この記事まとめ
・知識を深く理解したり、思考を整理するノートを取るには人間生成学習というものを応用したノート術がおすすめです。
まずノートの左側に要約を、右側にマインドマップにまとめ、次にそれらを見ながら解説を行い、最後に何も見ない状態で解説を行うという順で行う事で学習効率が高まります。
効率的なノートの取り方が知りたい!
思考が整理できるノートの取り方はどうすればいい??
もしそんなノート術がわかれば頭脳明晰で、しかも機転の利く切れ者になれるはずです。
そんなノートの取り方の疑問に対して、いつも通りエビデンスを元に科学的なノート術を解説をしていきます!
ノート術では「生成学習」を促せ!
今回参考にした論文のは2016年Fiorellaらの「生成学習を促進する8つの方法」というタイトルのものになります。1)
生成学習と聞くとAIというイメージがあると思いますが、新しい情報を自分なりに理解し、今までの情報を繋げて応用が効く形にするというものです。これがないと勉強もただの丸暗記になってしまい、知っているだけで役に立ちません。
よくある例として、仕事ができない人がスキルを身につけるために勉強をしたのはいいけれど、結果として物知りだけど仕事のできない人になっちゃうパターンですね。
知識を使いこなせる応用力のある人になるための勉強法を理解してノートを取らないと、ただ写しているだけ・知っているだけになってしまいます。
ですから効率の良い学習方法に沿ってノートを取る必要があるわけです。
この研究の詳細は以下のとおり。やや専門的でわかりにくいのですが、後からわかりやすく解説していますので安心してください。
- 要約、マッピング、絵にする、自己説明、自己テスト、他者に教える、想像、実演の8つが生成学習に良さそう!そして以下のように使い分けると良い
- 知識量
- 知識量が少ない初学者:要約、マッピング、絵にする、自己説明が効果的
- 知識が多いベテラン:想像、実演が効果的
- 言語的生成戦略
- 簡単な内容や、空間的ではないもの、関係を十分に理解してるものに有効
- 要約、自己テスト、自己説明、他者に教えるが効果的
- 空間的生成戦略
- 複雑な事や、まだ空間的に理解できていないこと、学ぶものに図がない時に有効
- マッピング、絵にする、想像、実演が効果的
これらを見ても「で、結局どうすりゃいいの?」と思うでしょうから、これらを応用してどんな形でノートを取ればいいのかについて徹底解説していきます。
①まず要約しよう
ノートは見開きで使い、左半分には要約を書きます。まずは覚えたい言葉とその意味を要約して記載しましょう。
たとえば今回の論文の「生成学習」について要約するなら以下のようになります。
- 原文:「生成学習:能動的に情報の意味を理解し、知っていることと結びつけること」→要約後「生成学習:自分なりにかみくだいて使いやすい形にカスタムしてから頭に保存しておく」
意味合いが少し変わってしまっていますが、このように自分なりにまとめることも要約になります。
しかし場合によっては言い換えるとマズいものもありますよね。具体的にはテストの時などは丸暗記が要求されることもあります。このような定義を厳格に覚えなければならない場合は要約とは一見相性が悪そうです。
ですが、この場合はオリジナルの文章に加え、要約した文章+重要なキーワードを抜粋しておくことで理解と厳密さを両方保持できます。
今回ならばまず、「能動的」「意味を理解」「結びつける」といったキーワードを抜粋して覚えておきます。
次に「自分なりに噛み砕いて使いやすい形に変えて理解する」といった要約をして、これも記載し覚えておきましょう。
最後に、キーワードと要約を元に意味が通る文章を作り上げましょう。そしてオリジナルの文章とあまりにも違えば修正するというのが復習の手順になります。
これによりただの丸暗記よりも芯を食った理解ができるので思い出しやすくなるわけです。
復習にノートとanki併用はアリ
この要約フェイズで記憶の定着のために間隔学習とノート術を併用するのはアリです。以前TOEICで語彙力を増やすならankiという記事を書きましたが、この中で間隔学習について解説しています。私の肌感覚としても間隔学習の記憶の定着率はダンチです。
基本的に紙のノートで学習を進めた方が理解は良いのですが、この要約のフェイズでは暗記力も一定量要求されます。よってノートに書いた要約をankiにも入れておき、クイズ形式の想起練習として併用する事はおすすめです。
なお、要約の想起練習を続けていく後からもっといい要約が浮かんでくる事があります。その際はノートにガンガン書き直してください。書き直す度に知識が洗練されていきますから、ankiだけではなくノートに書いて修正していくことを推奨します。ノートはしっかり汚してください。
②思考整理をするためにマインドマップを書こう
要約ができたところで、今度はノートの右半分にマインドマップなどで図を書いていきましょう。今説明しているノート術をマインドマップにすると以下のようなものになります。
