この記事まとめ
・感情論を振り回す人は孤独なことが多いです。
対処方法として、冷静に「周囲の人」を説得することが有効です。
「まるで話にならないな‥」
「で、結局どうしたいの?」
仕事や日常生活で会話をしていると、そんな風に感じる相手はいませんか?
感情論で話されると合理的な判断とはかけ離れていきますし、建設的な話し合いになりにくいのでウンザリしてしまいますよね。
今回はそんな感情論になりやすい人の特徴と思考パターンを解説し、感情論の人をうまくさばく方法についてエビデンスを元に解説していきます!
また、自分が感情論にならないための効果的なアプローチも紹介していますので、スマートな思考ができる方法も抑えておきましょう!
頭のいい人でも感情論になりやすいかは別問題
頭の良い人が感情論にならないか?といえば決してそうではありません。
優秀な人がプッツンきちゃったのせいで「ちょっとそれはマズくね?」というヒステリックな判断をして大損こいているのを、私は何度も見た事があります。
では感情論になりやすい人とはどのような人なのでしょうか?
そこで今回参考にするのは2016年Grossmannらの論文で、日常生活下での賢い思考について調べたものになります。1)
人間のかしこい判断や思考についての研究は結構あるのですが、賢さってそんなに単純じゃなくね?日常生活だと違うんじゃない?って事について調べてくれたものですね。
詳細は以下の通りですが、後ほどわかりやすく解説しますのでご安心を。
- 賢い思考(Wise reasoning;WR)は人間関係の対立やジレンマ、適応などで賢い反応をするのに役立つ
- 賢い思考には知的謙遜、自己超越、他者視点といった3つの要素がある
- 賢い思考はその人が持つ固定的なものと状況によって変わるものの2つに分けられる。そして、状況によって判断や推論は大きく変わるので、いつでも賢い判断ができるわけではない。感情の複雑さの認識やどんな感情を感じているか、感情的反応の程度などが影響している
- 社会的状況(人が絡む状況)は非社会的状況(1人だけの状況)に比べ、知的謙虚さや自己超越が高かった
感情論への耐性がない人がいるっぽい
まとめると頭の良し悪しはあれど、人間の頭のよさは状況によって大きくゆらぐようなのです。
特に感情の影響は大きいです。
私たちも感情的になって怒鳴ったり、言ってはならない事を言ってしまった経験は人生の中で誰しもあるでしょう。
悪知恵の働くヤツはこれを利用して、怒らせて言ってはならないことを言わせようすることもあります。ファールをもらいにいくってやつですね。
しかし、社会でみんな感情論ばかり言っているわけではありませんし、こざかしい煽りにも余裕の笑みで格の違いを見せつける人もいます。
ということは感情論になりやすい人となりにくい人がいると考える方が自然ですよね。
そこでもう少し掘り下げて、感情論になりやすい人はどんな人なのかを考えていきましょう。
ぼっちは感情論になりやすく、論理的な思考は難しい
論文によると社会的・非社会的状況の推論の違いを比較すると知的謙虚さと自分以外の事を考える(自己超越)傾向が強くなったとありました。1)
かんたんに言えば、私たちは人間関係の中でもまれながら考えると、私たちの思考はブーストされるということです。
これが意味することは、人間はぼっちの状態で考えると自分の知識や判断だけを信じ、他人の事を考えなくなる傾向にあると言えるでしょう。
ぼっちは身勝手になりやすく、思考能力にデバフがかかるいうことですね。
具体的には、私達はみんなと持ちつ持たれつで仲良くしたほうが楽しくてトクだと考えられます。
しかしぼっちだと、仲間との関係性の構築やギブアンドテイクによるメリットを理解できません。
自分のことしか考えない身勝手な行動は仲間からハブられるということはちょっと考えればわかりそうですが、これが想像できないのです。
それどころか、かしこい思考が働きにくいためそもそも問題を起こしているのは自分という自覚すらしにくくなってしまうのです。
その結果問題が起きるとどうするかというと、自分が引き起こした問題にも関わらず周りを責めます。
「なんでわたしばっかり」
「みんながいじわるする」
