: A meta-analysis of the relationship between intelligence and “Reading the Mind in the Eyes”.” Intelligence 44 (2014): 78-92.
2)Kittel, Anne Frieda Doris, Sally Olderbak, and Oliver Wilhelm. “Sty in the mind’s eye: A meta-analytic investigation of the nomological network and internal consistency of the “Reading the Mind in the Eyes” test.” Assessment 29.5 (2022): 872-895.
3)橋下, 徹. 最強の交渉術: 最後に思わずYesと言わせる. 日本, 日本文芸社, 2003.

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