あなたは顔か性格か、どちらを選びますか?
究極の選択とも言えるこの話題ですが、心理学的には性格から選ぶ事をおすすめします。
ただし、これは「性格悪い人と付き合うと大変だから」という理由ではありません。性格がいい人を選ぶと、結果的に顔も選ぶことになります。
これは一体どういうことなのか?その理由について、心理学の論文を元に人の性格と外見的魅力について解説していきます!
人間の容姿は情報によって歪む
今回参考にするのは2007年GW Lewandowski Jrらの研究で、「性格は色々回って異性の身体的魅力を変化させるぞ!」1)といったタイトルの論文になります。詳細は以下の通り。
- 性格がいい人・普通な人・悪い人という性格に関する情報を与えられると、それぞれの性格特性に合わせて外見的魅力が変化した!
- 性格が外見に与える影響は、元の外見の良し悪しは関係なかった
- いい人は友人として好ましく、いい友人はパートナーとして好ましく、パートナーとして好ましい人は身体的魅力も高いと認識する過去のモデルの正しさが再現された
というわけで、良くも悪くも性格によってイケメン美人かという判定まで変化してしまうようです。性格が良いからモテるのではなく、性格が良いと容姿そのものまで良く見えるわけです。つまり、性格が良い人はイケメン美人に見られやすいのです。
以前ナイスガイの科学で「いい人がモテないはウソ!」という話をしましたが、性格はモテに関して内面的な理由だけではなく容姿にも影響しているようです。
「美女と野獣」の野獣は王子様に戻る必要はなかった
性格が良いことで報われ、ハッピーエンドになった話としては「美女と野獣」という物語があります。娘は野獣のやさしさに触れる事によって愛することとなり、最後は美青年の王子の姿に戻ってハッピーエンドというストーリーです。
このエピソードを心理学的に解説すると、娘が野獣のやさしさに惹かれて愛した時点で心理学的には外見を含めて魅力が激アゲしている状態です。娘サイドからすると「野獣だけど優しいからいいわ」ではなく、ぶっちゃけ「ワイルドでイケてる、好き好き」くらいに感じているわけですね。
そんなワイルドな相手との恋が盛り上がるのは大変結構なのですが、この話はクライマックスでいきなり野獣は王子様に変身します。この時娘サイドがうまく頭を切り替えられないと、「オイオイどうした?誰だこのナヨっとしたのは」とタイプの違う相手に戸惑うリスクすらあったのです。よって、ハッピーエンドに水を差すようで申し訳ないのですが、心理学的には「別に野獣のままでもなんら問題はなかった」と言えるでしょう。
ただし、野獣サイドからすると獣のままではQOLの問題があるでしょうから、やはり人間に戻れたことはハッピーエンドという事にしておきましょう。幸い、娘さんの方も適応能力が高いタイプだったみたいですし。よかったですね。
あなたのパートナーはあなたが思っているほど家の外ではモテない
現実では、この美女と野獣現象が無駄な心労を招いてしまうことがあります。
たとえば、「夫(彼氏)が他の女性に手を出されたらどうしよう!」という心配をして相談される事があります。それに対する私の本音はたいてい同じです。
「(え?あなたの旦那(彼氏)さん、そんなに手を出されるほど魅力的には見えないのだけれど‥)」
写真を見せてもらってもなんだかでっぷりしていたり、どう見ても他の女性から手を出される心配は少ないように見えるのですが、皆さんパートナーが知らない所でモテてしまう事を異様に心配しているのです。これはいったいなぜなのでしょうか?私の審美眼がおかしいのでしょうか?
この不可思議な現象も今回の研究結果から説明ができます。相談者はパートナーの素晴らしいところをたくさん知っているのです。知っているからこそ、より外見も非常に魅力があると感じてしまい、「みんなの目を惹く希代の代のモテ男」と感じてしまうのです。
ですから、誠実なパートナーをお持ちの皆さん、安心してください。残念ですがあなたのパートナーはあなたが考えているほど家の外ではモテません、たぶん普通くらいです。パートナーが誠実だったらそんなに心配しなくて大丈夫ですよ。
性格が悪い事は恋愛でのマイナスが大きすぎる
美女と野獣とは逆に、性格が悪いパターンはただ悲惨です。性格が悪いだけではなく顔まで悪いと思われてしまうわけですから。どちらかといえばこちらのインパクトの方が大きく、モテに対して性格の悪さは非常にネガティブに働きます。
つまり、「黙っていればイケメン」「喋ると残念な子」というのは性格面だけではなく、本来恵まれているはずの外見にもマイナス査定をガッツリ食らっている事になりますから、見た目に反してなかなか恋が始まりません。
よくある例として、「あれだけイケメン美人で恋活・婚活しているのにパートナーができないのは、何らかの問題があるのでは?」という憶測をされる人がいますが、これは正しい可能性があります。性格面のせいで内面だけではなく外面も低く評価されている可能性が高いでしょう。
この対策として、もし必要であれば過去に書いたコミュ力アップと感情知性の科学や空気が読めない自分を卒業する方法などの記事などを参照していただければと思います。
美女と野獣だって心優しい野獣だったからハッピーエンドになったのです。アレが迷惑行為を行う困った野獣だった場合は、シンプルに猟友会を呼ばれて後半はマタギの話になっていたでしょう。見た目が良かろうが悪かろうが性格は重要です。
では、性格がものすごくいいのに顔がタイプではないのはなぜ?
