インデックス投資で失敗した理由を心理学ブログで解説

心理学

私が今やっている投資戦略は一言で済みます。余計な事はしない。以上です。

失敗の結果学んだことは「3ない」を徹底する事

私の投資戦略では3ないを掲げています。

  • 個別株に手を出さない。
  • アクティブファンドに手を出さない。
  • 高い手数料を払わない。

つまり「インデックスファンドをつみたてる」、これだけです。手垢にまみれたくらい王道ですね。

ですが、私も過去には個別株に手を出したり、ロボアドバイザーなどにも手を出したことがあります。ところが今買い増しているのはインデックス投資だけです。

どの商品を買っているかは出しませんが、その理由はイジワルではなくよくわからないまま人のやり方をなぞると失敗ルート直行のため、あえて出していません。なぜなら私がブレーキをかけられずに失敗したからです。

ただ、ヒントとしては本屋に行って投資信託の本を10冊くらいパラパラっとめくってください。みんな同じような事を言っていて、2つくらいまで絞り込めるはずです。私が買っているのもたぶんそれです。

なぜ私がこの新鮮さにかけるつまらない戦略を採用するに至ったかについて、私の失敗経験をベースに心理学的に解説していきます。私の失敗から学べるものがあれば嬉しく思います。

ダニングクルーガー効果:私もあなたもプロではない

まず大前提として、あなたは機関投資家など投資のプロではないはずです。

ですが、人間は愚かなものです。「自分もちゃんと勉強すれば他の人を上回れるはずだ!」「ここで投資の能力を伸ばせれば、引退までに大きな柱になる!」「他の人は自分ほど勉強していない!」などした事を考えるのです。

これをダニングクルーガー効果といいます。ダニングクルーガー効果についての論文を引用すると、2016年Mahmoodらのシステマティックレビューでも情報リテラシー能力が低い人はほとんどの場合自分の能力を過大評価する傾向にあったと結論づけています。2)

この事を踏まえた上で落ち着いて考えてみましょう。私よりも頭の良いプロが知識と時間をかけて投資を行っているわけですが、その人たちに私が勝てる理由って何かありそうですか?ミジンコレベルでもありそうですか?

え?私?投資に関する本を3~4冊読みました。以上です。経験?ありませんよそんなもの。

落ち着いて考えれば勝てるわけがありません。

そして、これは多くの場合あなたにも当てはまる事なのではないでしょうか。あなたもした事を考えた際には、「自分も大丈夫かな?ダニングクルーガー効果じゃない?」と一度冷静になってみてください。

では、もし冷静になれなかった場合どうなるのか?続きをご覧ください。

天才投資家が語る失敗談

私は本を数冊読んで完全にわかった気になったので、肥大化した自信とともにこのまま突き進む事になります。よせばいいのに。

ここで幸いだったのは、後から考えても本のチョイスは良かったという点です。これが傷口を最小限に抑えてくれました。つまり、ここから先の失敗は本ではなく私の若さによる判断力の欠如、知識の応用力の無さによるという事です。

みなさんも「知識をつけたからといって、すぐに判断力が手に入るわけではない」ということは肝に銘じておいてください。たとえば、あなたが大谷翔平選手のフォームやトレーニング方法を知ったからといって大谷選手になれますか?なれませんよね。それは大谷選手について詳しい一般人です。ただし、一流選手のトレーニングを知り、時間をかけて練習と経験を重ねれば能力を高める事ができますよね。それと一緒です。特に投資初心者の方は勉強直後に自信が爆上がりするので注意しましょう。

なお、書籍としては特に下記の二冊は読んでおいて損はなかったと思います。そして本のチョイスが良くてもこのような失敗をするのだなという事を疑似体験していただければ。

私はPER・EPS、ROE・ROAなどについて知識を得たため、「みんな銘柄分析をしないからな」「市場平均を上回って投資家と呼べるのである」となぜか上から目線で有価証券報告書を読みました。

ベースはインデックス投資、サテライトで個別株を買う、これもそこまで間違ってはいません。そして私が選んだ銘柄はすべて右肩上がりとなっていったのです。これはいけるとばかりに、面白がって個別株を買い増していきました。

今思えばそれがいけなかった。

コツコツドカンの狼狽売りで後悔

この記事を書いているのは2024年8月ですが、つい最近までは何を買っても利益が出るような状態でした。そして一気に暴落したのはご存知の通りです。

私が投資を本格的に始め、インデックスファンドのつみてたてと同時に個別株の分析(笑)や売買の判断(失笑)をしていた2019年頃も最初は調子の良い時期だったのです。

そう、実は私だけではなくみんな儲かっていた時期なのです。ですが、初心者ながらに天才投資家(苦笑)を自負していた私はもちろんそんな事には気づきません

「自分の判断はことごとく当たっている」「投資信託も売却して個別株に移行しよう、バフェット様も分散投資は無知がやるものって言ってるし」くらいに思っています。どの銘柄もコツコツ右肩上がりだからです。研究者が小躍りするほど典型的なダニングクルーガー効果ですね。

