気を使いすぎる人がめんどくさいと言われる理由と正しい気配りの極意

気遣いをする人 心理学

気づかいができる人ってステキですよね。

気を使えるという能力は素晴らしいもので、接客のプロになるとその気づかいでお金をいただけるくらいです。
それくらい気づかいというのは強力なスキルです。チートですね。

しかし一方で、気を使いすぎてめんどくさい人と思われたり、嫌われてしまったりすることもあります。
気を使っているのに理不尽な話ですし悲しくなるのも当然ですが、ふと思うわけです。

気づかいで評価をされる人と、めんどくさいと思われてしまう人。この違いは何なのでしょうか?
もしこの違いがわかれば、気を使う能力を生かして最強キャラになれるのではなかろうか?

今回は気を使いすぎる人がなぜめんどうだと思われてしまうのか。そして効果的な気づかいの方法とは何なのかという事について、いつものように心理学のエビデンスを元に解説していきます!

めんどくさいと思われるのは何かしないと不安だから

そもそも、どうして他人に気遣いができる人が嫌われたりするのでしょうか?普通に考えればむしろ歓迎される可能性の方が高いはずです。

その理由は気遣いの動機によるものが大きいです。これが気配り上手な人と、めんどくさいと思われる人の違いになります。

やさしいけれど、気を使わないと落ち着かない

たとえば相手に敬意を払いつつ、かつ「今こうしたら喜んでもらえるかな」という気遣いができれば「なんていい人なんだろう!」「気が利く人だな」と相手は感動するでしょう。
これが気配り上手な人です。

しかし、ここで気遣いの動機が違う場合を考えてみましょう。たとえば「気の利かないやつだと思われたくないな、嫌われたくないから気を遣おう」と考えた場合どんな行動になるでしょう?

こういった人は「嫌われたくない」という不安感に駆られて行動していますから、行動指針が「何かをやってあげたら安心する」というものになります。人のために行動するというのは素晴らしいのですが、逆を言えば「嫌われるのが不安だから何かしないと落ち着かない」のです。

気を使いすぎな人は自分の不安のために行動してしまう

ですが、ここが世の中の難しいところなのですが場合によっては何もしないことが正解の事もあります。

失敗例1:気遣いするタイミングを外してしまう

自分の事は自分でやりたい人もいるでしょうし、プライドや他の理由があって頼まないのかもしれません。

たとえば、何から何まで助けられたら相手は
「自分は足を引っ張っているなぁ‥」
「借りを作ると落ち着かないなぁ‥」
と自尊心が傷ついてあなたと距離を取りたくなるかもしれません。

ですから自分の嫌われたくない気持ちだけではなく、相手の立場になって考えて考える必要があります。

失敗例2:気遣いへのお返しが負担になる

相手を助けたり気を使うと良い感情を持ってもらえると思うかもしれませんが、何かしてもらうという事は時に負担になることもあるのです。

これについてロバート・D・チャルディーニ博士は影響力の武器にて「返報性」という項目で人を動かすトリガーとして挙げています。3)
具体的には、人間は社会的生物ですから何かをしてもらうと「お返しをしないと落ち着かない」「早く借りを返さないと」と感じるため、本来不釣り合いなお返しをしてでも安心しようとしてしまうのです。

つまりあなたの気遣いはうまくやらないと「お返しをしないと」という返報性によって相手への強制力として働きます。

失敗例3:相手に合わせすぎて信頼を失う

他にも、相手に嫌われたくないからという理由で気を使うと、自分の意見を言わずにただ迎合するだけになってしまうとかえって信頼を失う事にもなります。

過去記事で書いたように反対意見でも正直に言う方が信頼されるという話もありますし、相手におもねるような、機嫌ばかり取ってくるような態度は相手をいらだたせる事になります。

失敗例4:偽善と思われやすい

さらに、相手によく思われたいから気を使っているという気持ちが伝わると、偽善として捉えられる可能性が高まります。

良い事をしているのに理不尽な話ですが、人を助けたり良い事をしていても批判されることもある。これが現実です。
ですが、それを回避するための善行する時の作法があるのです。

この詳しいテクニックに関しては偽善のエビデンスを元にして書いた偽善の何が悪い?良いことをしても偽善者と批判される心理学的理由の過去記事を参照していただければと思います。

以上のように自分の不安や状況を読まずに気を使うことは失敗に繋がりやすいです。
根本にあるのは自分の不安への対処であり、相手への配慮や状況がおりこまれにくいため、結果としてめんどくさい人と思われたり嫌われてしまうのです。

