面接の手ごたえが当てにならない心理学的理由

メガネの女性 心理学

 面接って合格基準がわからないから不安ですよね。

 私も話が盛り上がって「こりゃいただきだな」と思ったのに落ちてしまったり、逆に「ろくに話がないまま終わってしまった‥手応えがない、これはアカン‥」と思っていたら次の日速攻で合格の電話が来たり。なんなの?ツンデレなの?この理由はいったい何なのでしょうか。

 なぜ面接の手応えは当てにならないのか、また注目すべきサインは何なのか。いつものように科学的根拠を元に学んでいきましょう。

面接の合否と態度に関する研究

第一印象がいいと確認作業になるのね

 Journal of applied psychologyに掲載されたTW Doughertyらの研究では、第一印象が良い人には面接での態度も違うし、その第一印象に沿った行動を取るようになるよという報告がされています。1)つまり「君いい奴だよね?やっぱりね。君有能でしょ?やっぱりね」と第一印象で決めつけてロクに人を見なくなる傾向になるということです。

 この研究では第一印象が良い応募者に対しては以下のような特徴がみられました。

  • 面接官がポジティブな態度で好意的な声を使う傾向にあった
  • 面接官が自分の会社を売り込み、求人情報を説明する傾向にあった
  • 面接官の全体の質問数が減った。Yes/Noで答えるような質問や、回答を深堀りしたり探るような質問が減った

採用したいと思う人には確認する必要がない

 採用面接ですから本来はその人がどんな人間か、能力や適応しそうなスキルは何かなど聞かなければならないのですが、第一印象が良い応募者にはろくに聞かないというのが面白いですね。確かに最初から合格する事が決まっているのなら真剣に聞く必要はないわけです。

 この現象に関して「確証バイアスが影響しているんじゃない?」とTW Doughertyらは考察しています。確証バイアスというのは一言で表すと「自分の思い込みを証明する証拠だけを探す」といった人間の傾向です。人間はバイアスというものを使ってラクしようとするんですね。私たちは自分に埋め込まれたバイアスについて知ることで、聡明な判断をすることができます。

 例えば、山田さんという一人の学生を面接するとします。そして面接官Aさんは最初から山田さんは優秀だと思っていて、Bさんは山田さんは大したことないと思っているとします。

 Aさんは山田さんの頭がいいという思い込みがあるので、「評定Aが半分以上だ」「学内で表彰されたことがある」などの情報が目に入ってきます。一方Bさんは山田さんの頭が悪いと思っているので「評定Cもある」「表彰も最優秀ではない」などの情報に目が向きます。どちらも正しい事を言っているのですが、事実が一緒でも自分の思い込みにより事実の切り抜き方や感想が全く異なるという事です。

 面接でも確証バイアスが働いているとすれば「この人は有能でいい人だ」という第一印象という確認する事が中心になります。さらに「自分(面接官)は人を見る目がある」という思い込みがあるならば、よりあなたの第一印象を正当化する方向に動くでしょう。どちらにしても第一印象が良いとかなり有利という事ですね。

色々質問されるのは迷っているからかも

 逆に色々質問されてしかもうまく答えられると、「こっちのスキルとか深堀してきて、すっげえ興味持たれてるじゃん。しかもいい感じに話せたぞ!」と好感触にとらえがちです。

 確かに質問にスパっと答えらえる事自体は良いでしょう。一方で、根掘り葉掘り聞いてくるのは「この人、本当に大丈夫なの?」という事を確認したいからとも考えられます。

 もちろん、面接で聞く事があらかじめ決められており、数値で評価し判断するような客観的な方法を取り入れている所もあるでしょう。ただ、そんな評価をしている所が多いかと言えば‥評価者の胸先三寸で合否が決まるところの方が多いように感じます。

【経験談】採用をする側の評価は全然信用できない

 ここから先は逆の立場、つまり採用する側の経験を述べていきます。

 自分で言いますけど、私って心理学に詳しそうじゃないですか。エビデンスとか言ってるし、人の本質とか見抜けそうな気がしますよね。私もそう思ってました。

 しかしこれがふたを開けてみると、もうびっくりするくらい自分の判断って当てにならない。面接した時の印象と入社してからのパフォーマンスって「ホントに面接しました?」ってくらい当てになりません。「まぁいいんじゃないですかね」くらいに思った人がSSRのスター社員だったり、その逆も然りです。

 結局自分の判断能力を過信して面接していただけですから、完全にピエロ状態。よくわからないまま選考し、よくわからないまま内定を出しちゃう。これが面接官を経験してわかることです。

 応募者だって準備をします(私だってしました)。よほど突拍子もない事を聞いてだましうちでもしない限り、応募者が短時間の面接で猫をかぶるなんて楽勝ですよ。

 というわけで、面接官なんて結構「なんとなく」みたいなもので決めてるっぽいぞという話でした。ならば、その「なんとなく」に対策をすればいいだけですよね。

面接は第一印象が勝負、対処法を知っておこう

人間にバイアスがあるなら利用しろ!ってこと

 今までの話を聞いて、実力やポテンシャルであまり判断してくれないなんて随分ひどい話だと思うかもしれません。ですが、人間にはこういった思いこみや思考・判断の偏りが必ずあります。その思い込みの一つとして、「質問が少ないのは良い第一印象に引っ張られているからかも!」という話でした。

 もちろん判断基準や質問する判断は人それぞれで、質問が少なければ確実に合格しているという話ではありません。迷惑な話ですが、面接官の機嫌が悪くて口数が少なく落ちてしまうという事だって十分考えられます。その結果は動かせませんが、ここは前向きに今までの話をひっくり返して考えてみましょう。

 「人には思い込みがあり、第一印象に引っ張られて行動する」のなら、こちらにとって都合の良い思い込みをしてもらえばよいということですよね。少なくとも、第一印象を悪くして都合の悪い思い込みをされる事だけは避けなければなりません

ただ覚えた内容を噛まずに読み上げるだけではダメ

 第一印象を良くするための対策方法は以前記事にしていますので以下を参照してみてください。まず第一印象を良くするために雰囲気の身に付け方喋り方、またその練習方法などを理解し技術にしておく事は最初の一歩目として重要です。これらを身に着けおけば、面接どころか仕事・出会いなど様々な所で活用できます。

 すべてを一度にやるのは大変ですが、第一印象を良くする技術を少しずつ一緒に学んでいきましょう。非常に潰しの利くタイパの良い技術の一つになると思いますよ。

引用・参考文献
1)Dougherty, Thomas W., Daniel B. Turban, and John C. Callender. “Confirming first impressions in the employment interview: A field study of interviewer behavior.” Journal of applied psychology 79.5 (1994): 659.

タイトルとURLをコピーしました