それは正しいかもしれませんが、知的謙遜さと自分以外のことを考える事が不足ていないか確認してみることが重要です。
感情論に特徴的な思考パターン
具体的には感情論の人の特徴として、以下のような思考パターンが挙げられます。
- 自分のミスや不完全さを認めない
- 自分のことしか考えず、仲間を助けるという発想がない
- 自分の気持ちは大事だが、他人の気持ちに共感しない
このような思考パターンでは感情論になるのは当然ですし、自分に都合のいい考え方をしてしまうため感情論で指摘をする人はおまいう(お前が言うな)案件になりやすいのです。
あなたも感情論の人と接していて、「よくもまあお前が言えたもんやな」「その前にキミ、他人のことより自分のことちゃんとやろうか」と思った事があるはずです。
しかも感情論を使う人は、自分のせまい視野でしか問題を認識できていないので、意見がきれいごとになりやすく解決性がない意見になりやすいのです。
「‥で、だからなんなの?」と言われて終わるパターンですね。
恋人ならまだいいのですが、職場の人にやられると結構しんどいですね。
このような思考や行動によって、集団の中での対立やジレンマの解決、環境に適応する能力が失われてしまうことになります。
これがさらなる悲劇を生みます。
ぼっちと感情論が生み出す負のスパイラルループ
感情論の1番マズいポイントは、社会生活で負のループが作られてしまうことです。
- 仲間内からつまはじきにさせることによって人間関係が乏しくなります。
- すると、人がからむ問題について考えることが減るので、ごう慢な考え方になり、他者の事を考えにくくなります。
- その思考パターンでは感情論を振り回しやすいため、身勝手な考え方や問題行動により一層仲間内からはぶかれることになります。
そして状況が悪化した状態で1に戻ります。
‥と、どんどん思考がゆがむ負のループに陥ってしまうのです。
ですから私たちは社会の中で仲間の事を考えたり、自分はよくわかってないんだという事を知り、人間関係の問題を解決できるようもまれて訓練していく必要があります。
逆を言えば、他の人に対して与えたり、思いやりを持って接する人はみんなから愛されやすいだけではなく賢い判断もできる人と言えるでしょう。
この点に関してはギブアンドテイクのトリセツの過去記事で詳しく解説していますので、心理学的観点から他の人に与える事の強力さを知っていただければと思います。
感情論を振り回す人への対策は‥周りへの説得!?
感情論になりやすい人の特徴と思考を理解したところで、感情論への対処方法を学んでいきましょう。
まず最初にやってはいけない対応からお伝えしましょう。
感情論の人にやってはいけないことは、一対一で論理的に話すことです。これはやめましょう。
・ ・ ・
‥わかります。
感情論に対してあなたの意見の方が正しく、相手の論理が通っていない論破したくなる気持ちはよ〜〜くわかります。
この長文記事を読んで、学ぼうという意思がある人が論理的に考えられないわけがありません。
しかし残念ながらあなたがいくらていねいに冷静に伝えても、感情論の人にはほとんど効果はありません。なぜなら相手はそもそも論理的ではないからです。
たとえば、人の好き嫌いで感情的に話す相手に対して「私も彼の言うことが正しいと思う。過去のデータを見てもあの考えは妥当だと思うよ」と伝えたとしましょう。
ですが相手は好き嫌いで判断しているのですから過去のデータや根拠なんて知ったことではありません。
なんだったら、あなたのことは「私の考えが理解できない、おろかで頭の固いヤツ」くらいに思っています。
ですから感情論の人に理由や根拠をていねいに話すことはむしろ逆効果。
理不尽かもしれませんが、感情論とはそもそも理不尽なものです。
論理的じゃない相手なら、ギャラリーを魅了しろ!!
ではどうするかというと、やはり感情論の人に理由や根拠をていねいに話してください。ただし他の人がいる時に、です。
感情論の人は、少なくとも感情が冷めるまで考えを変えないでしょう。
ならば、他の人を説得した方が効果的です。
もし感情論に対して、冷静に、論理的に、相手の気持ちには共感した上で、解決のための行動を提示したとしたら周りの人はどう思うでしょう?
