この記事三行まとめ
・TOEICで難しすぎると感じるなら、語彙の即答力に課題あり。効率よく暗記するには「anki」というソフトウェアがおすすめ。原理としては「間隔学習」というものを利用しており長期記憶保持に効果あるという研究結果が出ている。
効率のよい暗記方法が研究されているのね。
TOEICを勉強していて難しすぎると感じますか?
それは語彙力が不足しているかもしれません。‥正確には、すぐに思い出せるほど定着していないからです。
その理由と解決方法について科学的根拠を元に私の行った勉強法を解説します。
TOEICは時間との勝負、ためらったら負け
TOEICを勉強している方ならもうご存じかと思いますが、ListeningよりもReadingの方がスコアが伸びにくいです。
なぜかというと、多くの人が全部解ききれないからです。「えーっと、このイディオムの意味はなんだったかなー」なんて思っていると、あっという間に終わってしまいます。
ですから、ある程度語彙力がある人にとっては「難しい」ではなく「時間がない!」という感想になります。
もし難しく感じるならば、「語彙が定着していない状態」と言えますし、時間がないと感じる人は「語彙力の即答力が足りない状態」です。TOEICは語彙力勝負になります。
400点から600点レベルを目指すとしても語彙の即答力が必要
「いやいや私は本当に難しくて解けないんです、だって稼ぎどころのリスニングもあまり取れないし」
と思う方もいるかもしれません。お答えしましょう、その人にこそ語彙の即答力が必要です。
なぜなら、リスニングの肝であるPart3,Part4は文章を素早く読んで待ち伏せすればガンガンスコアが伸びるからです。(スコアを取るだけであれば)全部聞かなくてもいいのです。問題文を先読みしてキーワードを待ち伏せする。これが400点の初心者が履歴書に書ける600点台を目指す最短ルートです。
例えば、Part3,4では下のような問題をリスニングが始まる前に先読みします。
Q.Why is the man calling?
1.To hear how to move
2.To change the order
3.To make a payment
4.To cancel his reservation
そのうえでリスニングを聞きます。
~~~Excuse me, I would like to cancel my hotel reservation. And~~~~
先読みさえできていればよっしゃ!よくわからんけどreservation出てきたわ!とばかりに4を選んで終了です。後はわからなくてもOK。いや、良くはないんだけどね。少なくとも点数は取れます。リスニングはこれの繰り返しで、先回りして待ち伏せ。これができれば600点は一気に近づきます。
問題は、この時に悩んだりわからない単語があって先読みのリズムが狂うと終わるということです。リスニングは待ってくれませんから数秒で問題を読まないといけません。「えーっと」なんて悠長な事を言っているようでは先読み→待ち伏せなんてできません。
ですから、600点を目指すにしても語彙の即答力はマストなのです。
間隔学習で効率の良い暗記をしよう
というわけで語彙を増やすために暗記をしたい時は「anki」というサイト・アプリを利用しましょう。
これはオンラインの単語帳のようなもので、復習のベストタイミングを自動でアルゴリズムが判断して効率よく長期記憶化できるというものです。テストや試験勉強にはうってつけですね。
なお、この記事執筆現在(2024年2月)でAndroid版ならアプリは無料、iphone版では3500円とやや高いですが、ブラウザでは無料で使用可能です。iphoneで使うなら無料のブラウザ版でも十分でしょう。
「間隔学習」の科学的なデータは蓄積されてきている