そして、2020年。コロナショックの影響で全てが一気に大きなマイナスを食らう事になります。なまじ自信があった分狼狽する事になります。

おやおや?天才投資家ではなかったのですかな?w」

と煽る声が聞こえてきそうです。後悔と共に恐れ慄いた私は全ての有価証券を一度売却しました。インデックス投資も含めてすべてです。しかしその後株価が半年ほどで回復し、その後の勢いが止まらなかった事は皆さんご存じのとおりです。

それにしてもなぜつみたてのインデックスまで売ったのか。

確証バイアスにやられる

後から比べてわかったことですが、利益が出ていた期間だけを見ても私の個別株売買よりもインデックス投資の指数(TOPIXやS&P500)の方がハイパフォーマンスだったのです。確かに私の売買で利益は出ていたのですが、何も考えずTOPIXやS&P500連動型のインデックスファンドだけを買っておけばそれ以上のリターンがあったのです。

つまり天才投資家は頭を使って自分のリターンを下げるというセンス抜群の判断をしていた事になります。「下手の考え休むに似たり」なんて慣用句がありますが、この言葉って実は間違いなんですよ。休んでる方がマシなんです。

しかし確証バイアスというものが働くとこれらの情報は無視されます。2020年Rollwageらの確証バイアスに関する論文では、自分の決定と一致した結果は大きな証拠として取り扱い、特に自分の決定に自信がある時に顕著とあります。3)

私の例ではダニングクルーガー効果が発動して自分が天才投資家だと思っています。この自信があるという状況は、確証バイアスを引き起こしやすい状況になっているのです。つまり初心者は少しでも利益が出ると「やはり私は天才か‥」となりやすい状況が揃っているわけです。

そしてこの件からわかる事は、バイアスに飲まれやすい素人が市場平均に勝つことは非常に困難だということです。

一番リターンが良かったのはiDeco

この失敗の最中でも、唯一利益が膨らんだものもあります。

それはiDecoで買った投資信託です。iDecoはスイッチングはできますがほったらかしにしていました(というより忘れてました)。そして2024年現在では最も利幅が大きくなっています。理由はもうお分かりですね。何もしなかったからです。

プロでも市場平均に勝てない

「それはあなたが素人だからでしょ。私はプロ並みの知識をつけるつもりだから、それなら勝てるんじゃないっすか」と思うかもしれませんが、残念ながらこれもNOです。

チャールズエリスの敗者のゲームで述べられている事ですが、プロの平均≒市場平均です1)。これはプロの動かす金額が大きいからです。つまりプロが売ったり買ったりすると自分の動きに合わせて市場が動きます。プロは言ってみれば自分自身と戦わなければならないのです。鏡とじゃんけんするようなものですね。

つまりそこらにいる平均的なプロではダメで、人件費のたっかいアクティブファンドのコストを吸収して平均を上回れるのはトップオブトップだけです。

対してインデックスファンドは手数料激安でプロの平均を取れる、言ってみればプロの判断にほぼタダ乗りできるとも言えます。よって「生半可なプロには頼らない、自分の判断にはもっと頼らない」という私の結論に達します。

ですから私はインデックスファンドを買い続けているわけです。

積み立てnisaは自分の意思を介入させない

以上の失敗談から余計な事をしない、というのが私の基本投資スタイルになります。

余計な事とは個別株を買わず、インデックスファンドを買うというだけではありません。

「ちょっと最近円安だから積み立てるタイミングを計ろう」とか「ちょっと株価が下がってきたからナンピンで買い増そう」といった判断も余計な事です。

「え?その判断は正しいんじゃないの?」と思うかもしれませんが、これも素人vsプロの戦いになります。「最近株価がすごく下がっている」と思ったとしても、そんな事はプロは百も承知です。そもそも素人であるあなたが「市場平均として割安だ」と思っているのに、なんでプロが買わないのでしょうか

これらの判断をしようとした瞬間、鬼つよのプロとの戦いになります。つまり私たちが「これから上がる、下がる」と判断して市場を上回る事はムリゲーだと思った方が現実的です。

その点つみたて投資枠というのは実に良いシステムでして、設定だけしておけば自分の意思を介さずに買い増しをすることができます。国も結構考えてくれていますね。

靴磨きの少年の話のようにはいかない

株式売買のタイミングを測るエピソードとして、投資には靴磨きの少年という有名な逸話があります。「投資に興味がなさそうな靴磨きの少年まで株を話題にしている。これはバブルが近い、今が売り時だ」と判断し難を逃れたというものです。

このことから、私たちは売り時や買い時を示す簡単なサインがあり、それを見逃さなければ勝てると思ってしまいがちです。

この逸話が本当かはさておき、少なくとも今そんな単純なサインで売り時がわかるのであれば証券会社が放っておかないはずです。同様に「投資に興味のないうちのオカンが投資って言い始めた。これは靴磨きの少年だ!」とあなたが思いついたということは、たぶん他の人も思いついてます。現に、靴磨きの話はXに行けばいくらでも出てきますから、あっという間にみんなに共有されます。みんなが思いついているという事は市場に織り込み済みなのではないでしょうか。