「わたしはこんなに頑張っているのに、他部門ばかり評価されているのはずるい。 あいつらはご機嫌取りがうまいだけだ」 「確かに私たちはがんばっているし、評価してほしいという気持ちももっともだと思う。 そして、あの部門はもう3年も忙しいプロジェクトを頑張ってきたんだよ。 正直自分たちをもっと評価してほしい気持ちもあるが、私は今回の評価に関しては納得がいっている。 彼らのプロジェクトの難易度を考えれば、評価を受けるのが遅すぎるくらいだと思うよ。 私たちも評価してもらえるように、まず自分たちの新しい案件をを頑張ろうじゃないか。 次は私たちだ」
このように理路整然と、相手の立場を含めてフェアに話す事は論文で言うところの「かしこい思考」であり、あなたの能力と誠実性の証です。
しかし感情論の人は「他の人が評価されることが気に入らない」「文句を言いたいだけ」といった理由が根底にありますから決して納得しないでしょう。
ですが、このあなたの受け答えを見て周囲の人はどう思うでしょうか。
「この人の言うことはもっともだな、リーダーシップがある」
「感情的にならず、冷静に問題解決をしようとしているな」
「言われた問題は既に把握していて、もっと高いレベルで考えている」
「感情的な人に対しても現実的な行動を促している、頼りになるな」
こう感じるはずです。
意見がただの感情論で解決性がなければないほど、現実的な行動と解決のために行動しようとするあなたは魅力的に映ります。
感情論を振り回す人ではなく、チームや聴衆にそう感じてもらうのが目的です。
その結果あなたの影響力と味方は大きく増えます。
感情論は論破するのではなく、利用するもの。
あなたに必要なのは相手の考えを変える事ではなく、切り返しで周りを巻き込む答弁能力です。
過去記事でスピーチが上手い人の特徴7つやしたたかに人を巻き込める人の特徴、評価されやすい声についても心理学的に解説していますので、そちらも参考にしていただければと思います。
感情論にならず論理的に考えるための方法
これまでは感情論になる人について解説してきましたが、感情論は私もあなたも例外ではありません。
大事な事だから、大好きな相手だからこそ感情的になってしまうこともあるのではないでしょうか?
これは口喧嘩している時を考えるとわかりやすいでしょう。
「あなたは何もわかっていない」
「あなたはだからだめなんだ」
「私のことなんてどうでもいいんでしょう」
「こんなにがんばっているのに」
「他の人が可哀想だとは思わないの?」
特にけんかしているとこんなパッションワードがブリブリ出てくるわけです。
どれも自己防衛的で、自分が正しいという前提を元に攻撃的な言動になってしまっています。これらの感情論に謙虚さは微塵もありません。
この感情論への対策をすることができれば、つまり論文で言うところの「かしこい思考」を発動させることができれば、彼氏彼女とのケンカや職場でのトラブルを大火事にすることもないはずです。
感情論ブロッカー:かしこい思考を発動させろ!