図にする事により要約の段階では独立した情報だったものが繋がりが見えて理解できるようになるため、芋づる式に知識がヌルヌル出てくるようになるわけですね。頭の中で想像するだけでも良いのですが、これは上級者向けです。
私も図にしてノートをとる事と、要約のみとて理解具合を比べてみたのですが、初めて学ぶ知識はマインドマップや図に書き起こした方が圧倒的に早いです。なんとなく知識の繋がりを意識している人でも一度試していただければと思います。
ただしマインドマップを書く場合、知識全ての説明を書くわけにはいきません。マインドマップに書くのは単語レベル、せいぜい2~3語程度です。つまりこれらの単語の意味を理解できていないとマッピングはあまり効果を発揮しません。
よって、最初に挙げた要約を先にやる必要があったのですね。ノートの左ページには知識の要約(文章)を、そしてノートの右ページ知識の繋がりをマインドマップとして記載します。この知識の繋がりは空間的に配置することで理解をしやすくなります。逆に言葉だけで繋がりを理解するというのはかなり難しいのです。
ちなみにこの図にする事はマインドマップでなくても構いません。空間的に配置することで手順や難易度なども感覚的に理解しやすくなります。
たとえば先ほどのマインドマップを以下のように階段状に書き換えてみると、順番や難易度が感覚的に理解しやすくなります。
方法は自分の腹に落ちる方法ならなんでもよいのです。ただ、図でノートを取ることは理解においてテキストよりも脳にやさしいというポイントだけは抑えておきましょう。
このように要約とマインドマップ(図)を順番に使っていく事でよって知識を増やし複雑な関係性も理解できます。つまり思考整理ができるノートとなっていくのです。
補足:マインドマップノート術が有効な理由の科学的根拠補足
とは言っても多くの方はマインドマップや図にしてノートを取る経験がないので抵抗感があると思います。私も気持ちは非常によくわかります。ですからマインドマップを取り入れる後押しとしてこのノート術が有効な理由についてもう少し説明しておきましょう。
2009年Makanyらの研究によると、線形ノートテイキング(皆さんが普通イメージするノートの取り方。箇条書きなど)と非線形ノートテイキング(マインドマップ)を比べた結果、やはりマインドマップでノートを取った方が深く理解できていたという結果が出ています。2)
そもそも普通にノートを取る方法では脳のワーキングメモリへに対する負荷が高すぎるんだそうな。
つまり言われたことや書かれたことを箇条書きで写していくという一般的なノートの取り方は、実はめっちゃ上級者向けって事ですね。
マインドマップというと意識高い人や頭のいい人がやっているイメージでしたが、もしかしたら因果関係は逆かもしれません。
マインドマップを書くことによって思考が整理され、勉強した内容を深く理解できる事から結果的にマインドマップを書く人が頭のいい人になっているのかもしれませんね。
導入する事に特にデメリットもなさそうですし、とりあえず試してみる事をおすすめします。
③ノートを元に自己説明をしたり他人に教えよう
ノートの書き方自体は一旦これで完成になります。次にやるのは自己説明や他人に教える事です。
ノートに書いたマインドマップをみながら、それぞれの意味や繋がりを要約して解説してみましょう。たとえば、先ほどのノート術に関するマインドマップを例に解説してみましょう。
「科学的なノート術について解説するね。
まず要約をする。要約というのは自分なりに簡潔にまとめる事なんだよ。重要なことが何なのかわかっていないと要約はできないから、重要なキーワードを拾ってまとめる感じだね。要約した内容はankiにも入力して分散学習を併用するのがおすすめかな。
それが終わったら今度はマッピング。マインドマップみたいに知識の繋がりを表現するもので、言葉よりも図で空間的に整理していく方が脳の処理がしやすいんだ。初めて学ぶことや複雑なことは一度マインドマップや図にしたほうがいいね。
そしてこれらをノートに書いて完成したら、今やっているみたいにマインドマップを見ながら解説をする。知識の繋がりが悪いところや、要約でわかりにくい言葉を言い換えたり追記していくことでより応用的な知識になっていくんだ」
このように解説することができます。
ノートを使って勉強する時はただ書かれたことをなぞるのではなく、勉強前の自分や他の人に教えるつもりで解説すると理解不足の点を確認できる上により理解も深まるというわけです。これがノートを使った復習方法になります。書いたノートを読むだけとは全然違う事がお分かりいただけると思います。
頭のいい人のノートが汚い理由
この自己解説や教えるという復習の際に、途中で「ん?わかりにくいぞ?」「これはおかしくないか?」という点が出てきたり、「よりわかりやすくするためには補足情報が必要だな」と思ったらマインドマップに知識を生やす形で追記してください。
知識が磨き上げられるだけではなく進化していくのもこのフェイズです。何度か解説しているうちに「そういえばこういう風にも使える知識だな」「こういう例は身近でわかりやすいかな」「この方が覚えやすいよ」など思考が広がっていく事を経験できるはずです。