せっかく気を使っているのにこれはあまりにももったいない。

気を使いすぎな人は最強キャラの一歩手前

気を使いすぎる人というのは最強キャラの素養はあるのですが、惜しいことにちょっとだけ自分の不安を回避するという方向に向かってしまっています。
そのため気使いのタイミングを外してしまっている事があるのです。

このせいでせっかくの配慮にも関わらずめんどくさい人という印象が形成されてしまいます。

しかしがっかりする必要はありません。
気を遣いすぎの人というのはパズルのピースで言えば「完成直前で一個見当たらない」という状況に近く、ちゃんとそのピースを特定してはめてあげれば見事な一枚絵が完成するのです。

では、気を遣いすぎな人はどうすれば温かさと能力を兼ね備えた最強キャラになれるか、欠けていた最後のピースを探しにいきましょう!

結論:気遣い+敬意=最強キャラ

みなさん礼儀正しくて丁寧な事良い特性だと思っています。そんな人は友達としても上司としてサイコーですよね。

一方で「温かく優しいという特性は弱さと捉えられたり、能力がないと思われたりとネガティブな側面があるんじゃない?」という心配もあります。確かに優しい人はなめられたりする事がありますからね。

この心配が本当に正しいのか確かめてみましょう。今回参考にするのは2015年Porathらの論文で、「丁重で礼儀正しいと報われる」というタイトルになります。1)
詳細は以下の通りですが、あとでわかりやすく解説していますので安心してください。

  1. 人の印象は「温かさ」と「能力」で90%以上が決まる。しかも、普通は片方が良いと片方が悪い印象を抱く。例えば有能なら冷淡、温かい人なら能力が低いという印象を持つ。
  2. でも礼儀正しい人は別。温かさと能力両方を持ち合わせていると判断される
  3. 礼儀正しい人はそのおかげで人脈は広く大きく、しかも中心人物となる事が多い。そのためサポートや良い案件、情報、キャリアチャンスなど色んなものが舞い込みやすい。それは「こういう人にはうまくいってほしい!」と応援されるため。
  4. 礼儀正しさは相手への敬意や協調性といったものからなる。キャリアチャンスや昇進には敬意と協調性がゲームチェンジャーとなる

というわけで、相手に気配りができる温かさを持つ人はネガティブどころか最強キャラに片足を突っ込んでるわけです。
礼儀正しく相手に気を使える人というのはどこでもうまくやれるし重宝される、トランプでいえばジョーカーのような存在と言えるでしょう。

しかし、気を使いすぎな人と礼儀正しい人いうのは共通点が多いですが微妙に違います
この点を勘違いしないように、次の項で学んでいきましょう。

気を使いすぎな人が最強キャラにクラスチェンジするためには

論文によると礼儀正しい人の要因として協調性と敬意が大事とありますから、相手を自立した人間として捉え、そしてさりげなく相手に敬意を持って接することです。
この両方が大切になります。

この呼吸をつかむだけで、気を遣いすぎで嫌われてしまっていた人も他者に配慮ができる礼儀正しい人という温かさと能力を兼ね備えた最強キャラと認識されやすくなるのです。

とは言っても「敬意と協調性?そりゃそうだろ。そんな当たり前のことじゃなく具体的に使えるテクに興味があるんだよ。はよせい」と思うでしょうから、リクエスト通り具体的にどうすればいいかを解説していきましょう。

気を使いすぎな人はまずこの7つの行動を取り入れろ!

今回の論文では礼儀正しい人が行う行動に対して以下のように記載されています。

  1. 感謝を示す
  2. 注意深く聞く(傾聴ですな)
  3. 謙虚に質問する
  4. 他者を認める
  5. 功績を分かち合う
  6. 笑顔が多い
  7. 非言語のジェスチャーをする1)

これらの行動が礼儀正しさを表しているとされています。確かにどう見てもいいヤツで好感度爆上がりですよね。

ここで面白いのは「他者を助ける」が挙げられていない点です。

つまり助けるというのは一つの結果にすぎないのです。重要なのは相手の言うことを傾聴し、状況について質問し、相手に安心感を与える。
そして必要だと判断した時にサッと配慮したり手伝うという事なのです。やればいいってもんではありません。

この傾聴や状況把握が甘かったり、相手の感情を理解しない状態で闇雲に助けようとするとめんどくさい人と認識されやすいのです。
ですから気を使いすぎて苦労している人はまず相手の言う事をじっくり聞きましょう