なぜこのankiをおススメするかというと、間隔学習に対して結構エビデンスが蓄積されてきて「マジで効果ありそうだね」となってきているからです。
間隔学習というのは「一気に完璧にするんじゃなくて、間を空けて何回も復習しようぜ。ほんでもって、その感覚はだんだん空けていこうぜ」という方法です。
2022年Yuanらの論文でもメカニズムの仮説と共に「短期間に一気に詰め込むタイプの勉強って長期記憶にはあまりよくないかもしれない」みたいな事を言われています。1)確かに一夜漬けの勉強をすると数年後の受験でさっぱり使えないですよね。
実は私も学生の頃勉強をしていて、
一回忘れないと覚えない。忘れたところからもう二回勉強すると覚える
という感覚がありました。一気に詰め込まず、完璧にしなくてもよいという感じで勉強していましたから、非常に効率的な学習をしていたと言えるでしょう(熱い自画自賛)。
実際身になるのかという点でもオンラインでの間隔学習というのは効果があるのか?という事を調べた2019年Phillipsらの研究があります2)。
結果としては当然知識はついたのですが、間隔学習グループはより覚えておくことができ、気軽に参加できるため修了できた人も多く、自信も高まる傾向にありました。
勉強方法はオンラインにもかかわらず対面と同じか、それ以上の効果があったというのです。ここで面白いのが、「実際の行動が変化した」という事です。つまり、丸暗記だけではなく実践的なスキルに繋がったということです。
英語学習以外にスキル定着にも使える
特に最後のポイントは重要です。学生の頃は丸暗記でも何とかなりますが、社会に出るとスキルに変換できるかが肝になります。
ときおり仕事ができない人が勉強すると「物知りな仕事ができない人」にクラスチェンジしてしまうという悲劇が発生してしまう事があります。この点、間隔学習は実践的かも!と言えるかもしれません。
使い方としておすすめなのは、本の知識をankiに入れて行動を変化させていくというものです。本の内容をankiに入れて復習していくと行動に変換しやすく、「ただの物知り」から脱出しやすいです。
私の経験では特にコミュ力を上げるために効果的で、即答で気の利いた返しをできるようになる使い方はおすすめ本にて使い方を紹介していますのでそちらもどうぞ。
参考書や単語帳をankiに入れていくルートが鉄板
暗記量が必要な場面では無類の強さ!
私もこのankiをTOEICの英語学習に応用したことがありますので、経験談込みでお話しします。
このTOEICの目標スコアを取るための目安の勉強時間がある3)のですが、私が最初に受験する際ankiを利用した単語学習により、その標準の6割ほどの時間でスコアに到達する事ができました。
金のフレーズの「わからないところだけ」ankiに入れろ!
私がAnkiに入れたのはみんな大好き「出る単特急 金のフレーズ」のみ。銀のフレーズというのもありますが、語彙力だけであれば金のフレーズ一本で良いなと思います。
これを解いて、わからなかった&即答できなかった単語を片っ端からankiのデッキに入れていきます。
注意点としては、金フレ全部をデッキに入れる必要はありません。私たちは効率を求めているのですから、復習の度に既知のフレーズなど相手にしている場合ではありません。それは効率を著しく下げる行為であり、余計な事をする≒敗者への道です。
私たちは労力を最低限にしつつ、友達と飲みに行き、恋愛をし、人生を楽しむ時間を確保しないといけないのです。単語帳とは自分式にカスタマイズしていくからこそ効率が良くなるのであって、そういった工夫こそがウイニングロードに繋がっています。万人に当てはまるようなデッキはありません。
これでリーディングもリスニングも見た瞬間&聞いた瞬間に「了解!」となるくらいの瞬発力が身についていきます。さあ、あなたもウイニングロードを走り始めましょう(自己啓発)。
Q.ankiで単語帳を自分で作るのって面倒くさくないですか?