結果的に復習するたびにノートはどんどん汚くなります。スペースは無くなり、とんでもない所に線が伸びていきます。そしてこれが正解です。最後までキッチリと美しいノートは思考が伸びていません。
知識はどんどん伸びていくものですから付け足し、付け足しであなたの知識は洗練され拡散していくのです。ですから頭のいい人のノートというのはとても汚いのです。ノートはガシガシ汚していきましょう。
④想像・実演でノートを使わずに復習しよう
一応これが最終段階になります。最後はノート無しでマインドマップを思い浮かべたり、実際に講義を行っているように知識を喋り散らかします。ものを使ったり、ジェスチャーを加えても構いません。
ここまで来ると「これについて教えて!」と言われた時に即興で講義ができるレベルです。日常生活で応用が利くし、「あの知識はここで使える!」といったようにパッと出てくるようになります。
ですが当然知識に関しても繋がりに関しても脳の負荷はマックスレベルで高く、この勉強方法は最終段階になります。
ここまでくるとノートの他のページとの繋がりなど、その勉強だけでは知り得ないオリジナルの世界に繋がっていきます。ゲームで言えばラスボス倒した後のクリア後のセーブデータみたいな感じです。もう学ぶというよりも教える側ですから、ここから先はやり込み要素が入ってきます。
「あの人、すごい知識あって勉強してるよね」
と言われる人は、知識の量というよりこのレベルまで深く掘り下げたて理解している人に多いです。複雑な事をわかりやすく整理して解説してくれたらそりゃそう思うのも無理はないですよね。私達もノート術を生かしてこのレベルまで知識を深めていきましょう。
Q.ノートはipadやパソコンで取ってもいいっすか?
A.できれば紙の方がいいっすね
私もipadやパソコンで執筆をしている立場なのですが、ノートは紙の方がいいでしょう。
私の意見だけでは不足でしょうからいつものように論文を元に解説しますと、デジタル機器を使ったノートテイキングに関して2020年Allenらのメタ分析によると以下のような結果が出ています。
- デジタルと手書きの生徒の成績を比べると、手書きの生徒の方が点数が良かった!
- その理由としては、タイピングと手書きの認知的努力の違いかもしれない
- 他にもネットやSNSにアクセスできるので気を逸らすこともあるかも3)
つまり、手書きとタイピングによって理解の違いがあるし、注意散漫(勉強をサボりやすくなる)になるという二つの問題があるんじゃない?と考えられるわけです。
理解の違いについてはタイピングの方が受動的で、とりあえず記録を取るだけという姿勢になりやすいということのようです。今回挙げたノート術は全て能動的にノートを取る事を推奨するものですから、記録ではなく知識を理解するという目標であればやはり手書きにしておくのが無難でしょう。
ではapple pencil等で手書きの記録だったらどうなのか?という疑問が出てくると思いますが、これはとても微妙です。
半分大丈夫、半分はダメという感じです。ただ、私の意見や経験ベースに判断するなら推奨しません。
私もipadで手書き記録していたこともあるのですが、やはり思考のまとまりが悪く紙ノートに戻してしまいました(※サンプル数1)。デジタルが学習に対してデメリットが多い事についてはタイムロッキングコンテナの使い方の記事でもポモドーロテクニックの勉強法とデメリットの記事でも一貫していますし、勉強は極力紙媒体が良いのかなぁという気はします。
ですから、ノートはできればアナログのほうが良さそう!要約の分散学習にankiはありかも!くらいにまとめさせていただければと思います。
私の使っているおすすめ仕事道具に革のノートカバーが入っているのは知性の印象付けだけではなく、紙媒体の方が思考が整理されるという理由があります。もしまだ手帳を持っていなければ、あなたも相棒を持ってノート術を操り知性を爆上げしてみてください。
引用・参考文献
1)Fiorella, Logan, and Richard E. Mayer. “Eight ways to promote generative learning.” Educational psychology review 28 (2016): 717-741.
2)Makany, Tamas, Jonathan Kemp, and Itiel E. Dror. “Optimising the use of note‐taking as an external cognitive aid for increasing learning.” British Journal of Educational Technology 40.4 (2009): 619-635.
3)Allen, Mike, et al. “Is the pencil mightier than the keyboard? A meta-analysis comparing the method of notetaking outcomes.” Southern Communication Journal 85.3 (2020): 143-154.