
あの、私の知り合いなんですけど…何もしない人がいるんですよ。
仕事も最低限、恋愛はしたいけど行動しない。苦手なものを避けているっていうか…

うーん、それは人それぞれだからなぁ。
…もしかして、その人はあまり幸せそうじゃないってことかな?
だとすれば、好ましい状況とは言えないよね

よくわかりましたね!?実はそうなんです!
挑戦しないわりにストレスも溜まりやすいみたいでいつもカリカリしてます。
こういう人ってよくあるんですか?

ありますあります。
じゃあ今回は、挑戦しない人が短期的にも長期的にもどうして苦しいのかということについて心理学とエビデンスから解説しよう。
最終的にはどうなるかと、一応対策も解説するからな

お願いします!
挑戦しないとシンプルに生活満足度が下がるぞ!
固定マインドセットは挑戦しにくい上にハッピーになりにくい

挑戦しない人は固定マインドセットを持っている可能性がある。
これは前向きにならず、困難を克服する気力が萎えやすく、おまけに人生でハッピーさを感じにくいんだ
2025年Yuanらの青少年のマインドセットを対象とした研究によると以下のように述べられています。
- 成長マインドセットと生活満足度には正の相関があり、固定マインドセットとは負の相関があった
- 苦痛の認識(自分にはコントロールできない、圧倒されるような感覚など)は生活満足度を低下させるが、成長マインドセットが高いとその悪影響は緩和された
- その理由は、成長マインドセットがあると困難を成長の機会ととらえるからっぽい1)

なんですかそのマインドセットっていうのは

自分への考え方みたいなものだな。
この考え方には二つあって、成長マインドセットと固定マインドセットがある。
まず成長マインドセットは失敗を「成長の機会だ!」と考える。
一方固定マインドセットは失敗を「自分の限界」と考える。
だから固定マインドセットの人は失敗すると自分にがっかりしてポッキリ心が折れてしまう

えぇ…?
固定マインドセットの人は最初からうまくいくと思っているということですか…?

そういう傾向にあるな。
成長マインドセットはうまくいかなくても「ここがうまくないから練習しよう」「工夫が足らん!」「今度は負けないぞ」と成長していく事を楽しめる。
一方、固定マインドセットは失敗≒自分の無能さのように感じるからそもそも挑戦すること自体をやめてしまうんだな

挑戦することもしなくなる?
…じゃあ絶対成長しなくなるじゃないですか!!

そうだよ?
普通は失敗を乗り越えて成長していくことで「苦手があってもなんとかなるもんだな!」という感覚が芽生えてくるものだが、固定マインドセットの人にはその感覚が薄い

自分の限界と向き合わないために挑戦から逃げても、心の奥底では「自分は無能なんじゃないか…」という意識が追いかけてくる。
おまけに事実として新しいものや苦手に挑戦しないと、本当に能力が身につかない。
本当は無限の可能性があるのに、自己成就予言※で本当にその通りになってしまう
※自己成就予言:根拠のない思い込みに沿った行動をしてしまうことで、本当に思い込みが実現してしまうこと

キッツ…
挑戦しない人の末路「人生に失敗がないと、人生を失敗する」

この挑戦と失敗を避けることに関して、精神科医の斎藤茂太先生のこんな名言がある
人生に失敗がないと、人生を失敗する

その心は?

適度に挑戦して失敗しておかないと、その末路では人生全体を失敗するということだ。
たまにはしくじる事もあるだろうし、失敗して痛い目を見る事もある。
だがたいていのものは挽回可能で、むしろ失敗のおかげで成長したり、大惨事になる前に軌道修正できる。
あなたも私も人生1周目でしょ?攻略wikiもないんだから、ある程度試行錯誤しながらレベル上げをするしかないんだよ

たしかに「人生1周目だからこれは避けられなかったな」ってことありますあります!
一度経験しておけば次から同じ失敗をしないようには気をつけられますもんね。
でも、挑戦せず逃げ続けていると軌道修正も成長もできないから、行動や人生そのものがヘンな方向に進んでしまっていても直せないということですね!

その通り!
挑戦しなければ失敗もしないという事実は一見魅力的に見えるけど、軌道修正や改善のチャンスがないという意味で手堅く人生を失敗できる方法とも言える。
よく考えれば大したことない失敗なら、失敗を織り込み済みでトライすればいい経験になるし、うまくいかなくても成長や軌道修正のチャンスを得られるんだよ。
一歩踏み出す勇気を持つにはエビデンスを元に書かれた過去記事勇敢の科学も参考にしてみてほしい
挑戦できる人は不快感を成長のサインと考える