論文ではかしこい推論(WR)ができている時は広い視野で、肯定的な感情を持ち,感情の複雑性を認識し、感情的反応が低く、ものごとを再評価し、許しが多いとあります。1)
ネガティブな感情に流されず色々な視点から考え直す事ができるってことですね。
これを元に先ほどのパッションワードを考えてみましょう。
「私はこんなに頑張っているのにあの人は何もしていない!」
↓
「あの人が何もしていないように感じて頭にきているけど、ちょっと落ち着いてみよう(感情的反応性が低い)。
あの人がみんなの為に書類を整理したりしてくれているのも理解している(再評価)し、それには感謝している(肯定的な感情)。
そして周りのみんな(広い視点)も今いっぱいいっぱいだけど、あの人は余裕があるみたいだ。
それなのにチームプレイをしない様子を見て、イライラしているし仕事が片付かなくて焦っている自分(感情の複雑性)もいる。
みんなを手伝ってあげてほしいけれど、ここであの人に気持ちをぶつけて怒っても協力は得られないだろう(再評価)。
それならまず状況を説明して理解してもらえないか話してみよう」
こう考えられると確かに問題解決能力が高いですよね。
かしこい推論ができる能力を高めるには、
- 自分の気持ちを書き出す
- その後賢い推論の要点を含めて書き換える
この手順を踏むと良いでしょう。
頭の中の思考はとにかく早く、一直線に行動しがち。よって感情論になりやすいのです。
とくに、人間関係の問題はたいてい感情が絡みます。
大小さはあれど、「好き」「嫌い」「むかつく」「愛してる」「イライラする」といったポジティブ・ネガティブ関わらず何かしらの感情を抱くはずです。
そしてこれこそが賢くない判断に繋がってしまう事があります。
論文によるとネガティブな感情が特にマズいと書かれていますが、ポジティブだろうがネガティブだろうが一直線だと問題が発生します。
ポジ「会ったばかりだけどすっげえいい人で大好きだからお金も時間も全人生委ねちゃう!」
ネガ「私はがんばっているのにこの人はひどい!最低!2度と話さない!」
どちらも極端で視野狭窄が起きているのがお分かりいただけると思います。
感情的な判断が悪いとはいいませんが、極端になると賢い判断ではないことは明白です。
一度書き出すことで、感情論になっていないか確認しましょう。
CBTも有効
こういった賢い判断を促していくためのツールとして、CBT(認知行動療法)というものがあります。私の記事を読んでいる方はもうお馴染みですね。
かんたんに言えば、メンタルの不調を抱えている人は自動的に頭に浮かぶ考えが合理的じゃなくね?というものです。
自動的に頭に浮かぶ考えを自動思考というのですが、それを自覚して「その考え方、極端じゃね?もっと合理的な考え、あるんじゃね?」と修正するトレーニングですね。
たとえば、あなたが職場で先輩に書類作成で指導を受けたとしましょう。
「この場合の文章は半角カタカナじゃなくて、全角カタカナで入力しないと」という指導に対し、
「私はこんなに頑張っているのにひどい!」という感情論を持ったとします。
立ち止まって考えてみれば、自分が頑張っていることと修正の必要があることは別問題です。
ただ、修正ポイントを直せばオッケーだよ!という話でしかありません。
ですが「感情的決めつけ(例:悲しい気持ちになるのは、相手がひどい事をしているからだ)」という認知の歪みがあると、自分を正当化したりきずつける方向に働いてしまいます。
さらに「一般化のしすぎ(例:この人はいつもそうだ)」「全か無か思考(例:つまり全部ダメなんでしょ)」などの認知の歪みが組み合わされるとどんどん思考が極端になります。
これらを組み合わせると、仕事で直せばいいだけの話がこじれて以下のような思考になります。
「私が頑張っているのに否定してくるなんてこの人はひどい人だ。私の事なんてどうでもいいと思っているし、いつも文句ばっかり言ってくる。ようするに、私のことがキライで全部ダメってことでしょ」
と、どんどん問題を解決する方向から離れた判断になっていきます。
これではこの先輩がキライになり、ぎくしゃくし、ミスを直そうというエネルギーも出てきません。
これをCBTを使って修正すると、
「そうか、こういう時は全角カタカナで揃えればいいんだな。
それに、他の部分はオッケーってことだよね。よしよし。これなら5分でサクッと終わるから、終わったらジュースでも買ってこよう」
と現実に向き合った上で合理的な行動を取ることができます。
問題は直ちに修正できますし、指導をしてくれた先輩にお礼を言うところまでいければ「なかなかカワイイやつだ」と人間関係もうまくいくはずです。
CBTについてガッツリ対策をしたい方はバーンズ博士のいやな気分よ、さようならが良書です。
CBTは技術ですので、何度も何度も気づき、修正していくことが大切です。
感情を振り回すのではなく、感情を使いこなしスマートな判断ができるように頑張っていきましょう!
引用・参考文献
1)Grossmann, Igor, Tanja M. Gerlach, and Jaap JA Denissen. “Wise reasoning in the face of everyday life challenges.” Social Psychological and Personality Science 7.7 (2016): 611-622.
2)いやな気分よ、さようならコンパクト版: 自分で学ぶ「抑うつ」克服法. 日本, 星和書店, 2013.