じゃあ性格さえ良ければいいのか?もちろん限度があります。
厳しい事を言えば、性格がものすごく良いのに顔がタイプではないというのは性格の下駄を履いたうえでも外見的に無理ということなので、要求される魅力のレベルとはかなり開きがあると考えられます。そもそも清潔感がないなどの理由になるとやはり難しいものがあり、この場合は性格で選んでもうまくいかない可能性が高いでしょう。
ですが、顔だろうが性格だろうが極端な話をすれば無理になるのは当然です。顔がいくら良くても、働かずにお小遣いを要求し、渡さないと怒り出したり、周囲に迷惑をかけるような連中はご遠慮願いたいでしょう。顔で選ぶと言っても、法律を守る等最低限の社会性は身に着けている事が前提です。
同じように、外見も最低限のレベルまでは高めないと箸にも棒にもかかりません。ただし、あなたは芸能事務所に入るわけでもありませんし、クラスで一番モテる人間になる必要もありません。やる事はちゃんとお風呂に入るとか、定期的に美容室に行く等、最低限で構わないのです。
それらを行ったうえでもし、それ以上に外見的魅力を高めたいなら科学で顔ゲーを攻略するや、女性の魅力を増す赤の科学、匂いの科学などの記事を参照してください。
「性格が良い人」の意味をはき違えてない?
いい人で、かつ外見的魅力を高める努力をしているのに魅力的に見られないのなら、考えられる可能性がもう一つあります。そのすごくいい人というのは、「誰にでも言いなりになる断れない人」という意味だったりするかもしれません。
それだと都合のいい人ですから、悪い人ではないかもしれませんが性格の良い人とは異なります。相手の理不尽な要求に対して断れない、言い返さないのではなく言い返せない人に魅力を感じるかと言えば、そうではないでしょう。
では、イケメン美人になりモテるためのいい性格とはどのようなものか?という考察に入りましょう。
イケメン美人になるための性格とは「友達になりたい性格」
外見的魅力を底上げしてくれるような性格のいい人とはどんな性格でしょうか?
これは非常に難しい問題です。人の考えや好みには多様性がありますから、一言でいえば「人それぞれじゃないっすかね」となってしまいます。
しかし、この論文では
- いい性格だと、いい友人として好まれる
- いい友人はいいパートナーとして好まれる
- いいパートナーは容姿が魅力的だ
- よって、いい性格の人は容姿が魅力的なはずだ!
というモデルで性格が外見に影響するのでは?と述べられています。つまり、魅力的に見える性格というのはどんな人とと友達になりたいかを考えてみればいいという事になります。もっと言えば、「どんな人と友達になりたくないか」を考えて、それを避けて自分の良さを生かせばいいのです。
極端な考え方をすると嫌われやすい
まず避けるべきこととして考えられるのは、極端な考え方ばかりする人は精神的にも不安定になりがちですし、コミュニケーションでうまくいかない事がありますから対策した方が良いでしょう。
たとえば、「みんな平等であるべきだ」という考えを持つ人がいたとしましょう。これ自体は素晴らしい考え方ですよね。
ですが、極端に平等であるべきという考えに囚われてしまい、「飲み会では誰が何と言おうと1円単位で割り勘をするように求める」「余剰資金は全て恵まれない人に募金するのが義務だ、と考えを押し付けてくる」「仕事を振り分けた後は自己責任なので絶対に手伝わない」など相手の意思を無視して押し付けるため、行き過ぎると社会生活で問題が出てきます。
好ましいと思われる特性も極端だと問題です。「やさしさ」も行き過ぎれば「押し付け」「成長や自立を妨げる」「おせっかい」「ありがた迷惑」になりかねません。多くの場合でバランスが取れており状況に応じて調整できる性格が好まれるのは自明でしょう。
バランスの取れた思考にするにはCBTがおすすめ
この極端な考えを回避するには、認知行動療法(CBT)が良いでしょう。
認知行動療法とは、極端なものの考え方や硬直した考え方に対し、バランスの取れた思考に書き換えていくようなものです。その極端な考え方の手掛かりとして、認知の歪みというものがあります。
たとえば、先ほど挙げた「みんな平等であるべきだ」という考えも数ある認知の歪みの一つであり、これは「べき思考」と名付けられています。2)この思考に囚われすぎると自分の考えを周囲に押し付け、謎のマイルールに縛られてイライラするなど、社会性がない状態になりかねません。
これが「まあ平等だったらいいけどね、現実はそうじゃない事もある」くらいに力が抜けているとどうでしょう。フェアで他の人の考えを尊重するとてもポジティブな特性になります。