「えー?わざわざオンラインの単語帳に自分で入力するの?手間だし余計時間かからない?」
と思う方もいるかもしれません。お答えしましょう。そっちの方が最終的には時間がかからないからやっているんです。
私が標準の勉強時間より4割も少なく済んだのは私が余程優秀か、間隔学習が効率的だったかのどちらかです。私が優秀だった可能性も無くはない。無くはないけど、ちょっと考えにくい。よって、私は間隔学習の賜物だと思います。
金フレをankiに入れておけば電車だろうがどこでも復習できますし、なにしろ瞬発力がつきます。
繰り返しになりますが、リーディングだろうがライティングだろうが瞬発力です。とにかく金フレの単語だけはノーウェイトで回答できるくらいの瞬発力を間隔学習で身に着けてください。そうすればビジネスで英語が使用できるかどうかはともかく、TOEICの語彙で困ることはほとんどないはずです。
まとめますと、TOEIC対策で何をやったらいいかわからない人はまず金のフレーズを覚え、公式TOEIC Listening & Reading 問題集をやってください。
そして金のフレーズで土台ができてから、公式問題集を何周もしてください。さまざまなTOEIC対策の問題集がありますが、公式の名は伊達ではありません、リスニング対策も基本この二つでOKです。
公式問題集は最新版と、できればもう一つ前の版をひたすら解きまくり、先ほど紹介した先読み戦法もできていればListeningで400点は楽に狙えるはずです。
というわけで残りの問題はReadingですが、これはなかなかくせ者です。
Part5,Part6対策に「文法問題 でる1000問」もankiに入れる
金フレと公式問題集だけでもそこそこ戦えますが、TOEIC初心者の方はリーディングを強化するために「TOEIC L&Rテスト 文法問題 でる1000問」もやっておきましょう。
これも先ほどから激推ししている金フレの著者、TEX加藤さんの本ですね。TOEIC対策と言えばこの人。TOEICはTEX加藤さんを信じて突き進んでください。
このでる1000問で対策できるのはリーディングのPart5, Part6。ここで要求されるのはパターン認識です。
Part5.6はよく読んだら解ける問題が多いですが、あなたはこれからPart7で吐くほどの長文を読まなければなりません。文法問題などでグズグズしている暇はありません。見た瞬間に解ける問題をパターン認識するためにこの本を使用しましょう。Part5,6はそれぞれ10分以内で解き終えるようにしてください。
たとえば、前置詞は見た瞬間に解けるパターンがありますので、それもankiに入れて秒で解けるようにしておくとリーディングスコアが伸びやすいです。このパターン認識を鍛えるのにはでる1000問が近道です。
「え~?全部読めばわかるのにわざわざPart5とPart6のためだけに専用の問題集をやるの~?」
と思う方もいるかもしれません。はい、Part5.6のためだけに専用の問題集をやる価値があります。
なぜなら、part5,6は小細工が通用します。一方、リーディングで一番伸びにくいのがPart7の長文問題で、残念な事にPart7に小細工は通用しません。ガチンコです。
ですからやるべき戦略は一つ。小細工が通用するPart5.6に特化した対策を行い、そこで稼いだ時間をPart7に費やす。つまりPart5.6対策がそのままPart7のスコアを伸ばすことにもなるのです。当然ここでも即答力が要求されます。
だから、とりあえず履歴書に書きたい、500点〜700点台をウロウロしているといったTOEIC初心者は英語勉強ではなくTOEICの勉強をしてください。
英語力をつけるには時間がかかりますが、特化した対策をすれば短期間でTOEICの点数は伸びます。対策をすれば600点の英語力でも700点が取れたりする。これがTOEICです。TOEICのテストが上手くなっているだけですが。
つまり、とりあえず基準のスコアさえクリアすればOKだというあなたは「文法問題 でる1000問」を買ってPart5,6の対策をしてください(自分で言っておいてなんですが、日本の英語資格の本末転倒ぶりって半端ないですよね)。
即答力がついたらあとは公式問題集を多読!多読!ディクテーション!
語彙力がついたらその先はひたすら多読、多読、ディクテーションしかないですから、間隔学習にも限界はあります。多読や問題集を解いたりするときはポモドーロテクニックなどを併用してさらに効率を高めてください。
速読が求められるTOEICにおいて「何とかがんばれば思い出せる」というレベルの暗記では役に立たないのは自明で、「文章を読む、聞いてすぐに理解する」というスキル向上、特に初期の暗記の物量が必要なフェイズではankiが大いに役立ったと言えるでしょう。
世の中の試験のほとんどに要求されるのが暗記。応用に進む前の土台作りや記憶力の物量でなんとかなるテストであればTOEIC以外にも使える頼もしいツールだと思います。anki webなら現在のところ無料ですし、スキマ時間にも効率よい学習ができるでしょう。
引用・参考文献
1)Yuan, Xuechen. “Evidence of the Spacing Effect and Influences on Perceptions of Learning and Science Curricula.” Cureus 14.1 (2022).
2)Phillips, Jane L., et al. “Effectiveness of the spaced education pedagogy for clinicians’ continuing professional development: a systematic review.” Medical education 53.9 (2019): 886-902.
3)A Teacher’s Guide to TOEIC Listening and Reading Test
https://elt.oup.com/elt/students/exams/pdf/elt/toeic_teachers_guide_international.pdf