挑戦できる人になるための結論はこれだ。
成長したけりゃ不快な事にもチャレンジしてくれ

はい出ました精神論。
若いうちは苦労しろみたいな話でしょう?嫌ですねぇ、こういうの

長い付き合いなのに今だに私のことをわかっていないのか?
スピリチュアルや精神論を言うキャラじゃなかろう。
不快感を成長のサインと考えると、挑戦する意欲を保てるんだ
2022年Woolleyらの成長と不快感に関する研究では以下のように述べられています。
- 成長には不快感が伴うことが多い上に、成長のメリットは後にならないとわからない。そのくせ苦労のコストはすぐにかかる
- だから人間は恐れを感じる情報に対して見てみぬフリをしてしまう(ダチョウ問題)
- 実験の参加者に不快感を成長のサインと解釈してもらうと、意欲が高まりやすかった
- ただ、本当に避けた方がいい有害な不快感もあるから気をつけて!2)

ええと…不快感を求める方が頑張れるってことですか?
不快だったら長続きしませんよ、意味不明じゃないですか

不快を成長と考えると、進んでいる感覚があるから意欲が高まるんだ。
新しいものや苦手なものに挑戦する時はほとんどの場合不快感がある。
自分のお気に入りや慣れ親しんだものから離れなければならないからな。
だが成長してもすぐに結果が出ないから、つらいだけの期間があるため挑戦中に心が折れてしまう

…でも、不快感=成長という認識にすると「今まさに成長している!」と感じられるから挑戦する意欲が続きやすいってことですね!
不快感を成長しているサインとして考えると本当に成長できるんですね!

そう言ってもいいだろう。
人間は不快に感じるとその情報や現状を見て見ぬふりをする。
これをダチョウ問題という、ダチョウは脅威があると頭を砂に突っ込む習性があるんだな。
不快を成長と捉え直すことは、現実や情報を直視することを促すからダチョウ問題を解決する手段の一つになるんだ

固定マインドセットで挑戦しないのはダチョウが砂に頭を突っ込むのと同じ…ってコト!?

挑戦しないことが機能しているならいいんだ。現実逃避になるとマズいだけでな。
世の中には逃げた方がいい状況と、成長のために不快感に身を晒す必要がある状況がある。
現実を見た上で逃げたほうがいいか不快感と成長を取るか決めることが大事だな

適度な不快さが大事なんですね!
ところで、逃げた方がいい状況っていうのは…?

この論文でも不快感はやめるべきサインである場合もあると述べられている。
不快感を求めすぎて心身を壊してしまっては元も子もないからな。
体力もメンタルも、人によって強さには違いがある。
自分の無理しない範囲で、不快感を取る時も余力を残しておいた方がいいということだけは覚えておいてくれ
まとめ
適度な不快感は成長のサインだ!
挑戦する前から諦めている人に伝えたいこと

最後に、挑戦する前から諦めている人がいる。
私の周りにも「私にはそんな仕事できません!」とか「自分から好きな人に声かけるなんて無理です!」って言う人がいる。
もちろんその人の人生だから選択の権利は本人あるが、非常にもったいない話だ

それだけチャンスが少なくなっちゃいますもんね

そうだ。それに加えて「今はできないけれどこれからできるようになる」という機会も失ってしまうんだ。
自転車に乗ることだって、練習してやっと乗れるようになっただろ?
仕事だって同じだ。それに新入社員の頃は先輩がすごく見えるが、自分が5年目になると思っていたより大したことないのがわかる。
異性と話した経験がなくても、マッチングアプリで5人くらい会えば慣れる。
たいていは挑戦にビビりすぎだ。経験してみればそんなものなんだよ

でも、なんとか挑戦してもまだ何の失敗もしてないうちから諦めちゃう人もいますよね?

それもすごく可能性を狭めてしまっている可能性があるよな。
確かに失敗はイヤだし怖い。でも失敗しない為には挑戦をやめるしかないんだ。
大谷翔平選手だって「ボールぶつかったら危ない、空振りこわい。スポーツきらい」とか言って家に引きこもっていたらMLBでMVPは取れなかっただろう。
才能は鍛えて使ってナンボ、使わなければ腐るだけなんだ

じゃあ私も挑戦し続けていけば才能が開花するかもしれないって事ですか?

その可能性は十分にある!
たまに環境と素養がガッチリハマった時に別人のように変わる人がいるからな。
こればかりはやってみないとわからないんだが、色んな事に手を出すとその可能性を高めることはできるだろうな。
ビジネスでよく言われることだが、とにかく打席に立ってみることだ。
意外なところで化けるところは、私もたくさん見てきた。可能性を狭めない事だ

よ~し!色んな事に挑戦してみよう!

最初の研究で述べたように、成長マインドセットを持っていると生活満足度も高まる。
その挑戦の過程を楽しんで人生ハッピーになっちゃおうぜ!というわけだ。
ただ、挑戦していくには強い武器のようなものが欲しいよな。
それなら他の心理学の記事や、私の著書にも役立つものがあるかもしれない。よければ参考にしてみてほしい。がんばれ!
まとめ
ビビらず打席に立とう!
引用・参考文献
1)Yuan, Meng, et al. “Perceived distress and life satisfaction among Chinese adolescents: A moderation model of growth mindset.” Personality and Individual Differences 236 (2025): 112997.
2)Woolley, Kaitlin, and Ayelet Fishbach. “Motivating personal growth by seeking discomfort.” Psychological science 33.4 (2022): 510-523.