多様性が受け入れられない人は問題解決能力が低くなるという研究

車いすの女性がプレゼンをしている 心理学

 最近多様性だ、ダイバーシティという言葉を聞くことが増えました。

 今回は多様性はただの綺麗事ではなく、問題解決能力を上げるのだ!という事を研究を元に解説し、さらに私たちの日常生活におけるトラブルの解決能力を上げる方法について考えていきたいと思います。

問題解決能力はスペック<多様性

 今回参考にするのは2004年L Hong, SE Pageらの論文になります。1)そう考えると結構前から多様性の重要性が指摘されていたんですね。

 この論文ではエリート集団vsランダムに選んだ多様性ある集団の問題解決能力について調べ、以下のように述べられています。

  • 問題解決に重要なのは解決アプローチの多様性、たくさんの解決策と視点があることだった
  • エリートで多様性がある集団が理屈では最強なんだけど、現実世界ではエリートの考え方は似てしまう
  • だったら、ランダムに選んだ集団の方が多様性がある分、問題解決能力は高い
  • ただ、似た集団だと話が合いやすく、多様性があると対立も生じやすいから気を付けてね

 といった内容になります。確かに自分の専門分野に対して専門外の、言ってみれば素人の意見が時にドキッとするような本質を突いていたり、疑問にすら思わなかったような指摘から解決策が見いだせるって事ありますもんね。

みんなの意見が一緒≒一人で考えているのと一緒

 要するに、多様性がないと一人で考えているのとほぼ同じなのです。自分と話しているようなものだから対立もしないしケンカも起こらない。話し合っても「そうだよね」で終わってしまうわけです。

 書籍「多様性の科学(マシュー・サイド著)」でも「2章クローン対反逆者」でこの事について触れられており、組織の考え方・視点のクローン化が問題だぜ!という事が取り上げられています。2)みんな同じ視点・考えというのはみんなで同じ所を守っている野球やサッカーみたいなもので、それでは守備はザルでしょう。ばらばらなポジショニングの方が守備範囲が広くて有利ってことですな。

 しかも、なまじみんな同じ意見を持っていて同意してもらえると確信だけは深まっていく‥という沼にハマっていくパターンについても書かれています(5章エコーチェンバー現象)。

 どうして人間が陰謀論にハマったり、フェイクニュースを信じ込んでしまうかというと多様性が足りないという事が考えられるかもしれません。こうなると、見込みのないものにお金や時間を費やしてしまったり、考えがどんどん極端になって若いのに老害化してしまったりします。うん、ネットでよく見ますね

 多様性が無いと明日は我が身とも言えます。多様性について知り、情報提供してもらいやすい方法を知る事で老害化を防ぐ事ができます。確かに極端な考えの人って魅力的とは言えないですし、マズい判断をしている事が多いですよね。対して柔軟性があって余裕のある人は魅力的です。そんな知性を身に着けるには今回の参考文献でもある「多様性の科学」を手に取ってみてください。私もこの本を通読してから「その意見は否定したいけれど、一度全部聞いて受け止めてからにしよう!」と考え、若いのに老害化しないように心がけています。意見を遠慮なく出してもらえるチームは、多様性があるだけマシなのです。

多様性がある状態はドラクエのパーティ編成と一緒

 逆に、多様性があると意見や視点が違うから対立しやすく時にケンカもする。しかしその意見を合わせるとものの見方の死角がなくなるし、多様な解決策が出ればその中に最適解が含まれる可能性が高まるということです。

 もっと言えば、多様性に欠ける状況というのはドラクエで全員戦士のパーティーを組むようなものです。全員レベル99の戦士で固めたらそりゃ強いでしょうが、一方で打撃が全く通用しないタイプの敵が出た瞬間詰みます。現実問題は厄介ですから、様々な攻撃パターンを持っていないと敵(トラブル)は解決できません

 それだったら、多少レベルが低かったとしても魔法使いや僧侶をバランスよく入れた方が対応力に死角がなく、安定して次の街まで行けます。もちろん最強なのは全員レベル99の戦士、魔法使い、僧侶をパーティーに入れる事ですが、それは現実では無理でしょ!という話です。

 ですから、自分の欲しい情報だけ集めるというのは危険なわけです。ネットの情報だけではその点かなり危うく、たまには普段話さないような人と交流できる場に行ったり、本をジャケ買いして読んでみたり、他の人のおすすめ本を取り入れたりすると多様性を高める事ができます。

 多様性を無視するというのは、ちょっとした縛りプレイなので人生ハードモードになります。ただでさえ苦しい人生、イージーモードで無双した方が楽しいはずです。多様性を受け入れるような姿勢の方がゲーム攻略は容易になるでしょう。

多様性を受け入れた方が優れた決断ができる

仲良く意見が合いすぎるのもデメリットがあるよ!

 この話を私たちの身近な問題解決に生かす方法を考えてみましょう。

同じ特徴の人ばかりに相談しない

 この論文から考察すると、あなたが問題を抱えた時に頭のいい人ばかりに相談するのは考え物です。なぜなら似たような解決方法が返ってくるので、「頭のいい人たちだしそれこそが最適解だ」と思い込んでしまう可能性があります。選択肢は他にもあるかもしれません。せめてバックグラウンドが違う頭の良い人に相談したほうがいいでしょう。

 同様の理由で、親友や家族といった近しい人だけに相談して難しい問題を解決するのはあまり良くないと思われます。信頼できる人に相談するという点からは正しいのですが、問題解決に必要な多様性という意味から考えるとちょっと話が変わります。

 あなたと長い期間一緒にいるので経験も共有しているはずです、自ずとものの見方も似てきます。それに仲が良い人はあなたと考え方は似ている可能性が高いですから、半分自分に相談しているようなものです。むしろ、信頼はできるけれどほとほどの付き合いの人を入れた方が意見の多様性が出やすく、良い解決方法が浮かびそうです。

 でもアレですよね、相談する時って自分の意見を肯定してほしいだけだったり、話を聞いてもらえれば良い時もありますから、そういう時は親友でいいんです。そして、少し落ち着いたそのあとに意見の多様性を求めて、口の固い人に相談するくらいが良いのではないでしょうか。

多様性のある人は事実と意見を分けて考えられる

 また、多様性のある意見を取り入れる事に慣れている人は、自分の考え他者の考え、そして事実を分けて考えられます「自分の意見も”一つの意見”にすぎない」と理解していますから、自分の意見にこだわりすぎるような事はありません。

 先を読む人は主観+客観で考える事ができるのですが、多様性を取り入れる事に慣れている人は自分の意見を含めて一歩引いた視点を持っているので先を読める、と言っても良いかもしれません。

 判断には論理と直感どっちも大事という研究も以前紹介しましたが、この論理と直感を意識して分ける事は思った以上に難しい事です。ですが、その第三者の目線が多様性を取り入れる人には揃っているということです。

 意見が違ったとしても、好き嫌いせずに多くの意見を聞いておく事は良い判断をする戦略として有効です。多様性が無く、こだわりが強いとやはり短絡的な判断になりやすい傾向にある事は覚えておきましょう。

色んな人の意見を聞いて、それが面白くないと思っても頭の片隅に入れておけってことね!

引用・参考文献
1)Hong, Lu, and Scott E. Page. “Groups of diverse problem solvers can outperform groups of high-ability problem solvers.” Proceedings of the National Academy of Sciences 101.46 (2004): 16385-16389.

2)多様性の科学 : 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織. スマホ・読上, 東京, ディスカヴァー・トゥエンティワン, 2021, ISBN4-7993-2752-6.

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