そして相手の立場を理解した上で相手への気遣いや助けを行うと、ポイントが絞れるためこちらが費やすコストも軽くなります。
つまり仲間をたくさん助ける事ができるということです。

その結果、あなたの気づかいの行動に対して「この人は温かくて有能な人だ」という印象を持つのです。

この相手の気持ちや感情を推測する能力を高めるには、過去記事で書いた人の心を読む能力コールドリーディングが役立つでしょう。
コールドリーディングとは占い師が好んで使う話術で、相手の事を言い当てるテクニックになります。
身につけるとかなり強力ですから、あなたも他者の気持ちや考えを読む能力を身につけておきましょう。

能力と温かさを兼ね備える人はトップギバーに近い

さらに、礼儀正しい人が持つ「やってもらったことに感謝を示し功績を分かち合う」といった行動はアダムグラント博士の言うギバーに近いです。

ギバーとは文字通りギブする人、他者に与える人です。

このギバーにも2種類あり、トップギバーボトムギバーがいます。2)トップギバーは成功を納めるのですが、対してボトムギバーは食い物にされやすく、ボトム(底)に沈んでしまいます。

そして礼儀正しい人というのはこのトップギバーの特性を持ち合わせていると言えるでしょう。

利益を独り占めせず、分かち合い、他者の貢献を認め、感謝を示す。
さらに有能な印象というおまけまでついていますからどんなチームからも引っ張りだこです。
結果として良い案件やチャンスに恵まれる機会は爆増するというわけです。

対してテイカーというタイプの人は、短期的には利益をあげられても長期的には続きません。

テイカーは無礼な人と共通点が多く、「オレがオレが」というタイプ自分の利益しか考えないような人になります。
そのような人は最初は良くても、しまいにはどこのグループからも締め出され、情報もチャンスも協力も得られず失脚することになるでしょう。
ましてやギバーのように応援されることなどあるはずがありません

もし誰かを助けたり与える事に疲れてしまったような人は、ボトムギバーで食い物にされやすい傾向があるかもしれません。
そんな人はアダムグラント博士のGIVE & TAKEや過去記事のなぜ寛容だけではいけない?人間関係はしっぺ返し戦略が良い理由を参考に、ボトムギバーを回避しトップギバーを目指してみるというのは一つの解決策になるでしょう。

無礼だったり気を使えない人は楽勝で詰む

「俺は応援なんてされなくても能力があるからいいもんね」

というような態度の人も世の中にはいますが、情報が入ってこないというのは人生において想像以上に厳しいです。
これは新しいスキルや知識が得にくいという意味だけではありません。

具体的にいえば、人間関係や仕事上のトラブルへの対応力に関しては他者からの情報がめちゃめちゃ重要になります。
噂話を耳打ちされる事で危機回避ができるという事も珍しくありません。タレコミってやつですね。

たとえば「お前の部門は無くなるから人員整理が始まるらしいぞ。だが◯◯では戦略を立てられる経験者を欲しがっているみたいだな」と、危機的状況になりそうでも情報を早く得たことにより沈みゆく船からの素早い脱出が可能になります。

ここまでは誰にでもある事かもしれませんが、礼儀正しくトップギバー気質の人は「だから紹介してやるよ/うちに来いよ」まで話が進んでしまう事があります。
何もしていないのに危機回避してしまうのです。

また「あの人最近彼女とうまくいっていないらしいから、自分の事を含めてその話はしない方がいいぞ」といった些細なことでも人間関係で触れてはいけない事柄を回避できます。
これにより人間関係が円滑になり、空気の読めるコミュ力が高い人という評判が加速されます。

うまく気を使える人は時間が経てばたつほど評判に磨きがかかっていきます
どんな世界でも情報と人脈は身を救うのです。

最後に、今回の論文の著者Porath教授はThink CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略であるの著者ですね。
リサーチしてて「礼儀正しさが大切ってどこかで見たな~」と思ったら彼女の本でしたね。

私はまだ読んでいないのですが、私の読書予定リストにはしっかりぶち込まれていました。まあリストが消化不良気味なのが問題なのですが‥。

私もこの本をこれからゆっくり消化しますが、他にもみなさんのおすすめ本がありましたら問い合わせページあたりから教えてもらえたら嬉しいです。

引用・参考文献

1)Porath, Christine L., and Alexandra Gerbasi. “Does civility pay.” Organizational Dynamics 44.4 (2015): 281-286.
2)Grant, Adam M.. GIVE & TAKE: 「与える人」こそ成功する時代. 日本, 三笠書房, 2014.
3)影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか. N.p., 株式会社 誠信書房, 2014.

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