なぜシークレットサービスだけが嘘を見抜けた?嘘をみやぶる能力とは

虫眼鏡を持つ子供 心理学

 「この人が本当のことを言っているか知りたい!」そう思う事はありませんか?

 ですが、まさか「すみません、この嘘発見器をつけて椅子に座ってもらえますか?」とは言えませんよね。

 ウソ発見器とはいかなくとも、できれば本人に知られる事なく嘘を見抜くポイントがわかっていれば心強い‥そう思いませんか?

 それでは、今回も研究論文を元に嘘を見抜くコツを考察していきましょう。

嘘を見抜く能力とは、非言語のサインをキャッチできること

言葉に注目しがちなプロは成績がいまひとつだったのね

 今回参考にするのは2003年MG Frankらの論文になります。1)
 まず大前提として抑えておかなければならないのは「人は嘘を見抜く能力はほとんどない」という事です。実はこの主張は割と固くてですね、二択でも60%を超える正解率はほとんど期待できないと言われています。確実に心を読めるというのはSPY FAMILYのアーニャ以外はフカシだと思っていいでしょう。

 全体としては人間の嘘を見抜く能力なんてその程度のショボさなのですが、今回は「嘘を見抜ける確率が高いグループもあるんじゃね?」という事を調べてくれたわけですね。確かにその人たちの特徴がわかれば、嘘を見抜くコツも解明できそうです。ちょっと意外な結果は以下のとおり。

  • シークレットサービスだけが嘘を見抜く能力があった!
  • なぜ見抜けたかというと、シークレットサービスは非言語の情報(しぐさなど)を手がかりにするためかもしれない。
  • 言葉(話しすぎる、話が矛盾している、話を逸らそうとする)よりも非言語(声が緊張している、アイコンタクトを避ける、作り笑顔をする、ボディランゲージ)を、あるいは両方を手がかりにした方が嘘を見抜く確率が高かった
  • 年齢は若い方が嘘を見抜く能力が高い傾向にあった

 というわけで、他の職業だと嘘をほとんど見抜けなかったのだけれどシークレットサービスだけがうそを見抜けたわけです。

ウソを見抜く時は振る舞いや行動に注目しろ!

 この理由としては上記の通りで、非言語的なサインを手掛かりにしたためです。シークレットサービスの主な仕事は大多数を相手に要人を守るのが仕事ですから、仕事で求められるのはたくさんの人をパッとみた感じで「コイツは怪しい!」と感じ取れる能力です。そのため外見から判断する識別能力が鍛えられたからでは?と考察されているわけです。

 逆に、他の職業は言葉をもとに判断することが多いですから、言語的なサインに依存しがちだということですね。客観的に判断を下す事は大事ですが、嘘を見抜けるかという局面だとこれが仇になっているような感じですね。

ウソを見抜く能力は意識して鍛えないと落ちていく

 さらに、若い人の方が嘘を見抜く可能性が高い傾向にありました。これは、「年齢が高くなると現場に出ない(管理運営側になる)からじゃね?」と考察されています。嘘を見抜く能力というのは一度身につけたら終わり!ではなく、筋トレみたいなものでサボっていると衰えていく可能性が高いですね。あなたが嘘を見抜く能力を身につけた後も、日頃からの試運転やメンテナンスはしておいた方がいいでしょう。

 しかし矛盾したことを話すなんて明確な嘘のサインっぽく思えますが、この手がかりよりも「なんかそわそわニヤニヤしている」といった非言語のサインを手がかりにした方が見抜きやすいっていうのは面白い所ですね。

ウソを見抜く方法を使う時は「自分の中」でのみ使うべき!

他の人に話すのではなく、自分の中での推測の一つ使うのがおすすめ!

 ただし、非言語の手がかりというのはウソを見抜くのに有効だとは言っても証拠にはしにくいというのも事実でしょう。「お前は嘘をついている、なぜなら声が緊張しているからだ!」では、ちょっと周りも納得しないでしょう。一回二回では信頼性も低いですし。

 ですから、このデータというのはあくまで「自分の中の推測」でのみ使うべきだと私からは提案したいです。

信用できる人か判断する材料にする

 たとえば、私は信用できる人かできない人かを判断する材料の一つに使っています。この時に一回では決めず、何度か話した時に非言語の嘘のサインが目立ち、それが事実がどうか時間をかけて確認できれば「嘘をよくつく人」「自分を大きく見せようとする人」という傾向が掴めるはずです。信用ができる人を見抜きたければ罪悪感を見ろというデータもありますから、この傾向を言葉以外で判断するというのも効果的でしょう。

 つまり、言っていることとやっている事両方を見て食い違いがある時は、やっている事を信じて判断するという事です。やっている事で判断する、というのは私のポリシーでもあるのですが、この研究からも言っている事ではなく行動や振る舞いから判断するというのは正しいようです。

 不幸を引き寄せる不幸体質の直し方でも書きましたが、信頼を置く人を間違えると不幸体質になります。その傾向にある人は付き合う人にこのような食い違いサインがないか注目するのも効果的でしょう。

 他者を信じるというのは美しい行動であり、「疑うくらいなら信じる方がいい」なんて言います。ですがこんな二択を迫る詭弁に流されていけません。落ち着いてよく考えてみてください。ウソは信じず、本当の事だけを信じた方がいいに決まっています。信じるか疑うかのどちらかしかないように見せかけるのは典型的な詭弁であって、うそをつく人が極論で話をすり替えているにすぎません。

 必要に応じて時に疑う、時に信じる。これを日本語で「状況判断」と言います。このような詭弁に流されて思考停止してはいけません。(この手の詭弁に対する防御法を学びたい人は推奨本の書評も参考にしてください)

信用は置くべきところに置こう

 人間の信用というのは非常に重たいものでして、信用を適切に置かないとツケは自分自身や周囲の大事な人に跳ね返ってきます。スティーヴン・D・レヴィットも「ヤバい経済学」でプロでも状況によっては八百長もインチキもするといった事を述べています。2)

 ですから、その疑う判断基準として「非言語のサイン」を読み取る練習をしていくと良いです。「あの時あなたはこう言っていた、だからあなたが犯人だ!(ババーン)」みたいな矛盾を突く名探偵式の嘘を見抜く方法は現実世界ではあまり効果的ではないようなので。フィクションよりリアルの人の方が言葉によるうそがうまいと言えるのかもしれません。

 一方で、世の中にはすぐばれるようなウソをついてしまう人もいます。いくらかウソに触れていくためにも、自分の活動範囲を広げて遊んでおく事はストリートスマートを鍛えるのに役に立ちます。

 声のトーンや、ふさわしくない笑顔(ニヤニヤする)そわそわするなどは特徴的でもあるので「この人、なんかヘンじゃね?」と動作をチェックしながら会話を進めていくと嘘を見抜く精度は上がるでしょう。

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引用・参考文献

1)Frank, Mark G., and Thomas Hugh Feeley. “To catch a liar: Challenges for research in lie detection training.” Journal of Applied Communication Research 31.1 (2003): 58-75.
2)Levitt, Steven D., Dubner, Stephen J., 望月衛. ヤバい経済学 : 悪ガキ教授が世の裏側を探検する. 東京, 東洋経済新報社, 2006,

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