ただし、自分の考え方の歪みに気づいてバランスがとれるように修正していくというのは容易な事ではなく、繰り返しのトレーニングが必要になります。
専門家の助言があるのが一番ですが、自分で修正していくならデビッドDバーンズ先生のいやな気分よさようならあたりがよろしいのではないでしょうか。考え方のバランスが取れると、余計なストレスも減りますしね。
共感能力を高めるにはコールドリーディング
このバランスの取れた考え方に加えて、共感能力が組み合わせられると強力です。
先ほどのバランスの取れた考え方というのは柔軟性があり現実的にもうまくいきやすいのですが、その一方で現実的でドライだと思われてしまう事があります。
「みんな平等であるべきだ!」
「まあ平等なら素晴らしいと思うけれどね」
下の意見の方が現実をよく理解しているかもしれませんが、達観しているというか冷めたように取られてしまう事があるのです。この温かみを補うには共感能力です。共感能力とは、相手の感情を推測し、言語化したり相応しい行動を取る能力のことです。
人の感情や考えを推測するには、コールドリーディングの手法がおすすめです。コールドリーディングとは、占い師などが使うテクニックで相手の心を読んだかのように見せかける話術の事です。相手の心は読むのではなく推論をするものです。人は同じ状況なら、結構同じことを考えているものですから。
コールドリーディングや、人の感情を推測したりする方法については人の心を読むコールドリーディングやコミュ力アップと感情知性の科学あたりの記事を参照にしていただければと思います。
蛙化現象で考える性格と顔の関係
最後に、蛙化現象というものが一時期話題になりました。この蛙化現象について今回の論文を元に考察してみましょう。
性格が悪いと王子様から蛙になる
蛙化現象の原因は色々あるのですが、その一つとして性格が露わになった瞬間に外見的魅力まで変化している事が考えられます。
たとえば、優しくていい人だと思っていた彼氏が店員さんに偉そうにする、態度が悪いなどを目撃するとどうなるでしょうか。今まで優しいという性格で下駄を履いていた外見的魅力がアラ不思議。あっという間に外見にもマイナスの査定が入り、「おや?ちょっと待てよ。この人性格だけじゃなくて顔もイマイチじゃね?」「ワイルドだと思ってたけど、お風呂に入ってないだけじゃね?」という評価に変わってしまうのです。
性格だけではなく外見の評価も低下してしまうのですから、魅力が一気に下がるのも当然です。王子様から蛙に変わってしまう事にも納得ができますね。蛙化とは、なかなかうまく言った人がいるものです。
蛙化現象を経験する方にも原因がある
ですが、もしこの蛙化現象を頻繁に経験するようなら違った見方をすることができます。もし蛙化現象を経験した人に認知の歪みがあるとしたら、どんな風に考えていると思いますか?
「私の前で疲れた顔を見せるべきではない!」
「私の前ではミスをせず、常に完璧であるべきだ!」
もし絵本の中の王子さまなら、完璧ですから階段を踏み外す事もSUICAのチャージを忘れる事もないでしょう。しかし現実の人間は違います。疲れた顔をすることもありますし、ミスをする事だってあるでしょう。私達には長所もありますが、短所だってあります。絵本のような理想化されたものを求めるというのは現実的ではありません。
ですが、自分のなかに「べき思考」があるとそれを許すことができず、何かあるたびに気に入らない周囲の人間をすぐに蛙に変えてしまう事になります。この王子様か蛙かという両極端な2択しかない認知の歪みの事を「全か無か思考」といいます。その人の中では100点だと思っていた人でも、少しでも失敗したら0点になるのです。
つまり、蛙化現象というのは相手の問題ではなく、些細な事で蛙化現象を体験する人の考え方に原因がある可能性があります。
先ほども言ったように、バランスの取れていない極端な考えは歓迎されにくいため、周囲に押し付けると外見的魅力を下げてしまう事にもなりかねません。もし思い当たる節がある方は、先ほど紹介したCBTをやってみるとあなたの魅力を内面からも外面からも底上げしてくれるかもしれませんよ。
引用・参考文献
1)Lewandowski Jr, Gary W., Arthur Aron, and Julie Gee. “Personality goes a long way: The malleability of opposite‐sex physical attractiveness.” Personal Relationships 14.4 (2007): 571-585.
2)いやな気分よ、さようならコンパクト版: 自分で学ぶ「抑うつ」克服法. 日本, 星和書店, 2013.