このように一つの成功ストーリーを元に「絶対的な成功法則」があるかのような幻想を持つことは危険でしょう。あなたの判断で市場の動向を予測するのは極めて困難です。というよりは、株価がどうなるか正確にわかる人なんて世界に誰もいないのです。

プロ相手には「ナッシュ均衡」で互角にもっていく

よって、素人の自分に判断をさせないということが重要だと私は考えています。

この時に使われる考え方がゲーム理論における「ナッシュ均衡」というものになります。

プロの土俵に乗った瞬間カモにされる

たとえばじゃんけん勝負で考えてみましょう。

相手はじゃんけんのチャンピオンで、こちらの考えを高い確率で読んできます。相手は「私はグーを出します、あなたはお好きなものをどうぞ」と心理戦を仕掛けてきました。あなたが最も勝つ可能性を高めるにはどうすればよいでしょうか?

私は「ランダムに出す手を選ぶ」事をおすすめします。心理戦を受けて立つのは戦略として最悪です。

時計を見て、秒針が1~20にあればグー、21~40にあればチョキ、41~60ならパーなどとにかく自分の意思が絡まなければ何でも良いです。ランダムに選んでいる限り相手の強みを潰し、相手がどんなに強かろうと五分五分に持ち込むことができる上に、相手は何をしようがこれ以上勝率を高める事はできません。このお互いベストを尽くしている状態をナッシュ均衡と言います。

相手からすると、自分の得意分野である心理戦で勝負する事を望んでいます。煽ってでも自分の勝率の高いところに引きずり込むのが勝負の定石だからです。しかしじゃんけんの手をランダムに出すという、こちらにとって最適な戦略取り続ける限り相手はただの人になります。

このように素人がプロと五分五分に持ち込む、これが投資であればインデックス投資であると私は思います。そしてその投資は、自分の意思とは関係なく積み立てる事によって完成されます。

ところが、「今は株価が安い・高い」と読み合いをする事や、「随分損失が出てるみたいっすねww」といった感情の揺さぶりに反応してしまう事によって簡単にナッシュ均衡は解除されてしまうのです。

後悔しないための戦略

つまり、投資のコツはいかにこの自分にとって有利なナッシュ均衡を保てるかであると私は思います。NISAのつみたて方法やおすすめ商品なんて、どの本を見てもだいたい同じことが書いてあります。にもかかわらず、どうしてみなさん投資がうまくいかないかというと、このナッシュ均衡を維持し続ける事が非常に難しく、維持する戦略が甘いからです。

ですから、つみたて設定だけして自分で判断しないという戦略を取る事によってナッシュ均衡を維持し続ける方法を私は好むのです。これは自分にとって有利な場所から絶対に動かないための戦略なのです。

Q.でも、バフェットは分散投資してないよね?

確かにウォーレンバフェットは「分散投資は無知がやるものだ」みたいなことを言っています。

しかしバフェットは「株を買う時は小論文書けるくらい調べて考えないとダメだよ!」「(特に個人投資家は)見逃し三振はないからチャンスが来るまで待て!」みたいな事も言っているわけです。

つまり、バフェットほどの知識と判断力があれば分散投資はいらないかもしれませんが、私達には分散投資が良い選択だと私は判断しているわけです。バフェットじいさんが言うように「分散投資は無知がやるもの」であり、「私は無知である」と自覚しているからですね。

私のダニングクルーガー効果の話でもわかるように、みんな株は無知にもかかわらず結構自信過剰なうえにノリで買ったりしますからね。情報や判断が難しいと、人はノリで判断するようになる傾向があります(利用可能性バイアス、置き換えバイアスなどが関係します4)5))。

これらのバイアスや短絡的な思考にいかに打ち勝てるかが賢い判断のカギになります。まとめられたものとしてはダニエルカーネマンのファスト&スローがまとまっていて良書ですので参考までに。

引用・参考文献

1)Ellis, Charles D., 鹿毛雄二, 鹿毛房子. 敗者のゲーム. 東京, 日経BP日本経済新聞出版本部, 2022, ISBN9784532359119.
2)Mahmood, Khalid. “Do people overestimate their information literacy skills? A systematic review of empirical evidence on the Dunning-Kruger effect.” Communications in Information Literacy10.2 (2016)
3)Rollwage, Max, et al. “Confidence drives a neural confirmation bias.” Nature communications 11.1 (2020): 2634.
4)Kahneman, Daniel, 村井章子. ファスト&スロー : あなたの意思はどのように決まるか?. 上. 東京, 早川書房, 2012, ISBN9784152093387.
5)Kahneman, Daniel, 村井章子. ファスト&スロー : あなたの意思はどのように決まるか?. 下. 東京, 早川書房, 2012, ISBN9784152093394.

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