【ストレッチの科学】筋トレとストレッチを組み合わせた運動法とは?

ストレッチをする男性 運動の科学

 筋トレとストレッチ、どうやって組み合わせていますか?

 柔軟性も欲しいし、筋肥大も狙いたい。しかも現代はタイパ重視になってきていますから、ジムやトレーニングでも根拠のあるトレーニング方法を実践していきたいところです。

 では、タイパの良い、効率の良いトレーニング方法とは何でしょうか?一緒に科学的根拠から学んでいきましょう。

筋トレ中にストレッチを入れるとタイパが良くなる!

 今回参考にするのは2022年BJ Schoenfeldらのレビュー論文になります。この研究によると「筋トレ中にストレッチすると、筋トレのタイパが良くなるんじゃね?」という結果が出ています。1)詳細は以下の通り。

  • ストレッチをすると筋トレとは違う筋肉の成長に対する刺激が入る!
  • ただし、少し強めのストレッチが必要。10段階で言えば8くらいの強度で20-30秒行う
  • メカニズムとしては、ストレッチが筋肥大のためのセンサーを刺激してくれるからかも?

 休息時間を使ったストレッチで筋収縮を感知するセンサーと受動的なストレッチを感知するセンサーどちらも刺激し、タイパのいいトレーニングが可能になるんじゃない?と言っているわけですね。

ストレッチが筋の成長を誘発するという研究は結構ある

えー、ストレッチで?ホントかな~?

 なんて思うかもしれませんが、実はストレッチが筋の成長に役立つんじゃない?っていう話は結構ガチっぽくてですね、2023年K Warnekeらの論文でも長時間のストレッチだけでも筋の成長を誘発する!というものがあります。2)もう少し詳しい内容を記載すると、

  • 一日一時間のふくらはぎのストレッチを毎日6週間やると、筋力や筋の厚み、可動域が増した
  • ストレッチの強さは10段階で7~8くらいの強さで行った
  • 男性の方が効果が高かった(女性も効果はあった)

 といった結果が出ています。ストレッチ一時間やりつづけるというのは現実的ではありませんが、ストレッチだけで筋の厚みや筋力が変化したというのは面白いところです。

疲れている時は時はストレッチだけ行うという選択もアリかも

 以上のように、ただ柔軟性を増すという意味だけではなく筋トレのタイパをよくするという意味でもストレッチを取り入れていきたいところです。原理上は疲れている時は入念なストレッチだけでも行うという選択肢もありかもしれません。

 どうしても筋トレをしていると「せっかくトレーニングしたのだから休むと気持ちが悪い!落ち着かない!」という気持ちに駆られる時期があるものです。そのような時は強めのストレッチを行う事で「今日はこれで筋肉に刺激を入れたのだ!」と納得して休息に充てるという心理的な落ち着きを狙うのもありかもしれません。

 余談ですがこの二つ目の研究にもBJ Schoenfeld博士が参加しています。筋トレをする人はこのブラッドJショーンフェルド博士という名前は覚えておくと良いでしょう。

ストレッチと筋トレ、どっちを先にやるか問題について

 さらに、よく議論に挙がるのが「ストレッチと筋トレ、どっちを先にやったらいいか」問題です。

 結論から言うと「少なくとも先に長時間のストレッチはあまり良くないかも!」というものが回答の一つになります。2016年のBehmらのsystematic reviewでも長い時間のストレッチが筋出力の低下にもつながるという事は言えそうだが、けが予防についてはっきりしないといったことが述べられています。3)

 今回の筋トレとストレッチを組み合わせるトレーニング方法では20~30秒くらいのストレッチをインターバル間に行っています。筋肉への刺激になるからといってあまり長い間ストレッチをやると筋出力が低下してしまい、結果的に筋トレでのボリュームをこなせないと本末転倒です。

 ですからストレッチ時間はあまり長くしすぎず、目安としては論文の通り20~30秒を一つの目安にした方が良いかもしれません。取り入れる時は最初負荷量もあまり無理をせず、トレーナーと相談しながら筋肉の反応を見て時間や負荷を調整しましょう。

ストレッチは筋トレのチアリーダーだ

 以上のことから、ストレッチというのは筋トレの良き相棒だと考えても良さそうです。ストレッチは柔軟性だけではなく筋の成長も誘発してくれるかもと考えれば、ストレッチをするモチベーションが上がるのではないでしょうか。ストレッチは筋トレのポテンシャルを発揮する為に応援してくれるチアリーダーのようなものです。

すっげえじゃん、ストレッチ最強じゃね!?

 と思うかもしれませんが、残念な事としてはストレッチのイメージにあるリカバリーに対して役立つことはあまりないようだ、という事にも触れておかねばなりません。2018年のDupuyらのメタ分析によると、ストレッチは筋肉痛などのリカバリーに対しては期待できないかもという結果が出ています。4)

 この研究ではむしろリカバリーにはマッサージの方が良さそうという結果も出ていますので、ストレッチの特徴を知ってうまく使い分けていくのが良いでしょう。リカバリーに関してはストレッチとはまた別枠で対策が必要だという事ですね。

 最後に、いいスタイルになる事は知的な雰囲気とも関係があります。ジム通いをしつつ、他の論文を元にした心理学の知識についてもぜひ読んでみてください。きっと役に立ちますよ。

経験則やイメージと違う所もあるけど、科学は研究によって改訂されていくものなのね

引用・参考文献

1)Schoenfeld, Brad J., Henning Wackerhage, and Eduardo De Souza. “Inter-set stretch: A potential time-efficient strategy for enhancing skeletal muscle adaptations.” Frontiers in Sports and Active Living 4 (2022): 1035190.
2)Warneke, Konstantin, et al. “Sex differences in stretch-induced hypertrophy, maximal strength and flexibility gains.” Frontiers in Physiology 13 (2023): 1078301.
3)Behm, David G., et al. “Acute effects of muscle stretching on physical performance, range of motion, and injury incidence in healthy active individuals: a systematic review.” Applied physiology, nutrition, and metabolism 41.1 (2016): 1-11.
4)Dupuy, Olivier, et al. “An evidence-based approach for choosing post-exercise recovery techniques to reduce markers of muscle damage, soreness, fatigue, and inflammation: a systematic review with meta-analysis.” Frontiers in physiology 9 (2018): 312968.

タイトルとURLをコピーしました